マチルド、翼を広げ
原題 : ~ Demain et tous les autres jours ~
作品情報
監督・キャスト
監督: ノエミ・ルボフスキー
キャスト: リュス・ロドリゲス、ノエミ・ルボフスキー、マチュー・アマルリック、アナイス・ドゥムースティエ、ミシャ・レスコー
日本公開日
公開: 2019年01月12日
レビュー
☆☆☆☆
劇場観賞: 2018年12月25日(試写会)
毒親に縛り付けられて自由を求める可哀想な子どもの話かと思っていたら、そうではなかった。
狂おしいほどママが好き。
その激しさを軽くするためのファンタジー。
あらすじ
フランス、パリ。ちょっと変わり者のママの突飛な行動に振り回され、学校でも友人ができず孤独な日々をおくる9歳のマチ ルド。ある日、ママが小さなフクロウを連れてきた。驚くことに、フクロウはマチルドに話しかけてきた……。理知的な言葉を投げかけながら、ピンチに陥ったマチルドを守るフクロウはまるで守護天使のよう。幸せに見えたのも束の間、やっぱりママは騒動を起こしてしまう……。(Filmarksより引用)
マチルド目線のファンタジー
公式や映画サイトのあらすじでは「風変り」「情緒不安定」などと紹介されている「ママ」が、なかなかそれどころの騒ぎではなくて(笑)
なぜ、こんな母親とたった9歳の娘を2人だけで暮らさせているのか……と引っかかり始めると頭が現実方面に向いてしまうので、ここは、恐らくマチルドの人生の中のほんの一部分の思い出であり、彼女が見えていない現実がたくさんバックにあるのだと理解しておく。
初めは毒親の面倒を見させられて可哀想な子。と、思いながら見ていたけれども、そうじゃない。
どんな親だって、子どもは待っている。
しゃべるフクロウ
フクロウがかわいいんだ、これがまた。(でも喋る内容はあまり可愛くない(笑))時々頼りになり、時々シニカル。この子のユーモアは笑い所。
「友達」の存在は孤独を救う。
ママにもマチルドを救いたい気持ちはある。
美少女寄りの新星 リュス・ロドリゲス
「可愛い」よりも美人寄りの新星、リュス・ロドリゲスちゃん。9歳の時にこの映画のオーディションを受けてデビューだそうで。
学校での年相応の喋り方、ママと接する時の母親のような優しさ、感情を爆発させる必死な顔、天才だなぁ。先が楽しみ。
クリスマス試写会で観れて良かった
クリスマスに試写会というのは、たぶん初めての体験で。ポストカードからプレスシートから梟クッキーまで!プレゼント頂いてしまって感動した。ありがとうございます。
日本公開は年明けだけれども、マチルドが安定して過ごせるお部屋の色彩はクリスマスカラー。クリスマスのシーンもある。
親子関係を考えさせられる1本だった。
少女時代のどんな日々も、大人になれば理解できることもある。
今日がどんなにダメな日でも。明日へ明日へ夢見る力の強さに惹かれた。
以下ネタバレ感想
正直、父親との関係は最後までよく分らなかった。
あの家庭状況を知りながら学校が児相に報告しないことは日本ではあり得ない。
元妻が1人になってしまうことよりも、娘があの元妻と2人きりで暮らしていることを放置している……そこはお国柄なのか、一緒に暮らせない事情が父親側にあるのか、9歳でも独立した1人の人間として娘の希望通り母親と暮らさせていたのか……。
9歳目線のファンタジーなのだから理詰めで考えたらダメや。と頭の中で整理しつつ、やはり気にはなる(笑)
変わりものの親を持って、友達が居なくても。合唱祭でソロを任されるラッキーを潰されても。
怒る事なんかできない。だって、ママが好きだから。怒ったら出て行ってしまうかも知れないという不安にいつも怯えているから。
「良い母親になって」「良い母親になれない」「ならなきゃ」
毒親に縛り付けられている子どもの悲劇ではなく、反対に「良い親」感性に振り回されるママも悲劇なのだと分ってからは、もう……。
どちらも可哀想だとしか思えなくて。
しかし、そういう現実的な思考はラストのダンスで吹っ飛んだ。
なんという親子。恋人よりも濃密で誰も入り込む余地のない密着度。
これが監督の自伝だというのならば、監督のインスピレーションは間違いなく母親から受け継いだもので、毒親どころか大した恩恵だ。
孤独。
人と群れず、世界に浸るということは、やはり創作者にとって必要な事なのだろう。
水の中の私。
喋るフクロウ。
埋めたがい骨。
孤独と求愛と希望のメタファー。
涙はママが指で拭い、蒸発して雨になった。
雨は海に降り、悲しみと共に流されて行った。
彼女は深い水の底で息を吹き返す。
悲しみの海に沈む日があっても、また息を吹き返す。
明日も。その次も。
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★前田有一の超映画批評★
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