幕末高校生
監督: 李闘士男
キャスト: 玉木宏、石原さとみ、柄本時生、川口春奈、千葉雄大、谷村美月、吉田羊、渡辺邦斗、柄本明、隆大介、山崎銀之丞、伊武雅刀、石橋蓮司、佐藤浩市
公開: 2014年7月26日
2014年7月30日。劇場観賞
荒唐無稽なタイムスリップ物なんだし~……タイムスリップした時点で歴史は変わってしまっているんだし。だから、ツッコんでも仕方ないんだ。仕方ないんだ…と、思っても思っても止まらないツッコミ。
そう。歴史は変わってしまっているので…歴史が大好きで詳しい方ほど、頭を空っぽにして見た方がいい。貴方が知っている幕末はここにはありません!この世界には山岡鉄舟もいないしね。(←それは説明されている)もしかしたら鳥羽・伏見の戦いもなかったかも知れないし。いや、もしかしたら黒船も来てないかもよ。
時は、1868年。無血開城を控えた動乱の幕末……。
いや、作り話なんだから史実なんてどうだっていいじゃん、と思えるほどのブッ飛び感があればそれでも良かったんだけど~。何だかハンパ。
こういう話はもっとコメディに徹した方がかえって興味深く見られる気がするのだが、そこは脚本が橋部敦子さんだからか妙に所々真面目人情ものになってしまっているのだった。
なのに話は何だかアッサリと軽いので、とにかくアンバランス…。
せっかくのタイムスリップものなのに、飛んだ方も受け入れる方もあまり驚きがないのね。そもそも服装にもっと驚こう…。あの時代、メリケンだってあんなに足出してる女はいないから。言葉の違いにももっとツッコんでほしかったよ。『信長のシェフ』を見習っ……ぃぇ、何でもありません…。
平成から持ち込まれた小道具にももっと驚いて欲しかったんだが…いくら先進的な考えの持ち主だっていったって、あれをすんなり受け入れちゃったら宇宙人をすんなり受け入れるのと同じだろ。
せっかくのタイムスリップ展開があまり生かされていないのが色々と残念だ。アレを置いてきた結果こっちも変わるとか、架空のあの人がいる理由とか、もっと絡めてほしかった。
また、時代の描き方がもう…ここはツッコんでも仕方ないんだけど~。
1868年といえば、すでに大政奉還後。あれは、鳥羽・伏見の戦いで旧幕府軍が薩摩・長州軍に敗れて朝敵とされ、徳川慶喜が江戸に逃げ帰ってきた後の話なのである。史実の慶喜さんは恭順を示すために上野寛永寺で謹慎中。戦う意志はない。
もちろん幕臣の間では抗戦する派と戦わない派に割れています。それもこれも慶喜さんの命を救い「徳川」を残すため。もう勝海舟1人を暗殺したってどうこうなる問題ではない事は皆が解っている。
動乱時にはどんな時代だって国だってテロリストみたいなものが出てくるわけで、勝さんを暗殺すればいいと思っていた人間もいただろうさ…けれども上の方の人たちが暗殺のために部隊を動かすとか……
いや、架空の物語なんだからいいじゃん…と、そこは思ったとしても、クライマックスの立ち回りシーンはないよね。あそこまでやったんならもう町民なんか巻き込んでも撃つだろ。なんかもう……幕府がお馬鹿すぎてどうしてこうなったんだって感じ。
玉木くんにとっては見せ場だろうけれども「ないわ~~」としか思えないのでひたすら滑稽にしか見えなかった。『平清盛』で、追い詰められて必死の形相で戦う源義朝の演技に泣かされたのを思い出して私ゃ悲しくなったよ。
玉木宏にしろ佐藤浩市にしろ、大河ドラマを始め由緒正しき歴史ものに多数出演している俳優さんをこんなのに出しちゃダメだわ~~…と、つい思ってしまったのだった。
まぁ…千葉ちゃんを観に行ったのだから、それでいいんだ…私は。千葉ちゃん、かわいいよ千葉ちゃん。
あと、川口春奈ちゃんね。彼女にメロメロな柳田さんが面白すぎた。そりゃメロメロになるよね。春奈かわいいよ春奈。
勝さんの奥さん、民子さんを演じた吉田羊さんが本当に素晴らしく武家の妻らしかった事。徳川慶喜を演じた篠井英介さんにはぜひヘタレた慶喜設定の大河でまた慶喜役をやっていただきたいと思った事は特筆しておきたい。
以下ネタバレ感想
そもそも、春奈ちゃん@恵理が「徳川さん、いるよ。平成に徳川さんっているいる~~♥ 」
と、言ったから柳田龍三(←架空の人物です)が、徳川は勝てるんだと思い込んだ…という設定なんだよね。(別に恭順して徳川を残すという考えに行ってもいいはずだか…)恵理と柳田の出会いはこの映画にとってとても重要なはずなんだよね。
なのに、雅也が迎えに来たら恵理がアッサリ柳田の元を去ってしまうというのはどうなんだ…。恵理だって何ヶ月も柳田の世話になって暮らしていたのに、挨拶もしないで帰っちゃうのね。ちょっとヒドイ。
この、柳田龍三が恵理にメロメロという設定は面白かったので、もっと生かしてほしかった。いっそ、無血開城の切っ掛けになるのも恵理が柳田を説得した…という話にしても不自然じゃないくらい活用しても良かったのに。
で、ラストはルービックキューブを置いてきた結果、歴史が変わって柳田が2014年の歴史の教科書に載ることになった…みたいなオチくらいあっても良かったのに。
せっかくの架空の重要人物・柳田龍三、活用されてなさすぎ。
西郷さんの顔を見て歴史教師の未香子が西郷さんだとすぐ気づくのも、ちょっと悲しかった…。2014年現在、歴史の教科書はどうなっているのかよく解らないけれども、私らの教科書に載っていた西郷さんの肖像も上野の銅像も西郷隆盛ではないという説が今はもう通説。
まぁ…一番のツッコミ所は、やっぱりあの勝さんが1人であんな大勢と戦っちゃうところですけどね…。 「るろ剣」じゃないんだから。
そして、町民を見たら大砲撃つの止めちゃう幕閣軍も何なの。あそこまでやっちゃったら、もう勝さんごとまとめて撃てばいいじゃん。
っていうか…勝さん1人に大砲まで持ち出すとは…あんたらこれから薩摩と戦うつもりなんでしょ~。兵も弾薬も無駄。ガチでおかしすぎる。
あっ…結局、いっぱいツッコんじゃった。
とりあえず、話がどんどん流れるので退屈する間は無かった。それは良かったところ。
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