母なる復讐
原題 : ~ DON’T CRY, MOMMY / 돈 크라이 마미 ~
作品情報
監督・キャスト
監督: キム・ヨンハン
キャスト: ユソン、ナム・ボラ、ドンホ、ユ・オソン
日本公開日
公開: 2014年1月26日
レビュー
☆☆
2014年8月31日。DVD観賞
女の子の親にとっては、かなり見るのが辛い作品になるだろうな…。
少年法については日本でも被害者及びその家族が辛酸を嘗める事件が数多く、いつだって加害者は報道も含めて法によって守られ、被害者のプライバシーのみが「同情」という名の野次馬的記事によって拡散されていく。
犯罪の低年齢化によって法は徐々に改正されている。2014年には有期懲役の上限が15年から20年に引き上げられた。それでも未成年に対する法律は軽い。未成年は先が長く未来があり更生する機会があるからだといわれるが、再犯率が多いこともデータで確認されている。
被害者の方には未来なんてないのにね。
あらすじ
夫と離婚し、娘のウナ(ナム・ボラ)と一緒に新たな生活をスタートを切ろうと考えていたユリム(ユソン)。二人で力を合わせて生きようとする中、ウナは転入した高校で出会ったチョハン(ドンホ)という男子生徒に心惹(ひ)かれる。
チョハンに学校の屋上に呼び出されてテンションが上がるウナだったが、そこで待ち受けていた彼と不良グル-プに犯される。
事件を知ったユリムは彼らを訴えるが、チョハンは証拠不十分で釈放、ほかの仲間たちは保護観察処分になってしまう。
(あらすじは「シネマトゥデイ」さんより引用)
韓国の少年法
韓国の少年法は日本のものに似ているが、検事先議制(非行少年を刑事裁判所に送るか少年審判所に送るかについて検察官が裁量権を持つ)を採用しており決して刑罰は甘くはない。検挙率も高いと聞いていたのに…この始末?
映画のラストには不起訴や無罪になった少年事件の実例が流れ、やるせない気持ちにさせられる……ん?でも、それらってこの映画の事件とは違うよね?
実話ベース?
実話ベースだという触れ込みで見たんだけれども…これは実話ではないよね?
そういう事件があった…という部分は実話なのかも知れないけれども、恐らくそのベース以外の、つまり90%以上の部分が完全フィクションだと思うの。
事件は本当に痛々しく加害者たちは本当に鬼畜で、母親の心情は切なく、気持ちは充分理解できる…けれども、何だかな…というツッコみ部分が多かったのも確か。
泣きながらツッコみ、ツッコみながら泣くという…とっても複雑な見方になってしまったのだった。
いや、そもそも実はそれほど泣けたわけじゃなかった。←じゃ、ツッコミだらけやん…。
だって、何だか色々と納得いかないんですもの。
少年法うんぬんよりも…
自分的には、この作品で何か社会に訴えたいのだとしたら、それは「少年法」ではなくて警察の捜査や裁判のズサンさだと思うの。ね、もっと、ちゃんと調べて。証拠は初めからあったはずじゃん。
こんないい加減な捜査がもしも実話なのだとしたら、それが酷い。
92分と短いせいもあるのだろうが、人が行動を起こすための心情の掘り下げも浅い。何のために出て来たのか解らないキャラやシーンさえある。扱っているテーマは深いのに何だかもったいない。
『トガニ』のような深い問題提起作品を期待したんだけど…そこまでは相当遠かった。
以下ネタバレ感想
「加害者は少年法に守られ判決は総じて軽い。」
「娘からのSOSに気づけなかった状況」を警察で訊かれる母。
どの国でも、平気で人の心をえぐる人間はいるもんだ…と、ここでは思った。ユリムに同情した。
けれども、事件後のユリムのやる事が色々と何だかな…。
お稽古…学校…友達…そんな事、できるわけないって娘の状態を見ていれば解るでしょ。カウンセリングとか病院に連れていくとか田舎に引っ越すとか…そういう発想の方が先じゃないか?
動画を見せられて誘い出された時にも、どうしてついて行かないんだろう。突然、出掛けると言い出しておかしいと思わないかな。
ウナ本人も、どうして行くんだろう…と思った。あんなカッターで身を守れると思う幼稚さ。中学生かと思ったら高校生だもんね。1度目は本当に可哀想だと思っていたけれども、2度目のアレはないわ~。
まぁ、母親に心配をかけたくなかった。知られたくなかったというのは解る。
しかし、一卵性親子のように仲良くて、どうして言ってくれなかったのかとユリムが嘆くシーンがせめてあればね。
手首切った後もね…なぜ救急車を呼ばずに自家用車で連れていくんだ。 もう、手落ちだらけ。
「SOSメールに気づかなかった」切っ掛けになった男性や、元ダンナの女弁護士や…その辺は一体何だったのか。
大抵の場所に刑事が付き添っているっていうのも何だか変だし…結局は脅されていたとはいえ娘も加担していたというのにそれに関する感情の動きもほとんど無し。
何よりも、あんなに普通~~の戦闘力なのに、よく1人で頭も使わずに乗り込んでいくよね。 自分も犯されたり殺されたりしたら復讐にもならなくて、ますます悔しい思いをするだけじゃないか。
とにかく…呼び出したり呼び出されたりにメールが使われている事は初めから解っていたはずなのに、あいつらの携帯もパソコンも調べず無罪になるなんて…。ありえないわ。
上にも書いたけれども、こういう事例がなくならないのだとしたらそれは警察と検察のせいだから、少年法うんぬんよりもまずそっちを何とかした方がいい。
そうしなければ、被害者も浮かばれない。
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・象のロケット★前田有一の超映画批評★
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