アイネクライネナハトムジーク
作品情報
監督・キャスト
監督: 今泉力哉
キャスト: 三浦春馬,多部未華子,矢本悠馬,森絵梨佳,恒松祐里,萩原利久,成田瑛基,八木優希,こだまたいち,MEGUMI,柳憂怜,濱田マリ,藤原季節,中川翼,祷キララ,伊達みきお,富沢たけし,貫地谷しほり,原田泰造
日本公開日
公開: 2019年9月20日
レビュー
☆☆☆☆
劇場観賞: 2019年9月25日
劇場を出て、ショッピングモールの立体駐車場から見える夕暮れの景色が前より輝いて感じられた。
帰りの車の中で斉藤和義の「小さな夜」が頭をグルグル回る。
とんでもない多幸感。
あらすじ
ギターの弾き語りが心地よく響く仙台駅前。大型ビジョンからは、ボクシング世界戦のタイトルマッチに沸く声。「劇的な出会い」を待つだけのボク・佐藤(三浦春馬)は、街頭アンケートを実施中だ。今時なかなか相手にしてもらえない中、珍しく快く応えてくれたのはリクルートスーツの女性。手には「シャンプー」の文字。これって運命?…(Filmarksより引用)
繋がる群像劇
伊坂幸太郎原作の映画の中でも最高に好きな位置!監督は違うけれども『フィッシュストーリー』を思い出した。繋がりの幸せと体験の同化。
本当にたわいもない出会いと生活の物語なのだけれど、その所々に懐かしさや温かみが感じられて、終始バカみたいにウルウルしていた(笑)
別に自分自身の物語ではないのに自分自身の思い出のように感じられる話に弱い。
『フィッシュストーリー』には割と大きな結末が隠されているけれども、こちらは、まぁ、本当に小さな宇宙である。誰にだって小さな宇宙はあるんだよね。
そして出会いよりも大事なのは……という話。
群像劇なので、「主役」といっても三浦春馬、多部未華子カップルの出番はそう多くない。
そこだけを目的で観に行くと残念な感想になっちゃうかも……。
” Eine kleine Nachtmusik “の意味
「アイネ クライネ ナハト ムジーク」は「ある 小さな 夜の 曲」という意味のドイツ語。
主題歌であり、劇中の所々で歌うたいが奏でている「小さな夜」 が物語を回しているということ。
「数え切れないほど」「思い出せないほど」「重ねてきた」10年の物語。
生活感のある日常風景
テレビドラマを見ていると、よく「この会社に勤めていて、この年齢で、こんなインテリアか」と思ったりするものだけれども、この作品の中の部屋は生活感に溢れていた。
小さな子供がいればオシャレなお部屋なんて保てないし。
収入の少ない若者には素敵なインテリア揃える余裕なんてない。
けれども、その中であちこち工夫してスッキリさせたり可愛くさせたりしている。きちんと人が住んでいる居心地良さそうな部屋。
帰ってから肉じゃがを作った。そうなるよねぇ。
日常がとても愛しくなる映画だ。
キャストと監督
先ほど『フィッシュストーリー』の事を書いたけれども、私にとっては伊坂幸太郎×中村義洋監督×斉藤和義が長い間のテッパンで。
近年はもう伊坂幸太郎作品は作らないんだなぁ、と寂しく思っていたところ。
今回のキャストも初めは「この位置は濱田岳だな」と思いながら見ていた。けれども、矢本悠馬が合うのよね。
中村義洋×伊坂幸太郎作品はもう懐かしい思い出になったんだなと思った。
今泉力哉監督が描く「繋がり物語」は、優しくて愛しくてとても良かった。
これからも、まだまだ見ていきたい。
以下ネタバレ感想
人と人はどうやって出会うのだろう。偶然の出会いなんて少女漫画みたいでなかなか恥ずかしい。
けれども、出会いはただの出会いだと一真は言うわけである。
大切なのは「出会って良かったと思えること」。
人生を共に過ごせば積み重ねが出来るわけで、出会いがどんなに劇的でもその後に悪い積み重ねがあれば人はいつか爆発する。
そして悪い積み重ねがあっても、良い思い出も積み重なっていればそれが免罪符になることもある。
大切なのは出会いよりも日常だということよね。
ウィンストン小野の勝利にみんなが喜んだ10年前。
再びの挑戦にみんなが期待した現在。
耳が聞こえない少年は10年越しの勇気。
10年の間にみんなが積み重ねて形を作って行く。
見ながら何度か考えた。
私はどういう10年を重ねてきただろう。
私はなぜこの人の隣にいるのだろう。
懐かしいことをたくさん思い出し、あの人は「悪くない」と思ってくれているだろうかと考え、ちょっと泣けた。
こういう余韻が好き。
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