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『レッド・ファミリー』最期に残るのは家族なのよ

レッド・ファミリー

~ 붉은 가족 / Red Family ~

監督: イ・ジュヒョン
制作・脚本: キム・ギドク
キャスト: キム・ユミ、チョン・ウ、ソン・ビョンホ、パク・ソヨン、パク・ピョンウン、カン・ウンジン、オ・ジェム、カン・ドウン、ソン・ミンス
公開: 2014年10月4日

2015年5月2日。DVD観賞

あの最後の茶番劇は一体何なんだ。

大嫌いだった資本主義の腐敗家族。繰り返す馬鹿馬鹿しいケンカ台詞。全部頭に入ってる。泣けた……。

『愛に夢中になれば理念を忘れる』

あらすじ
誰もがうらやむ理想の家族を絵に描いたような一家。だがその正体は、母国からの密命を遂行するために韓国に潜入している北朝鮮の工作員チーム、サザンカ班だった。表では仲むつまじい4人家族だが、玄関のドアを閉めると階級を重んじ、母国の命令を順守するスパイ集団となる。何かと押し掛けてくる隣人一家を資本主義の隷属者と見下しながらも彼らに憧れを抱き、互いの階級を忘れて家族的な絆を育むようになる4人。そんな中、メンバーの一人が母国に残した妻子が脱北に失敗したとわかり……。(シネマトゥデイより引用)

「素敵な家族ね。仲が良くてうらやましい。」と隣家から羨ましがられる一家は、上品そうで美しい妻、優しそうな夫、明るく可愛い娘、家族みんなに敬われ大切にされるお祖父さん…の4人家族。

これが家に入り、ドアを閉めると……。

という部分は、ちょっと笑える…けれども、言っている事もやっている事も笑っている場合ではないことなので口元に浮かびかけた笑みをどう処理すればいいのか悩んただまま笑えるタイミングを待つ…。

シュールな会話は実は決して非現実では無く、この家に住む「家族」にとっては悪夢のような日常なのだった。

「資本主義の悪」に染まった隣の家族にイライラいつつも、4人で暮らしていながらお互いの誕生日さえ知らない現実を愚痴り、祖国の家族に思いを馳せる。

38度線。これがある限り無くならない壁。

キム・ギドク脚本は、もっと毒々しく突き刺さるかと予想していたけれども思っていたよりはライト(あくまでも思っていたよりは、だから)。

義のない行いに眉をしかめつつも、ああ、でもこの人たちにとっては祖国のいう通りに動く事が「義」なんだろうな、と思い直す。

北が見たら大いに憤慨しそうな気がする「人権問題」。

人間らしく生きること。本来居るべき場所で居るべき人と当然のように暮らせる幸せ。本音を言い合ってケンカできる幸せ…。

見終わって自分の贅沢さについてしみじみと考える。家族がいる幸せ。世界にはそれさえも取り上げられる人たちがいる。

かの国の根底にずっと流れている重さをズッシり感じ取る秀作。

ラストシーンは…現実だと思っていいんだよね。

ここから下ネタバレ観てない方は観てから読んでね


「愛に夢中になれば理念を忘れる。愛は足枷になる。」
スンヘも危惧した通りに自分自身がその足枷に捕らわれる。

隣りの家があまりにも自由にケンカしていたから。眉をしかめるほどに煩くて贅沢で騒がしくて…大嫌いなのに羨ましくて。

疑似家族にとって、隣りの家の芝生は青いどころではなく青かった。

「家族」への思いやりを持ち始め、結束が出来てしまったらもう捨てる事はできない。

「お義父さん」の病気を心配し、「夫の妻」を心配し、「娘」だけは幸せにと願う。

一応コメディを目指しているのだと思ったので、ラストはみんな助かるのではと思ってしまった。甘かった。そんな甘さは無い国だもんね。

隣りの一家のケンカ台詞を全部覚えている4人。やってみたかったケンカを最期にする。そしていうのだ。

「最期に残るのは家族なのよ。死んだら泣いて後悔するわ。」

あまりに悲しくて理不尽過ぎて悔しくて泣いた。覚悟を決めたこの人たちを助けることをしない工作員たち。けれども彼らにも祖国に彼らの家族が在る。一番大事な物を人質にとって「仕事」させる…これはいつになったら終わるのだろう。

ミンジだけを救ってやる甘さが北にあるとは思えないが…でも、ラストシーンは現実だと思いたい。ミンジだけは救ってやること。それが「家族」の願いだったのだから。

『レッド・ファミリー』公式サイト

・象のロケット

★前田有一の超映画批評★

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