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『ルートヴィヒ』永遠の謎となるバイエルン狂王

ルートヴィヒ ~ LUDWIG II ~

    

監督: ピーター・ゼア、マリー・ノエル   
キャスト: ザビン・タンブレア、セバスチャン・スキッパー、ハンナー・ヘルツシュプルング、エドガー・セルジュ、フリードリヒ・ミュッケ、ユストゥス・フォン・ドナーニー、サミュエル・フィンチ、トム・シリング、ポーラ・ビール
公開: 2013年12月21日

2014年9月21日。DVD観賞

19世紀、今のドイツ連邦共和国の一地方に当たるバイエルン王国を統治し、「狂王」と呼ばれたルートヴィヒ2世の生涯を描いた物語。

伝えられた史実を追った作品であり、特に独自の新解釈で語られている部分は無かった。「Wikipedia」にすら記載されているような概要がそのまま映画になっただけという感じ。

しいて言えば死因について諸説ある中の1つを取った…オリジナリティはそんなところ。

描写もとても生真面目で奇抜な演出はない。盛り上がりもあまりない。ルートヴィヒ2世という人の伝記を知りたければ、良い教科書かも知れない。

個人的にはオーストリア皇后・エリーザベトと交流の深い人だから関心があった程度だったので、その人生を映像化したものを観賞できたのは嬉しい。(シシィのキャスティングには物すごく不満です… もっと…いたでしょ…誰か…)

1972年、ヴィスコンティの『ルートヴィヒ/神々の黄昏』は未観賞。今度はそっちを見てみよう。

ストーリーは「伝記」だとして、見どころはやはり「美」と「芸術」に拘り続けた彼が作った建築物。

彼が心酔したワーグナーの音楽、歌劇を上演する劇場の煌びやかさ、現在でもドイツの観光名所として愛されているノイシュヴァンシュタイン城の美しさ。そして、自然の美。
    ルートヴィヒ.png

こんなに素晴らしい物をたくさん残した王なのに…その歴史風景を考えながら見ると、やはり、
何やってるんだよ、あんた……。。
…という気分になってきてしまうから悲しい。

「狂王」と呼ばれた生涯は、呼ばれても仕方ない行動の数々だったのだと納得する。

生まれた時代を間違えたよね…。
私は、もちろん「戦争やれよ」とは全く思っていないが、やはり国を取ったり取られたりの時代に芸術と美と平和を求めてそこに投資しまくり現実を直視できない王は、ヘタレだとしか思えないのだった…。

こんな時代に生まれて可哀想過ぎる。

ワーグナーから大臣、伯父に到るまで、みんなが特に悪人ではなく、実は国の行く末や芸術の行く末を嘆いての行動。誰もが皆、善き人であり勝手な人でもある。

…でも、一番勝手なのは王なのだった。
時流を読まなかった、いや、読む事から逃げていた孤独な男の行く末を描いた真面目な伝記映画。

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以下ネタバレ感想

 

 

彼がワーグナーに心酔した理由も男色に走る理由も、父の遺体に寄り添っていた即位前を見ればよく理解できる。ファーザーコンプレックス。

父親に認められたい、愛されたいという思いが、最後まで彼を苦しめつづけたのだろう。

個人的には、本当に可哀想だと思ったのは弟のオットー1世なんだけどね…。
彼こそ兄の被害者だと思うんだよ…おかしくなったのは絶対に重責によるストレスだよね。兄さんがあんなだから…あんなだから。

ルートヴィヒ2世が本当に精神異常者だったのかどうかについては闇の中である。
今作では自殺になっていたけれども死因も闇の中である。

自分は、ずっと暗殺されたのだと思っていた。これを見た今でもそう思っている。亡くなった湖はごくごく浅かったというし、廃位の翌日だもん…消されたよね。

けれども、この映画ではこれでいい。

永遠の謎でありたい。

と言っていた王の生涯は本当に永遠の謎となった。

「ルートヴィヒ」公式サイト

 

 

 


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・象のロケット

★前田有一の超映画批評★

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