ミスミソウ
作品情報
監督・キャスト
監督: 内藤瑛亮
キャスト: 山田杏奈、清水尋也、大谷凜香、大塚れな、中田青渚、紺野彩夏、櫻愛里紗、遠藤健慎、大友一生、遠藤真人、森田亜紀、戸田昌宏、片岡礼子、寺田農
日本公開日
公開: 2018年4月7日
レビュー
☆☆☆☆
観賞: 2018年11月22日(DVD)
閉じられた環境の中での狩りに興奮し喜びを共有するクソどもの話で胸くそ悪い、と思った序盤。……そうか、リアリティは特に必要なかったのかというゴア描写にちょっと笑っちゃう中盤。孤独な叫びに涙する終盤……何だか凄い。気持ち悪さはホラーの域の人間ドラマ。
◆あらすじ
東京から田舎に転校してきた主人公・野咲春花(のざき・はるか)は“部外者”として扱われ、壮絶なイジメを受けていた。春花の唯一の味方は、同じように転校してきたクラスメイトの相場晄(あいば・みつる)。彼を心の支えに必死に耐えてきた春花だがイジメは日に日にエスカレートしていった。そして、ある日、激しく燃え上がる炎が春花の家を覆い尽く。思いもよらない悲劇に遭遇した春花の心は、崩壊する── 。厳しい冬を耐え…(Filmarksより引用)
原作は押切蓮介の同名漫画『ホラーM』にて2007年から2009年まで連載。
『先生を流産させる会』『パズル』の内藤瑛亮監督作品
原作はあるものの、内藤瑛亮監督はいつも「子どもは恐ろしい」をとことん追求する。
子どもは考えが幼いから惨酷極まりないし、母は自分の子どもを守るためには他者を信じないし、人間はテリトリーを守るために弱者を作り出す。
作品をジャンルで分ける時に、いつも「ホラー」に入れるか一瞬迷う。まぁ「恐怖感を楽しむ」という描写があると言えばあるのだから、ホラーなんだろうなぁ。後半は、笑っちゃうくらいゴア描写だし……でも、悲しいけれども。
イジメ描写にはイライラする
犯罪だものね。虐められる子どもは様々な理由で自分がイジメを受けていることを親に言えない。
虐められていると言ったら怒る親だから言えない。
虐められていると言ったら心配しすぎる親だから言えない。
親が大好きだからこそ言えない。
そして、言ってもどうにもならない時もある。
子どもが凶悪すぎて、大人すら対処できない時。
リアリティは追及しない
序盤はイジメ描写に、ちょっと見続けるのがキツいぞ、これは……。と思いながらイライラし、中盤、起きる大事件からヒロインが覚醒して行く。そこからは、ちょっと笑えちゃうくらいリアリティのないグロいゴア描写が続く。
いいんだよね。
これが全部リアルに描かれていたら、ハルカがあまりに可哀想だもの。
血しぶき吹き出るシーンにリアリティがなくても、その心の内はリアルに溢れている。
秀逸キャスト
キャストは全体的にあまり馴染がなく、でも、みんな全力で演じていて瑞々しい魅力でいっぱい。
ヒロインの山田杏奈さんは気弱さから芯の強さまで、「ミスミソウ」にピッタリ。
清水尋也くんは、安定のこの位置。ピッタリな役。素晴らしい役作り(笑)
そして、小黒妙子役の大谷凜香さんが本当に良かった。
この作品には「カリスマ」が必要なんだものね。見事に体現された。
食うか食われるかの中で息詰まりながら生きている、屈折した環境の屈折した子どもたち。
この町は、日本のあちこちに存在する澱。
以下ネタバレ感想
「ミスミソウ」の意味
「厳しい冬を耐え抜いた後、雪を割って小さな花が咲く」
それがこの雪深い町に存在する花だった。
けれども、みんなその強さはなかったのね。
人の頭を押さえることでしか、自分自身と戦えない。
子どもがやって来た事は、全て親がやってきた事の合わせ鏡。
あの、何も対処できない教師がそうだった。
見て見ぬふりをして「自分自身」の分身を教室に作っていた。
LGBTではない
決して百合ではないと思うのだ。
中学生くらいの時は憧れることが多い「私だけのS」。
タエちゃんは人気者で、皆がタエちゃんになりたかった。
けれども、タエちゃんはただの女の子だった。
明るい光の中で笑う少女2人の思い出シーンが切ない。
これを壊したのが、あの「彼」だと思うとよ……。
火事の写真、本当にゾッとしたわ。
この映画の中で一番怖かったのがあの写真。
人の不幸を美しいと思うその狂気も、この町が育てたもの。
病んでいるなぁ……。
と、他人事に見てはならないね。
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★前田有一の超映画批評★
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