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『ワレサ 連帯の男』時計と指輪

ワレサ 連帯の男 ~ WALESA. CZLOWIEK Z NADZIEI ~

    

監督: アンジェイ・ワイダ   
キャスト: ロベルト・ヴィェンツキェヴィチ、アグニェシュカ・グロホフスカ、マリア・ロザリア・オマジオ、ミロスワフ・バカ、マチェイ・シュトゥル、ズビグニエフ・ザマホフスキ、ツェザルィ・コシンスキ
公開: 2014年4月5日

2014年10月6日。DVD観賞

ポーランド共和国の元大統領にしてノーベル平和賞受賞者、レフ・ワレサ(レフ・ヴァウェンサ)の伝記的映画。世界大戦からのポーランドを描き続けてきたアンジェイ・ワイダ監督の最新作である。

『地下水道』『灰とダイヤモンド』『カティンの森』、自分が見てきたワイダ監督が描くポーランドは抑圧されて鬱々とし、灰色で、ただ怒りと悲しみを覚えるものだった。

『ワレサ』では、そんなワイダ監督のポーランドにようやく光が溢れ出す。ご自身も「連帯」の上院議員を務めた経緯がある監督。ここは絶対に描きたかったところだろうな…ゴールのような物なのではないだろうか。

と言っても、そこに辿り着くまでの道のりは決して容易ではない。闘っては捕まり立ち上がっては頭を打たれ、抑えつけられてはまた立ち上がる。

辛い時代である。物価は高騰し、労働者は政府に支配される職場に抵抗できず、声を上げれば力で抑えつけられる。モノクロで淡々と語られる灰色の歴史。

けれども、この主人公は飄々としてよく喋り、ユーモラスでへこたれない。だから、負の歴史を意外と苦にならずに見ることができるのだった。

「何とかなる」の精神で何とかしちゃった男…ワレサって、そんな人だったんだという驚き。

<あらすじ>
1970年12月、ポーランド。グダニスクのレーニン造船所で電気工として働くレフ・ワレサ(ロベルト・ヴィェンツキェヴィチ)は、物価高騰に抗議する労働者とそれを武力で鎮圧する政府の双方に冷静になるよう訴えて検挙されてしまう。

これを機に普通の労働者として生きてきた彼の生活は一変し、政治活動へとのめり込んでいくように。やがて、レーニン造船所のストライキ指導部の先頭に立ち、国家の民主化を訴えた独立自主管理労組「連帯」委員長となる。しかし、その活動を懸念する当局に軟禁されてしまう。
シネマトゥデイより引用

労働運動の様子はリアルに伝わる物の、海外のジャーナリストのインタビューに答えるという形で史実を淡々と年代順に描写していくものなので、単調といえば単調。

この時代のポーランドに何の関心もない人にとっては退屈かも知れない。

自分的にはワイダ自身よりも奥さんにばかり目が行っちゃう作品になった。

何度も職を失って逮捕されて命もどうなるか解らないのに労働運動に駆けずり回る夫…貧しい暮らしの中で6人も子どもを育て上げて、言いたい事もいうけれども結局は夫を応援し、支えている。一見か弱そうに見えるのに芯は強くへこたれない。

ああ、すごい…当たり前だけれども、とても真似できない。
ワレサ.png

レフ・ワレサという人は、決して学問に長けた人では無かった。とにかく行動した。演説した。あきらめずに人を引っ張り、知恵を集め、皆の意見を総括して闘う事が出来る人だった。

時代を変えるのはこういうリーダーなのだと胸が熱くなるパワフルな作品。

※個人的にはロックのBGMは、ちょっと唐突感があったかなと…。

 


以下ネタバレ感想

 

 

何かあったら、これを売れ。

ワレサが奥さんに時計と指輪を渡すシーン。
何回あっただろう。3、4回

それだけあったという事は、奥さんは何があっても売る事は無かったという事。

自らが始めたわけではなく、祀り上げられるような形でいつの間にかリーダーになった。どうして一介の労働者である自分がそうなったのかは自分でも解らない、と、とぼけた返答をするワレサ。

俺は首をツッコむのが好きなんだ。

いつも心の中に怒りを抱えている。そして、群衆の怒りを利用して起こした運動。

いつしか「連帯」の代表になり、大統領にまでなり、ノーベル平和賞まで受賞した。
それでも彼は、自分は今でも労働者だという。目線はみんなと同じ。決して上に立ってはいない。

ラスト、出掛けていく夫に指輪を渡し、時計をつけてあげる妻。
もう売る必要はないんだな…という奥さんの安心感が伝わった。

「ワレサ 連帯の男」公式サイト

 


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・象のロケット

★前田有一の超映画批評★

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