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『母さんがどんなに僕を嫌いでも』ぼくはブタじゃない

母さんがどんなに僕を嫌いでも

 

映画『母さんがどんなに僕を嫌いでも』感想

作品情報

監督・キャスト

監督: 御法川修
キャスト: 太賀、吉田羊、森崎ウィン、白石隼也、秋月三佳、小山春朋、山下穂乃香、斉藤陽一郎、宮田早苗、おかやまはじめ、木野花

日本公開日

公開: 2018年11月16日

レビュー

☆☆☆

劇場観賞: 2018年11月19日

前情報は何もなく、タイトルだけに惹かれて観に行った。結果、思っていたものとはちょっと違った。違ったというか……世界はそんなに優しいの

 

◆あらすじ
タイジ(太賀)は小さい頃から大好きな母、光子(吉田羊)に愛されないまま、壮絶な家庭環境の中で育てられた。耐えかねて17歳で家を飛び出し、一人で生きてきたタイジだったが、友人の言葉に動かされ、母と向き合う覚悟をする。大人になっ ても自分を拒絶していた母に歩み寄り、タイジは母からの愛を取り戻すために立ち向かっていく。(Filmarksより引用)

 

原作は歌川たいじ氏の同名エッセイコミック。

毒親に虐げられる子ども

「子どもはどんな親でも大好きだ」と、よく言うが、そんな事はない。叩く親(身体だけじゃなくて心もね)なんて大嫌いだし、捨てたいし、一生会いたくない。「親を捨ててもいいんだよ」

 

……というのが、現代社会の有り難い考えだ。
 

私が育ってきた年代では、親は恐くて当たり前だったし、親に言い返すなんてとんでもなかったし、罵倒されるのも普通だった。

 
私は、暴力こそは振るわれなかったものの、私にネガティブを埋め込む私の父親の子育てが大嫌いだったが、それでもたまに優しくされたり褒められたりする事は嬉しかった。
 

だから分るんだよ。
「子どもは確かにどんな親でも嫌いにはなれない」
 

このテーマの作品に出会うと、ついつい読んだり見たりしてしまう。

そして、いろんな人がいるものですね……と思うのである。

性善説でできている作品

この作品を見ての私の感想は、

タイジ、本当にそれでいいのかい?

それだけ……。

 

私自身はそういう結論は得られなかったから。

 

自分の親は毒親だったと思っている人、あるいは虐待されて育った人が、共感したくてこの映画を見た場合、ちょっと複雑な気持ちにさせられるかも知れない。
 

私のように性悪説を埋め込まれて育った人間にとっては、ちょっと拍子抜けする展開でもあった。(無用にハラハラしながら見ていた(笑))

 
けれども、羨ましくもあり、こういう解決は美しいね、とも思うのだ。

 
原作はエッセイということだし、作者はこんな育てられ方をしたのに、本当に良い人だよ。

虐待の描写は痛くてリアル

役者さんは、子役の小山春朋くん含め素晴らしかった。

太賀くんの達者さは、もう言うまでもなく。

吉田羊さんがホントにホントに……「居そう」な毒っぷりで凄かった。(正直、自分自身をコワゴワ振り返ってしまった(笑))

 

ただ、何だか「涙誘われろよ」と強要されているように思えてしまって、エンドロールは味わず出た。(決してゴスペラーズが嫌いなわけではない)

だって、決して「感動」はしなかったから。涙も誘われない。

ただ、この人のような生き方ができる人間になりたいと思っただけ。

 


以下ネタバレ感想

 

ちょっと噛みきれなくて

こういう映画を観ると、ああ、私、本当に性悪説で生きてるんだなぁ……と、しみじみ思う。(クズな人たちのドラマや映画ばかり好んで見てるからか(笑))

 
「お友達」は、いつ裏切るんだろう……と、ハラハラしながら見ていたのに、本当に本当の良い人たちだった(笑)

いや……良かったと思ってる……。

 
ただ、「母親は大変なのよ」「10ヶ月もお腹にいるのよ」「愛がないわけないじゃない?」のような流れになっていくのは、あまり好きではない。これに「お友達」の妊娠が使われるのはベタすぎる。

お腹に10ヶ月居ようが、本当に嫌いなら嫌いだよ……。

 

エッセイだから実際の話も使われているのだろうけれども、せっかく良いお友達に出会えて劇団にも入り、仕事も頑張っているのだから、タイジがもっと自分の人生を生きている姿が見たかった(せっかく抜擢されたのだから舞台も見たかった)。

仕事も不正したという話だったのに、あの後どうなったのだろうかとモヤモヤ……。

「理解は気づいた方からすべし」

このセリフが一番スッと心に入ってきたもの。けだし名言。
 

親子関係だけではなく。どうしても続けなければならない人間関係ならば、相手を変えるよりも自分が変わる方が早い。

ましてや、老いた親ならば……向こうはもう変わる事はない。

 

ただ、

「お前はブタだブタだブタだ」と埋め込まれ続けた人間が自分で変わるのは難しく。

変えてくれた「ばあちゃん」や友達との出会いはタイジの宝だね。

 

こんな母親から「ありがとう」だけは貰えた人生。

タイジが今、幸せならばそれでいいか……

と、ちょっとモヤっとしながら劇場を出た。

 

 

 

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・象のロケット
★前田有一の超映画批評★

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