空母いぶき
作品情報
監督・キャスト
監督: 若松節朗
キャスト: 西島秀俊、佐々木蔵之介、佐藤浩市、本田翼、小倉久寛、市原隼人、山内圭哉、和田正人、高嶋政宏、玉木宏、戸次重幸、石田法嗣、平埜生成、堂珍嘉邦、片桐仁、土村芳、深川麻衣、中井貴一、村上淳、吉田栄作、工藤俊作、金井勇太、中村育二、益岡徹、三浦誠己、袴田吉彦、加藤虎ノ介、遠藤雄弥、斉藤由貴、藤竜也
日本公開日
公開: 2019年05月24日
レビュー
☆☆☆
劇場観賞: 2019年5月27日
ストーリーにあれこれ思うところはあれど、海上・海中・空、それぞれに熱くてハラハラの見所があり、総体的に満足だった。日本のおっさん俳優ラブな人たちにはぜひぜひお薦めしたい1本。
あらすじ
世界が再び「空母の時代」へと突入した20XX年。日本の最南端沖で起こった国籍不明の軍事勢力による突然の発砲。日本の領土の一部が占領され、海保隊員が拘束された。未曾有の緊張が走る中、政府は初の航空機搭載型護衛艦「いぶき」を中心とする護衛隊群を現場に向かわせる…(Filmarksより引用)
原作は、かわぐちかいじ作の同名コミック。かわぐちかいじ氏はこの映画の監修スタッフでもある。
原作とはだいぶ違いそう
当方は原作は未読。調べた限りだと原作と本作はだいぶ違いそう。
そもそも攻撃してきた「国籍不明の軍事勢力「東亜連邦」」は、原作では明確に「中国」に設定されている。「領土の一部」も明確に「尖閣諸島」。こういう所、日本って著作物はOKなのに映画になると描けないものなのかな……。
設定ではこの「東亜連邦」(東南アジアらしいのにこのネーミング(笑))、建国3年らしいのによくこんなに軍事力あるよね?という話だけれど、一応そのバックは最後の方に語られてはいる。(でもオチはない(笑))
そういう様々な点は原作ファンにとっては不満の出る所かもしれない、と思われる。
けれども、そういう設定になった時点でこれはもうコミック『空母いぶき』を原案とした「パラレルいぶき」なのよね。パラレルということは、この映画の「日本」もパラレルなわけである。創作物として楽しめばいいと思う。
ちなみに、この映画の監修には原作者が関わっているので勝手に改変したわけではありません。(大事なことなので2度書いた)
そんな事よりも、もっと「どうしてこんなエピソードを入れたのだろう」「緊張感削がれるわ~~」「この人、いる~~?」という不満が全体に溢れている部分がありまして……まぁ、そこはネタバレ欄で……。
公開前炎上評価は気にしない
この映画、何だか知らないけれども公開前に全く違う方向で炎上してしまっている。
首相を演じる佐藤浩市氏が「体制側の立場を演じることに対する抵抗感がある」「ストレスでお腹を壊してしまうキャラにしてもらった」のような発言をした事に対して、「脚本を変えさせる三流役者」と言い出すどこかの作家が現れたり、「安部首相の病気を揶揄した」と言い出す人が現れたりしたのが発端なのだけれど。
えっと、この作品の首相は別に安部さんではないし。「首相のような体制側よりも現場に居たいな」という発言は役者の希望として別におかしくないし。佐藤浩市さまが三流では無い事は作品を観れば分かる。
もっとも、この騒ぎ、「インタビューの内容を全文きちんと読んで映画を観てから言えよ」という話で鎮火してきているので、壮大なステマだったのかも(笑)
とりあえず、こんなことで評価が落ちるのは馬鹿馬鹿しいので一応書いてみた。
相関図っぽい登場人物紹介
出演者がいっぱいだから整理した方がいいかも……と思ったけれども、公式を見てみたら意外とサッパリしたものだった(笑)
いぶき船内の人たち
いぶき – 航空機搭載型護衛艦で第5護衛隊群の旗艦。
第5護衛隊群群司令 – 湧井継治(藤竜也)
艦長 – 秋津竜太(西島秀俊)
副長 – 新波歳也(佐々木蔵之介)
船務長 – 中根和久(村上淳)
船務 – 郷原哲昌(加藤虎ノ介)
船務 – 畑中淳(遠藤雄弥)
砲雷長 – 葛城政直(石田法嗣)
アルバトロス隊
第92飛行群群司 – 令淵上晋(戸次重幸)
隊長 – 迫水洋平(市原隼人)
パイロット – 柿沼正人(平埜生成)
広報と記者
海幕広報室員 – 井上明信(金井勇太)
ネットニュース記者 – 本多裕子(本田翼)
新聞記者 – 田中俊一(小倉久寛)
はつゆき
護衛艦。
艦長 – 瀬戸斉明(玉木宏)
あしたか
護衛艦。
艦長 – 浦田鉄人(工藤俊作)
砲雷長 – 山本修造(千葉哲也)
いそかぜ
護衛艦。
艦長 – 浮船武彦(山内圭哉)
砲雷長 – 岡部隼也(和田正人)
しらゆき
護衛艦。
艦長 – 清家博史(横田栄司)
はやしお
潜水艦。
艦長 – 滝隆信(高嶋政宏)
船務長 – 有澤満彦(堂珍嘉邦)
船務 – 黒澤雄三(山本智康)
政府
内閣総理大臣 – 垂水慶一郎(佐藤浩市)
内閣官房長官 – 石渡俊通(益岡徹)
副総理兼外務大臣 – 城山宗介(中村育二)
外務省アジア大洋州局局長 – 沢崎勇作(吉田栄作)
外務省アジア大洋州局局員 – 赤司徹(三浦誠己)
カッコ良さをキャストごと楽しもう
あの人もこの人ももちろんカッコいいけど、特に山内圭哉と和田正人の「いそかぜ」コンビを見て!!
「いてまえ~~!」「撃てぃ~~!」「いてまえ~~!」「撃てぃ~~!」の繰り返し、ホレるから!
この映画で一番良かったところは、とにかくキャラクター造形。
先ほど書いた佐藤浩市演じる首相が2時間の間で決心を固めていくところも、空自出身なゆえに「一人で戦う」「やらなきゃやられる」秋津艦長の変化も、「とにかく戦闘回避」「平和平和」の新波副長の変化も、本当に攻め込まれたら我が国はどうするかという戸惑いと共に丁寧に描かれる。
秋津と新波の歩み寄りが、そのままストーリーの結論になって行く感覚。
本当にこんなことになったら大変~~!じゃ済まないけれども、「いぶき」と民のために戦う各護衛艦のターンは胸あつ。
「防衛出動」「憲法9条」「空母かが」
この記事を書いている2019年5月、アメリカのトランプ大統領が国賓として来日。海自横須賀基地で「かが」を視察している。
「空母」はパラレル日本ではなくて現実の日本にも登場する。「憲法9条」を死守するはずの日本ではこの件についてマスコミは大騒ぎしていないのよね。パラレルの方は大騒ぎだったようだけれども。
「防衛出動」が本当に起きた時、一体どういう騒ぎになるのか、どう動くことになるのか、どうすればいいのか。考えさせられる作品ではある。
上にも書いたように、ちょっと緊張感削がれる設定もあるにはあるけれども、おっさんたちの熱さには感動した!そこは素晴らしい。
以下ネタバレ感想
上には「防衛出動や憲法9条について考えさせられる」と書いたけれども、結局、映画的にはソコに関する結論はパシッと描かれていない。ホンワーーと終わった感じは、まさに原作設定を国際問題が起こらない設定に改変したモヤモヤと似た感覚。
建国3年の「東亜連邦」とやらのバックもモヤったまま終わったしね……。まぁ、そこをハッキリさせるくらいなら初めから原作通りの設定で行くか(笑)
個人的には、その辺はもう、パラレル日本だし、おっさんたちがカッコいいし、娯楽娯楽!いいや!!という結論に落ち着いたのだけれども、娯楽にしても納得できない点はいくつかある。
記者が乗り込んでいたという設定は本当に必要だったのでしょうか。まぁ……「記者は見た」という事で、あの映像がパイプになって国連が動いたことになっているので(その結末、ちょっと甘い気がしたけれど)、仕方ないにしても……小倉さん一人で良くない?(笑)
そして、記者よりも絶対的に必要ないのがコンビニね……あれは一体何だったのか。特に店長(苦笑)
私ゃ結構最後の方まで、あの店長は実は「東亜連邦」が送り込んだテロリストで詰めているお菓子は爆発物に違いないと思い込んでいたので(ドラマの見すぎ)、本当にただ寝ていただけでビックリしたわ。この映画のエピソードの中で一番ビックリしたのは、そこ!!(そして、中井貴一さん無駄遣いすぎて泣く)
あとアルバトロスの彼ね……。
原作では別に亡くなっていない模様……。せっかく助かった命。助けてあげて欲しかった。
ネタバレ欄が愚痴欄のようになったけれども、いや、そういう不満があったとしても!カッコ良さは上回るので、観て良かったと思ってる。本当に。
「自衛隊が押さえている内は戦闘。国民が巻き込まれたら戦争。」
では自衛官は国民ではないのか。
パラレルじゃない世界に、そんな風に考えなくてはならない事態が起こらなければいいけれど……。
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