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『バッド・ジーニアス 危険な天才たち』カンニング事件が作り出したもの

バッド・ジーニアス 危険な天才たち

原題 : ~ Bad Genius ~

「バッド・ジーニアス 危険な天才たち」感想

作品情報

監督・キャスト

監督: ナタウット・プーンピリヤ
キャスト: チュティモン・ジョンジャルーンスックジン、チャーノン・サンティナトーンクン、ティーラドン・スパパンピンヨー、イッサヤー・ホースワン、タネート・ワラークンヌクロ

日本公開日

公開: 2018年9月22日

レビュー

☆☆☆☆

劇場観賞: 2018年10月27日

 
おまいら……勉強をしなさい。

◆あらすじ
中国で実際に起こったカンニング事件をモチーフに製作されたタイ映画で、同国で大ヒットを記録したクライムエンタテインメント。天才少女を中心とした高校生チームが世界規模のプロジェクトに挑む姿を描いた。小学校、中学校と優秀な成績を収め、その頭脳を見込まれて進学校に特待奨学生として転入を果たした女子高生リン。テストの最中に友人のグレースをある方法で手助けしたリンの噂を耳にしたグレースの彼氏パットは、試験中にリンが答えを教え、代金をもらうというビジネスを持ちかける。さまざまな高度な手段を駆使し、学生たちは試験を攻略。リンの売り上げも増加していった。そして多くの受験生の期待を背に受けたリンたちは、アメリカの大学に留学するため世界各国で行われる大学統一入試「STIC」攻略という巨大な舞台に挑むが……。(映画.comより引用)

 

これはすごい

正直、あらすじだけをネットで見ていた感覚では「カンニングなんかが題材でそんなに面白くなるのかよ」だったのだけれど、2時間越えがあっちゅー間。息もつかせぬスリル

スリルを楽しむだけではなく、青春ものとしても、社会派ドラマとしても見応えあった。

スタイリッシュなカンニングテク

カンニングはルール違反、あるいは犯罪だけれども、その手管は楽しんでもいいところ。

 

そんな事が成功すると、思わず笑っちゃうようなテクニックがモーツァルトに乗って流れるように展開される。

そんなにうるさくて大丈夫とか、お前ら見過ぎぃぃ……とか思いつつも、ドキドキ、ウットリする。

お国柄

日本でも当然格差はあるわけだが、タイの貧富の差は世界最高レベルだと言われている。

英徳学園に入っちゃった牧野つくし がファイトする物語ではなく、お勉強で身を立てていく物語。

有名私立に入って、金がなくとも媚びずへつらわず、学力という圧倒的な自信で生きていく……リンは、きっとそういう子だったはず。

父がやった事を知らなければ……。

友情物語

金が絡んでいようが、計画を立てている間はきっと楽しかったよね。グレースは頭は悪いけれども可愛かったし、奨学生同士、バンクとは相通ずるものがあった。
 「バッド・ジーニアス 危険な天才たち」感想

そういうものが崩されていく話はつらい。

無邪気な人間関係が壊れていく話はつらい。

事実の事件ベース物語

中国で実際に起こった不正入試事件を題材にしたという作品。

そういえば、日本でも何年か前に「Yahoo!知恵袋」を使った不正があったなぁ……。
カンニングの手口はネットのシステムが開発されればされるほど増えていく。それは凄い事だと思うけれども、やはり、不正で実力以上の所に上っても、そんなに上手くは行かないと思うの。
なによりも。

人の人生を犠牲にしてはならないと思う。

ラストシーンは、全て洗い流したような白さが印象的。


以下ネタバレ感想

懐かしさと切なさでグシャグシャの読後感。
 

彼らが失ったのは社会的な信用だけではなく、大切な青春の一ページだと思った。

計画は、たぶん、楽しかった。それをやっている間は友達だった。

ライバル同士、勉強はできるが家に金はなく、同級生たちに誇れるのはただ学力という共通の思い。恋人になるかも知れなかった。そういう未来もあったかも知れない。
 
「彼とは元々、友達ですらない。彼はいつも独りだ。」
 
ここでバンクの表情がちょっと曇る。
 
バンクが暴力を受けたことが、彼らがやらせたことじゃなくて良かった。……と、そう思っていたのに。
 
お勉強ができない以前に、やってはいけない事も分らないらしいパット。

 

何もかも失敗して、リンと久しぶりに会ったバンクの申し出に、ちょっとゾッとした。

新たな犯罪を考え出し、全てバラすと脅す……。

あの時、彼の人生を邪魔しなければこんな人にはならなかった。
 
1人の純真な青年を陥れてソシオパスを作り出した。

1バーツは3.39 円

10月27日現在。
 
3000バーツは10170円。

おそらく、リンやバーツのお小遣いには多すぎる額。
 
100万バーツは約340万円。

なるほど、留学できる……。でも、
 

グレースやパットがこんな事をして留学しても、あっちの授業さえ聞き取れないだろうと思われるように。

リンやバーツもこんな事をして留学しても、いつも心に後悔が詰まったままで勉強にならないだろう。

 
不正で手に入れた自由は、たぶん何よりも不自由。

だから、リンの選択はそれで良いし、それを押してくれる父はやはり素晴らしい人。
 
ラストは、新たな計画を持ちかけてニヤッとするバーツ……で終了しても良かった気がするけれども、彼らは未来ある学生だから。
 
やはり償わなくてはならない。

とても清々しいラスト。
 

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・象のロケット
★前田有一の超映画批評★

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