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『七年の夜』人を食らう湖

七年の夜

原題 : ~ 7년의 밤/Seven Years of Night ~

作品情報

監督・キャスト

監督: チュ・チャンミン
キャスト: リュ・スンリョン、チャン・ドンゴン、ソン・セビョク、コ・ギョンピョ、イ・サンヒ、イ・レ

日本公開日

公開: 2018年11月11日

レビュー

☆☆☆☆

観賞: 2019年4月14日(DVD)

 

常々書いているけれども、一体、世の中のどれほどの親が自分の子育ては完璧で何一つ悪くないと確信して生きているのだろう。どれほどの親が、子どもは自分に似れば完璧な人間だと思い込むことができているのだろう。

「息子は俺と違う」
「絶対に似ては駄目だ」

そう告白できる時点で、「毒親」ではないと言ってあげたい。言ってもらいたい。

あらすじ

赴任先のダムへ車を走らせていた警備員ヒョンスは、濃霧のなかで少女をはねてしまう。動揺した彼は少女をダム湖に投げ入れ、ひき逃げを隠蔽。それ以来、罪の意識に苦しむ。資産家ヨンジェは、愛娘が無残な死を遂げたことに激高し、自らの手で犯人に復讐しようと動きだす…(七年の夜 [DVD](Amazon)より引用)

韓国・復讐もの作品

韓国映画といえば「復讐もの」でしょ……というくらい数多く作られる復讐ものノワール。

が、予告から受ける印象とはだいぶ違う。

あらすじでチャン・ドンゴン演じる父の娘が殺される事は分っていたので、そこから復讐の鬼になるのかと思っていたのだけれど……。

 
真っ当に生きている人間にとっては、共感できる人物が誰も居らず、戸惑いを感じるかも知れない。

そう、むしろ共感するなら、「あっち」なの。

 
何にせよ、韓国ノワールらしい鬼畜さに子供が絡むのは辛い。

久しぶりに見た、チャン・ドンゴンの凄みよ。

架空の湖・セリョン湖

暗い闇を湛えた田舎の灯台村にある湖・セリョン湖。

湖の村に「不吉」を訴える女。

悪魔が住む墨絵のような水の風景は『哭声』を思い出す。

死んだ娘を呼び戻す儀式も『哭声』のエクソシストのよう。

そして、湖を覗く目は、ヒョンスの井戸を覗く目とリンクする。

過去と現在を繋げる水の不気味さ。

チャン・ドンゴンはこんな俳優になったんだね

かつては「韓流四天王」と呼ばれた4人の1人で、イケメン俳優として日本で名を馳せたチャン・ドンゴン。

出演作は何本か観て来たけれども、今回は言われなければ気づかなかったかも知れない。

リュ・スンリョンさんも私にとっては『7番房の奇跡』に出てきた、何も悪い事してない優しいおじさんのイメージで……。

2人の主人公それぞれのキャラは私にとっては新鮮だった。

 
どちらも愚かで同情できず、しかし、どちらも愚かで悲しい親。

タガが外れたら人間どうなるか分らないという点では、共感できなくても理解はする。

結末は知らずに見た方が良い1本

過去と現在が交錯するシーンがいくつもある。時系列の行き来が効果的で面白い。

「ハラハラする復讐ドラマです」という紹介よりも、「親子の物語です」と紹介したい。

 
韓国から、また凄い映画が1本出てきた。

 


以下ネタバレ感想

 

「1人くらい」という言い方はよくないが、情状酌量の余地があったり(普通はそういう風に弁護されるし)反省の姿勢が大きく見られれば死刑にまではならないのではそもそも1人殺して「殺人鬼」とはあまり言われないよね……

と思いながら見ていたので、ああ、なるほどとクライマックスで知るわけである。

息子の命を救うために水門を開き、村が1つ水の底に沈んだ……。

 
「お父さん、助けて」と叫ぶ息子を動けない状態で見る。

ヨンジェの娘も「お父さん」と言って死んでいった。

父に助けを乞う物語。

息子は父に会いたくて。娘は父から逃げたくて。

ヨンジェにとっては復讐物語と同時に嫉妬の物語でもある。

そもそもは、自業自得だと。全く分っていないのが悪鬼の仕業。

 
息子は俺と違う。
絶対に似ては駄目だ。

 
誰も救われない理不尽さが韓国映画らしい……と思うけれども、いや、きちんと救われている。

負の血脈を切るという救い。

この子が生きていて因縁を断ちきったことが未来への希望

 

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