ビューティフル・ボーイ
原題 : ~ Beautiful Boy ~
作品情報
監督・キャスト
監督: フェリックス・ヴァン・ヒュルーニンゲン
キャスト: スティーヴ・カレル,ティモシー・シャラメ,モーラ・ティアニー,エイミー・ライアン,ケイトリン・デヴァー,ステファニー・スコット,ジュリアン・ワークス
日本公開日
公開: 2019年04月12日
レビュー
☆☆☆☆
劇場観賞: 2019年4月17日
身内に依存症のような人がいるので(薬物ではないけれど)、「美しい」や「大変です」のような他人事な感想で済まない。正直、観るのに躊躇していた一本。
そして、見終ってまだモヤモヤしている。そうだね。結局は自分自身の問題。
あらすじ
成績優秀でスポーツ万能、将来を期待されていた学生ニックは、ふとしたきっかけで手を出したドラッグに次第にのめり込んでいく。
更生施設を抜け出したり、再発を繰り返すニックを、大きな愛と献身で見守り包み込む父親デヴィッド。
何度裏切られても、息子を信じ続けることができたのは、すべてをこえて愛している存在だから……(Filmarksより引用)
原作は親子それぞれの本
原作として、デヴィッド・シェフ(父)の著書『Beautiful Boy: A Father’s Journey Through His Son’s Addiction』(息子の依存症を経た父の軌跡)と、ニック・シェフ(息子)の著書『Tweak: Growing Up on Methamphetamines』(メタンフェタミン(覚せい剤)で育って)をベースに構成されたストーリー。
若いころから何種類ものドラッグを使い続け、脳を崩壊させるといわれるメタンフェタミンにも手を出して、更生が効かない状態になっていく息子を支え、試行錯誤する父の物語である。
依存症に陥る子どもに対する父と家族の反応に、すごくリアリティを感じた。
単なる「愛」じゃないんだよね……
いや、「愛」ではあるのだけれど。
親目線でしか見れなかったけれども、親だから信じたいし、信じるしかないんだよね。見放したら生きていけないかも知れないと思うし、他人様に迷惑を掛ける犯罪者になるかも知れない。
「あんなに優秀だったのに」とか、「あんなに可愛かったのに」とか、昔を思い出してはウルウルしているデヴィッドを見ていて、本当に気の毒だった。
薬物依存の恐ろしさ
這い上がっては大波に飲まれる状況に、ただただ胃が痛い。
彼らは嘘もつく。「依存症」と「虚言」はセットだ。「治った」「治ろうとしている」「最近は平気」は常套句。
親は一体、どうすればいいのか。どうすれば良かったのか。
その答えは、結局、この映画の中にもあった。
厳しい現実。
スティーヴ・カレルの醸し出すリアリティ
本当に胃が痛くなるほど親の気持ちになって観ることができたのは、スティーヴ・カレルの演技が素晴らしかったから。
時には全身で愛を表し、時には落胆し、時には「やり方」を押し付けてみたりする。
どこの親でもやりそうなことだ。悩み嘆き、希望を抱いては失望する。その演技が、とても自然だった。
『バイス』ではドナルド・ラムズフェルドだったのよね……面影は……クリスチャン・ベールよりは、ある(笑)
モーラ・ティアニーも素晴らしかった。そうだろうなぁ。この人の立場が一番「自分のせいかも」と思ってしまう立場かも。
ティモシー・シャラメは「beautiful」にピッタリな逸材。
「ビューティフル」とは
どういうことなのかと考える。(容姿は別として)
実際には、親にとっては容姿が美しかろうが醜かろうが、心が美しかろうが醜かろうが、子どもは子どもだ。
一緒に暮らしていようがいまいが血が繋がっていることに変わりはない。
一番「美しい」のは思い出だ。
それを再び未来に求めて、頑張るのかもしれない。
以下ネタバレ感想
そうだねぇ……私の親も私も、これをやらなければならなかったのかも知れない……と思いながら見ていた。
切っ掛けが寂しさだったとしても、最終的には自分の問題だ。自分の問題だと気づいてからが物語の始まり、つまり「更生」だと思い知らされた。
カレンが言っていた「救えない」が正解。
あきらめたわけでも、捨てたわけでもなく、「見放す」ことが愛なのだ。
何よりも大切にしてきたはずのものを救えないと気づくとき、親の気持ちになると不安と悲しみしかない。
捨てられたと思ってニックのように命を断とうとする子どももいるかも知れない。
それでも、依存を断つためには親は精神的に独立させるしかない。
彼らは捨てなければ、守ってくれる者に依存し続けるから。
結果的に、シェフ家は成功したらしい。きっと成功しない家もある。
集会で聞いた、娘を失くした母の言葉は辛かった。「私は娘が依存し始めてからずっと喪中だった」。
死んでしまっても、生きていても、子どもは親の「すべて」。
見守るのも、耐えるのも人生か。
親子の在り方について考える。
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