ロケットマン
原題 : ~ Rocketman ~
作品情報
監督・キャスト
監督: デクスター・フレッチャー
キャスト: タロン・エガートン、ジェイミー・ベル、ブライス・ダラス・ハワード、リチャード・マッデン、スティーヴン・マッキントッシュ、ジェマ・ジョーンズ
日本公開日
公開: 2019年08月23日
レビュー
☆☆☆☆
劇場観賞: 2019年8月24日
エルトン・ハーキュリーズ・ジョン(Sir Elton Hercules John、CBE、1947年3月25日 – )は、イギリスのミュージシャン、シンガー・ソングライター。出生時の名前は、レジナルド・ケネス・ドワイト(Reginald Kenneth Dwight)。
代表曲に「僕の歌は君の歌」「クロコダイル・ロック」「キャンドル・イン・ザ・ウィンド」「ダニエル」「ベニーとジェッツ」などがある。シングルとアルバムの総売り上げは2億5千万枚から3億枚以上とされており、これは「史上最も売れたアーティスト」で5位の記録とされる。(by Wikipedia)
現在72歳。生存するスターの半生伝記的映画。
決して輝かしい内容ではなくて、天才なのに影のある子ども時代、認められたくて抜け出したくて上を目指した青春期、数々の栄光を手に入れた全盛期、お決まりの失墜……
スターは生きているが、この頃のスターはすでに居ない。
輝かしさと孤独はいつでも表裏。切ない。
あらすじ
音楽界の最高峰グラミー賞を5度受賞し、「ローリングストーン誌が選ぶ歴史上最も偉大なアーティスト 100組」にも選ばれ、「僕の歌は君の歌(Your Song)」や、「キャンドル・イン・ザ・ウィンド(Candle in the Wind)」、「愛を感じて(Can You Feelthe Love Tonight)」、そしてタイトルにもなっている「ロケットマン(Rocket Man)」など、シングルとアルバムの総売上は全世界で3億枚を越える伝説的ミュージシャン、シンガーソングライター“エルトン・ジョン”の半生を描いた…(Filmarksより引用)
それほどしつこくないミュージカル
ミュージカル仕立てだが、それほどストーリーに多様に食い込んでくるわけではないので、恐らくミュージカルが苦手な人でも受け入れやすい。
「お、唐突に歌い出したね」と思うシーンは子ども時代に多いかも知れない。後は意外と挿入が自然。
何より、タロン・エガートン自身が歌うエルトン・ジョンの曲が本当に素晴らしい!主人公の歌声で全て構成されているからモノローグのように耳に入って来る。
後は、元々、エルトン・ジョンの曲が好きかどうかという話で。知っている曲が多い方ほど楽しめるだろう。
楽曲
サントラとして使われた楽曲は以下の22曲(公式による)
・The Bitch Is Back
・I Want Love
・Saturday Night’s Alright
・Thank You For All Your Loving
・Border Song
・Rock And Roll Madonna
・Your Song
・Amoreena
・Crocodile Rock
・Tiny Dancer
・Take Me To The Pilot
・Hercules
・Don’t Go Breaking My Heart
・Honky Cat
・Pinball Wizard
・Rocket Man
・Bennie And The Jets
・Don’t Let The Sun Go Down On Me
・Sorry Seems To Be The Hardest Word
・Goodbye Yellow Brick Road
・I’m Still Standing
・(I’m Gonna)Love Me Again
この内、個人的にミュージカルシーンとして一番盛り上がったのが“Saturday Night’s Alright(土曜の夜は僕の生きがい)” 。この映画の中で演出的にも一番ど派手な「歌って踊る」舞台的ミュージカルシーンだと思う。
楽曲作りのシーンとして鳥肌もんだったのが“Your Song(僕の歌は君の歌)”。
元々、恐らくエルトン・ジョンの曲で一番好きだったのは“I’m Still Standing”。(MVもハッキリ記憶している)
タイトルの“Rocket Man”も良い。広がりと深さを感じる曲調が好き。演出としては、幻想的でとても辛いシーン。
「ボヘミアン・ラプソディ」のデクスター・フレッチャー監督
ストーリーは切ない……ん、でも、あれ?既視感?とはなるよね……。
比較したくないけれども、その人生のあれこれがあまりにもカノ映画の人と同じ過ぎて。それは仕方ない。上り詰めた人が金と栄光を経て落ちていく道は同じ穴ということだ。
パクりだというネットの記事を見たけれども、パクりも何も監督はあちらと同じくデクスター・フレッチャー監督(笑)
そして、同じような落ち方だとしても、作品のアプローチは全く違う。結末の後味もあちらの作品とは全く違う。
その違いは、Queenの盛り上がりと共に感じる刹那的曲調とエルトン・ジョンの爽やかな広がりある曲調との違いと似ているかも。
エルトン・ジョンにはそれほど思い入れがなかったのだけど、聞き直してみようかな、と思えた。
そのままのキミで
上にカノ映画の主人公と似た道、と書いたけれども、家庭環境の酷さはこちらの方が遥かに上で。(フレディの両親、イイ人だったよね……)
名前すら変えたいほど家を、親を、捨てたかった人生。
セクシャリティの傾向は父のせいだと想像もつく。親が子どもに与える影響の何と大きなこと。
それでも、この人には救いがある。
「なりたい自分」は、「このままの自分」を許せる自分。だよね。
悲しみから、その昇華まで……。
音楽と共に軽々飛び越えていける一本。
読後感は爽やか。
以下ネタバレ感想
『ボヘミアン・ラプソディ』と同じようなストーリーに感じてしまうのは、スターになってからの人生がフレディとあまりに同じ道だからだ。(実際、フレディとは深い親交があり、追悼コンサートにも参加している。)
セクシャリティに苦しみ、仕事で成功して豊かになっても思うように愛は得られず、行きつくところは薬と酒。自堕落な生活、自暴自棄な行動、自ら周りにケンカを売り、結果堪えがたい孤独。
簡単に薬を手に入れることができる富を手にしてしまうことが悪いのか。心が弱っているから仕方ないのか。
有名アーティストの伝記的作品を作ったら、同じような人生の作品がいくつも出てきそう。
死に急ぐ彼らにとって必要なのは愛。引き留めるのは愛。
父親からのハグを受けられず、母親から「誰にも愛されない孤独な人生」という呪いを受け、大金目当てに近づいてくる人間に傷つけられ……一番そばに居てほしい人のセクシャリティが違っても。
「僕はキミを好きだ。」「そういう意味では無く。もっと大きな意味で。」
「そのままのキミでいればいい。」
そう言ってくれる人が居たからエルトンは救われたのだと思う。
バーニーの存在が、この人を救い、この人の仕事を救い、そしてこの映画も救っている。
去って行かれなくて良かったよ。
大きな愛の持ち主で良かったよ。
現在はライブなどの仕事は止めて、パートナーと子育てをしているというエルトン・ジョン。
今居る場所が「なりたい自分」で居られる場所で良かった。
現在幸せに生きている人が主人公の話、というのも良いもんだ。そう思えた。
◆トラックバック先
・ロケットマン@ぴあ映画生活トラックバック
・象のロケット
★前田有一の超映画批評★
◆Seesaaのトラックバック機能終了に伴い、トラックバックの受け付けは終了させていただきました。(今後のTBについて)
comment