きっと、星のせいじゃない。
原題 : ~ THE FAULT IN OUR STARS ~
作品情報
監督・キャスト
監督: ジョシュ・ブーン
キャスト: シャイリーン・ウッドリーアンセル・エルゴートローラ・ダーンサム・トラメルナット・ウルフウィレム・デフォー
日本公開日
公開: 2015年2月20日
レビュー
☆☆☆☆
2015年2月23日。劇場観賞
闘病ものは苦手系、キラキラ恋愛ものも苦手系で避けまくっている私のような人にも全く心配なくお薦めしたい今作。
「泣かせ」じゃない、ベタベタしてない。
テーマは「死」よりも「今を生きる」こと。
あらすじ
13の時からガンの闘病生活に入ったヘイゼル・グレースは人生を達観し、引き籠った生活を送っていた。両親の勧めでしぶしぶガン患者の集会に参加したヘイゼルは、そこで骨肉腫を克服した青年、ガスと出会う。
文学の話で盛り上がり惹かれあっていった2人は、ある作家と対面するための旅に出る。
闘病もの作品の何が嫌かって、特に日本の場合はこれでもかというほどベタベタと泣かせに走るところ。いや、泣くけれどもね…泣きながら頭の半分では「また泣かせようとしている…」と妙に冷めちゃうのである。
この作品にはそれが無かった。
たくさんの名言とたくさんの生きる力
「苦しいけれども私、頑張る~!」という主人公はいないし、親がいつもいつも陰で泣いていたりしないし、主人公を気づかったりベタなセリフで励ましたりする友達もいないし、悲しみ誘う暗いつらい音楽もない。
わずか13歳で死の淵に立ち、以降ずっと「爆弾」を抱えて生きるヘイゼル・グレース。命綱の呼吸器は手放せない。
人生を冷めた目で見るようになっても仕方ない。どんなに辛かっただろう…などと考えるまでもない。
けれども両親は彼女に「普通の子」のような青春を求める。この気持ちもよく解る。もっとも、自分には多分ここまでの強い後押しはできない。きっと好きなようにさせてしまう。
余命を生きる本人の気持ちと家族の気持ち、そして恋人の気持ち。全てを自分に置き換えて見た。特に親目線。そんな覚悟はしたくないけれども、自分の子どもがもし…と考えたら、こんなに明るく支えられる気がしない。
ヘイゼル・グレースを演じるシャイリーン・ウッドリーとガスを演じるアンセル・エルゴートの清々しいほどの透明感と輝き。
アンセル・エルゴートくんはイケメンだったなぁ。ガスが、本当に容姿ではなくて(容姿もだけど)その存在感全てがキラキラしていた。ヘンゼルが惹かれていくのに納得の人材。
病気じゃなくても、事故で事件で災害で…人の命は突然終わる。
残された人の気持ち、悔いなく終わりを迎える事。誰かの中に残る事。
人生を輝くものにしたい。しよう。
闘病もの作品なのに元気や勇気を貰える…そんな1本。
ここから下ネタバレ↓観てない方は観てから読んでね
以下ネタバレ感想
キミの話をして。
13歳の時に発病したの。
病気じゃなくて、キミ自身の話。
病気の人が集まったら病気の話になるのが当然…と、ヘイゼルだけではなく誰もが思うだろう。けれども、ガスはそうは言わない。「キミ自身の話」
友達が出来たって恋をしたって病気を忘れられるはずもない。けれども病気の話から離れて自分自身を語る。そこから違う目標が生まれる。
ヘイゼルがピーター・ヴァン・ホーテンの小説『大いなる痛み』の「その後」に拘るのは、当然自分自身が居なくなった後が気になるからだ。
ずっと自分を見守ってきた両親。自分が居なくなったらどうなるのか、いつも気にしている。
ヴァン・ホーテンから「続きなんてない」と冷たく言われてからのアンネ・フランクの隠れ家…。アンネの痕跡である隠れ家、アンネの数々の言葉、写真、日記。
彼らは知る。短い人生の「今」を生きていた少女がかつてここに居たことを。
0と1の間には無限の数字がある。
0.1、0.12…0と2の間には、もっと大きな無限がある。
与えられた以上の数を私は手に入れたいの。
人生は1だけじゃない。
たくさんの人や物に出会って、たくさんの体験をして、自分自身で時間を延ばしていく。体験時間が人生を豊かにするという事。
その切っ掛けが母が薦めてくれたガン患者サークルであり、ガスとの出会い。
ガスは先に逝ってしまった。
生前葬に喋った弔辞を葬儀では飲みこむヘイゼル。
葬式は生きている残された人たちのものだから。
「何かを残したい」と言っていたガス。それは誰でも同じなのかもしれない。私たちは誰かの中に残ろうとする。それが生きるということなのかも知れない。
大抵の人間は名を残すことなく死んでいく。
けれども豊かに生きた人は、きっと誰かの中に存在を残す。
0.11111…くらいの割合でもね。
ヘイゼルの中にガスがいるように。ヘイゼルの両親の中にヘイゼルがいるように。
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