カツベン!
作品情報
監督・キャスト
監督: 周防正行
成田凌、黒島結菜、永瀬正敏、高良健吾、音尾琢真、竹中直人、渡辺えり、井上真央、小日向文世、竹野内豊、池松壮亮、成河、酒井美紀、山本耕史、草刈民代、城田優、上白石萌音、シャーロット・ケイト・フォックス
日本公開日
公開: 2019年12月13日
レビュー
☆☆☆☆
劇場観賞: 2019年12月18日
時代は大正時代、映画は活動写真と呼ばれ、弁士が声をあて、解説しながら上映されていた……という話は知っている人が多かれど、こんな風に撮られ、こんな風に舞台であてているんだ!という描写はトリビア的に楽しい!
オリジナル作品として、目の付け所がまず最高。
大正セットの賑やかさ、人の笑顔、「映画愛のある作品です。」ってこういうことだと思う。
あらすじ
一流の活動弁士を夢見る青年・俊太郎は、小さな町の映画館「靑木館」に流れつく。隣町のライバル映画館に客も、人材も取られて閑古鳥の鳴く靑木館に残ったのは、「人使いの荒い館主夫婦」、「傲慢で自信過剰な弁士」、「酔っぱらってばかりの弁士」、「気難しい職人気質な映写技師」と曲者揃い。雑用ばかり任される俊太郎の前に突如現る大金を狙う泥棒、泥棒とニセ活動弁士……(Filmarksより引用)
日本には無声映画の時代がない
サイレント映画期といえば1888年に初めて生まれた「映画」と言われる『ラウンドヘイの庭の場面』
https://archive.org/details/Roundhay_Garden_Scene/1888roundhaygardenscene1888mpg1.mpg
から、1920年代後半にトーキー映画が作られるようになるまでの「声のない作品」時代を指す。見た事がなくても誰でもすぐに思いつくのがチャーリー・チャップリンの名前だろう。
近年では第84回アカデミー賞で作品賞を受賞した2011年制作の『アーティスト』が記憶に新しい。(完全なサイレント映画というわけではない)
では、日本の無声映画は無かったのかというと、あったのだ。ただし、「無声」ではなかった。「活動弁士」という人たちが声をあてていたから。
活動弁士のお仕事を見る
弁士の存在は知っていたけれども、恥ずかしながらどういう風に演じていたのかは知識が無かった。ひとり声優のようなものだと思っていた。ほぼ、ひとり芝居なのねぇ!
Twitterフォローさせていただいている縁寿さん。(フォローさせていただいているのだから、もっと勉強させてもらえば良かったと大いに反省しています、すいません!)
作中では、大正時代の町の華やかかつ活気あるセット、弁士役の俳優さん達の声音の素晴らしさを大いに楽しめる。
どこに出ていたのか城田優
まさに「時代的」なストーリー、「時代的」な演技。予告CMで聞いたあの語りが成田凌本人なのには驚く。いい声だし、上手い!あの時代の活動写真にピッタリな生き生きとした演技もいい。
そして、ちょいちょい出て来る「この人も出てたのか!」的、ちょい出しキャストの楽しさ。
劇中劇まで注目して観てね。上白石萌音ちゃんとシャーロットは分かったんだけれど、城田ん、どこに出ていたのか分からない!
ストーリーは、弁士の楽しい説明が入ればちょうどいいんじゃない?と思うくらい、若干「ここ長すぎ」なシーンもあって、この映画のそこを面白くしてくれる弁士が欲しかった(笑)
もちろん、そういう映画なので。
観客が自分自身で解説しながら観れば良い。(※上映中の解説は声に出さず、心の中でお願いします!(笑))
以下ネタバレ感想
日本のサイレント映画は「カツベン」と呼ばれるあの人たちの「解説」で見ていたんだねぇ……。だから、同じ一本の映画でも弁士によって解釈が違う。面白くするのもしないのも弁士次第。
この映画のちょっとベタな設定やベタな笑いシーンも、観る人が心の中で付ける解説によって全く違うというわけである。面白いね。
一つの作品に解釈の差が出来ることに悩み始める元人気弁士・山岡秋声の立ち位置だけが妙にリアル。彼の目線の先には、これからやってくるトーキーの時代がある。
ドタバタしている若手ライバル弁士たちにはそんな未来は見えていない。
箱庭の中のお芝居。
そう考えると、少し切ない。
これも古き善き日本の文化の切れはし。
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★前田有一の超映画批評★
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