記者たち~衝撃と畏怖の真実~
原題 : ~ Shock and Awe ~
作品情報
監督・キャスト
監督: ロブ・ライナー
キャスト: ウディ・ハレルソン、ジェームズ・マースデン、ジェシカ・ビール、ミラ・ジョヴォヴィッチ、ロブ・ライナー、トミー・リー・ジョーンズ、リチャード・シフ、アル・サピエンザ、テリ・ウィブル、ステファニー・オノレ
日本公開日
公開: 2019年03月29日
レビュー
☆☆☆☆
劇場観賞: 2019年4月3日
プロパガンダと報道。どの国でもどの時代でも決して他人事ではないテーマを熱く描く。
あの9.11事件後。世界の誰もが信じたビン・ラディンの悪行とイラクの大型兵器の存在。
「正義と自由の国」という謳い方で愛国心を煽り、多くの命を犠牲にした。イラク戦争計画ありきのねつ造……
あらすじ
2002年、米・ブッシュ大統領はイラクが核兵器をはじめとする大量破壊兵器 を開発及び保持していると非難。イラク侵攻が始まろうとする中、アメリカ国内で も愛国心が強まっていった。地方新聞社を傘下に持つナイト・リッダー社ワシント ン支局の記者ジョナサン・ランデーとウォーレン・ストロベルは、その情報に疑問を持ち、証拠を探り真実を暴こうと取材を続けていく……(Filmarksより引用)
ブッシュ政権が作り出した「テロ事件」の顛末
2001年9月11日に起きたアメリカ合衆国の悲劇は、ある程度遅くまで起きている大人はリアルタイムでテレビ放映を見ていたと思う。
(フジテレビでは中井貴一主演の連続ドラマ『ウソコイ』を最終回のクライマックスに入ったところで中断し、中継に切り替えた。「えーー……」という怒りの叫びが「えええぇ!」という驚きに変わった視聴者は私だけではあるまい…)
崩れるツインタワーを呆然と見つめてから、しばらく、報道はオサマ・ビンラディンを頭とするアルカイダの犯行だと伝え、海のこちらの日本人はみなそれを信じた。
その後、イラクのフセインがテロを支援しているというブッシュ大統領の演説を受け、2003年3月、イラク戦争が開始される。湾岸戦争に引き続き、戦争映像をテレビで見る時代を体験し、倒されるフセイン像を茶の間で見物する日本人の我ら……。
見覚えのあるあれらの映像をスクリーンで振り返る。
あれからちょうど16年。海の向こうのニュースどころではない日本人の中には、今でも、あの時のまんまの報道を信じている人はたくさんいる。イラクには、ブッシュが主張したような大量破壊兵器など無かったこと。イラク戦争はツインタワーが崩壊されなくてもたぶん起きていたこと。
映画のネタバレではなくて、これは事実です。
報道とは恐ろしいもので、衝撃的な内容が一度流れれば、そちらばかりが記憶に残る。
NYタイムズやワシントン・ポストなどの大手報道社がプロパガンダに乗って若者の愛国心を煽る中、冷静に真実を見極めて世の中に知らせようとした人たちがいた。
アメリカ各地の地方紙を傘下に記事を提供するナイト・リッダー社は、国がイラク戦争に向かっていくこの流れに疑問を抱き、正しい報道を目指して取材を始める。
戦時に報道は国民を煽る
戦争から『ゼロ・ダーク・サーティ』に至る道。あれだって、死人に口なし的な処理だよな……とモンモンとしたことを覚えている。
日本でも終戦前は報道が国民を煽り続けてきた。
政府の一番上にいる人たちが自国民を巻き込む大嘘を吐くなんて、誰も信じないもの。「私たちはあいつにやられた。さあ立ち上がれ。」と言われたら、愛国心バリバリに教育された子どもたちは立ち上がってしまう。
フセインが「アルカイダを支援している」「大量破壊兵器を持っている」情報を提供したのは、フセイン政権から逃げ出して恨みを抱えた亡命者アフマド・チャラビ。
この当時、イラク国民会議からもたらされた情報はほとんど嘘だったという。しかし、「ないもの」を検証することは難しく、報道するためには検証が必要だ。
「正しさを伝えるために」奮闘するナイト・リッダーの人たちがカッコいい。
「真実を伝える」を熱演するキャストが良い
Twitterなんかに頼らずに(笑)ひたすら足で(時にはセクシー(笑)ボイスで)真実を追っていくジョナサンとウォーレンの真っ直ぐさもカッコいいんだけれども、ナイト・リッダーの支局長ジョン・ウォルコットを演じたロブ・ライナー……そう、監督自身が素晴らしくカッコ良いんですけど。
ー
知性に溢れて大きくて有能で……部下を指示する手の動き、最高に好き!
ジョナサンの妻をやっているミラも美しくてキリっとしていたなぁ。(始め、「よく見る誰か」だと考えていてミラだと気づかなかった。戦ってないから(笑))
このキャスト陣のカッコ良い演技を見ているだけでも、個人的にはもの凄く満足した。
報道とは、ジャーナリズムとは何なのか。問いかける問題作
事が事だけに、対象が対象だけに、『ペンタゴン・ペーパーズ』や『スポットライト』を思い出すシーンも多々ある。
孤独に耐え、権力に押し潰されず真実を貫くのは難しい。
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★前田有一の超映画批評★
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