ソロモンの偽証 後篇・裁判
監督: 成島出
キャスト: 藤野涼子、板垣瑞生、石井杏奈、清水尋也、富田望生、前田航基、望月歩、西畑澪花、若林時英、西村成忠、加藤幹夫、石川新太、佐々木蔵之介、夏川結衣、永作博美、黒木華、松重豊、小日向文世、尾野真千子、田畑智子、池谷のぶえ、塚地武雅、田中壮太郎、市川実和子、江口のりこ、森口瑤子、安藤玉恵、木下ほうか、井上肇、高川裕也、中西美帆、宮川一朗太、嶋田久作、津川雅彦、余貴美子
公開: 2015年4月11日
2015年4月15日。劇場観賞
146分間も観ていた感覚がない。あっという間の後編だった。
前篇と繋げて見たらどうだっただろう。それでも、あっという間だった気がする。
「犯人は誰なのか」「どんな大事件が隠されていたのか」見るのはそんな所ではなく、中学生という大人への過渡期の青春物語であり、親子の物語。
あらすじ
被告人大出俊次(清水尋也)の出廷拒否により校内裁判の開廷が危ぶまれる中、神原和彦(板垣瑞生)は大出の出廷に全力を尽くす。同様に藤野涼子(藤野涼子)も浅井松子(富田望生)の死後、沈黙を続ける三宅樹理(石井杏奈)に証人として校内裁判に出廷するよう呼び掛ける。涼子は柏木卓也(望月歩)が亡くなった晩、卓也の自宅に公衆電話から4回の電話があったと知り……。
「シネマトゥデイ」より引用
そう、これは青春物語なんだ。部活でもスポーツでも勉強でもないけれども、裁判活動という青春物語。
悩みながら足掻きながら必死に何かに向かっている子どもたちの姿に弱いので、気づくと泣いている自分がいた。そうです…ほとんど140分間ウルウルしていた。何てこった。
ほぼセリフだらけの学校裁判シーンなのにこんなに惹きこまれるのは、いたってリアルなのに不気味に感じる絵作りのせいだけではなく、中学生たちの演技によると思う。
決してセリフ運びなどが上手いわけではないのに、あの眼力は一体何なのだろう。若くて何の穢れもない故に少しの過ちも自分に許せないガラスの少年少女たち。
こんな中学生なかなか居ないんじゃないの、とは思う。綺麗にまとまらせたよね、とも思う。しかし、この美しさはたぶん私たちが過去に置いてきてしまった純粋さの一部である事は確か。
それぞれの子どもと親の関わりが浮き彫りにされたのも良かった。前篇よりも、より家族の物語であることを実感した。
そして、大人はこうも子どもを傷つけるものなのだろかと虚しくもなる。親である人は、きっと誰でも自分の子どもとの関係を振り返るに違いない。
誰かを傷つけるためではなく、真実を知るための裁判。
なぜ「学校裁判」でなければならなかったのか。
結末は予想の範囲だったけれども、それでも満足した。理屈ではなく熱量がズシズシ伝わる作品だった。
ただ…
惜しむらくは……
うん、ネタバレ欄 ↓ で。。
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ここから下ネタバレ↓観てない方は観てから読んでね
涼子が傷つけられたように、神原も柏木から傷つけられていた。いや、もっと傷つけられようとしていた。自分が実の両親と暮らし、辛い事件を体験した軌跡を辿らされていたのだから。
しかも、辿っている内に幸せだった記憶もあったと思い出して温かい気持ちにすらなっていた神原に柏木は「もっと悪い」と言ったのだ。痛みに対して鈍感だ、現実を直視できない臆病者だと。
陽の世界にいる人間を陰の世界に引きずり込もうとする性質の子。柏木はそんな子に見えた。
もっとも、彼をこうしたのが彼に残酷な世界を与えた大出や、見て見ぬふりをしていた傍観者たちなのだったら、それも仕方ない。
学校裁判で、神原は自分自身を裁いてほしかった。正規の法律では誰も彼を裁いてくれないから。
結果的には、裁判は神原だけではなく、生徒や学校関係者全てを裁き、全てを救ったのである。
虐めと暴力を止められなかった大出も、見て見ぬふりをしていた多くの生徒や教師も、大出から逃れることに事件を利用しようとした樹里も裁かれ、そして救われた。
松子のためにやっと本物の涙を流した樹里と、松子の両親に娘の後ろで頭を下げる母親の姿も確認できて良かった。
いわゆる「毒親」ってやつだけれども、この母親の気持ちも解らなくはないから。嘘を突き通させることで社会的に守ってしまおうと思ってしまう。親って愚かなものだから。
柏木の親も傷つきやすい息子に触れないようにやり過ごしてきたのだろう。樹里の親は論外だが、あんなに仲良さそうだった松子すら親に真実をいう事は出来なかった。
涼子の両親も娘を完全に理解していなかった。
親とはこうも無力なものなのだろうか。この事件の多くが、もっと大人に相談してくれていれば…と思う部分ばかり。そう考えると、ちょっと虚しい。
けれども、思えば私自身も何も親に相談なんてしない子どもだったと思い出す。中学生時代。傷つく事も乗り越える事も全部たぶん1人でやってきた。1人で。あるいは友達と。
この裁判の後、涼子たちはそういう「仲間」になったのだと語る。
その結末は良かった。
良かったんだけど…。
このストーリー、現在の涼子が母校に赴任してきて昔の話を現校長に語るって流れで成り立っているのよね、思えば。
結果的には、時々差し挟まれる校長の「涼子上げ」みたいな会話は必要だったのだろうか。あの部分がどうしても受け入れ難い。会話の内容も何だかわざとらしくて、ちょっと鼻に付く。。
そして、回想って形で始めちゃったんだから、ラストはオノマチさんの「私たち友達になりました」でプッツリ終りで良かったんじゃないかな…とか…いや、現代シーン自体がラストに不要だったとか…。
とにかく、締め方が今ひとつに感じられてモンモンとしてしまった。だから、みんなが校門から別々の方向に出て行くラスト…からのU2の「With or Without You」を聞きながら、ちょっとポカーンとしてしまったのだった。
せっかくの裁判後のカタルシスがホンワーーっとした中途半端な空気に包まれてもったいない…。。だから、何となくパッとしない感想で終わってしまうのだった。ラストシーンは…大事だよ…。
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comment
とまそんさん
柏木くんが抱えていた闇が見えた時の両親のショック受けた表情が印象的でした。
学校裁判だから断罪することが目的ではないんですよね。
みんなが救われる結果になって良かったです^^
こんばんは。
臆病者は人の意見に耳を貸さず、現実から逃げていた柏木卓也の方でしたね。
裁判よりも、これまで有耶無耶になっていたものをスッキリさせただけでも、この裁判は行われる価値があったと思います。
BROOKさん
柏木くんはきっと虐められたりした疎外感であんな風になっていっちゃったんでしょうね。
だからある意味、柏木くんを殺したのは大出くんだとも傍観していた他の生徒たちだとも言えるのかな、と。
現代涼子は映画オリジナルなのですか~。
ますます現代シーンが不要に感じられてしまいます^^;
ミステリーと謳っていたけれど、
人間ドラマの要素が強い作品でしたね。
それにしても、柏木がなぜあのような性格になったのか…
そればかりが気になってしまって。
原作では触れているようですが…。
現在の涼子は映画オリジナルの展開みたいです。