ノア 約束の舟~ NOAH ~
監督: ダーレン・アロノフスキー
出演: ラッセル・クロウ、ジェニファー・コネリー、レイ・ウィンストン、エマ・ワトソン、アンソニー・ホプキンス、ローガン・ラーマン、ダグラス・ブース
公開: 2014年6月13日
2014年6月13日。劇場観賞。
※このレビューでは、旧約聖書「創世記」に関して色々と失礼なことが書いてある可能性がありますのでキリスト教信者の方は注意して…じゃなくてスルーしてください。
当方は特に宗教批判するつもりはなく、聖書は一読み物として興味を持っている程度のただの無宗教者です。
だ…だって、そもそも映画の内容が新解釈すぎるし…信仰している方にとってはこの映画自体が引っかかりだよね、たぶん。
『ノアの方舟』は、旧約聖書の『創世記』で描かれる物語である。
聖書など読んだことも触れたこともないけれども何故かこの名前だけは知っている、という方は多いはず。
ザックリ書いてしまうと、大洪水から「ノア」という神に選ばれた一家が神に選ばれた動物たちを救う…という物語である。
もっとも、この洪水自体が神の業なんですけどね。
要するに人間たちが争いばかり始めて始末に負えないから動物の「種」を一通り残して後は全部滅ぼしちゃおうという…そんな計画です。ヒドイ。
ノアも人間だと言っても、我々よりは遥かに神に近い存在だと思った方がいい。
なんせ、方舟を作るようにお告げを受けた時、ノアさん500歳だか600歳だか。
「神と共に歩んだ正しい人」と記されているノアさんは、つまり、日本神話でいう所の「何とかのミコト」みたいな存在と同じかと。
そう考えると『創世記』は神話のようなものだとも言える。(引っかかる方はすいません )
これを「予言の書」だという説もある。
多分に抽象的なのである。
その辺、ゴタゴタ説明するととっても長くなるので…とりあえず、この映画では私たちと同じ「普通の人間」のように描かれています。
物語は神が人間の祖であるアダムとイブを創造され、そこから9代目のノアの父・レメクが殺害されるところから始まります。
先ほども書いたけれども『創世記』自体が神話のようなものなので、どんな新解釈だろうがそれなりに面白い。
ノアの方舟ってものを映像で見たのはたぶん初めてだと思うので(たぶん…)、その迫力や構造は見応えがあった。
どうやって作ったのだか…と、ずっと思っていたわけだけれども、なるほどあんな物が居て手伝ってくれたらね…(ペプシのCMがダブったとか思ってゴメンナサイ…)
ただ「新解釈」のために起こる「ある設定」に割いた時間が長いので、その辺でちょっと中弛みを感じたのである。
船に乗りこんでしまってからの家族それぞれの人間的な葛藤は理解できるだけに見入ってしまう部分。
お告げ通りに使命を遂行しなくてはならないノアには感情移入しづらいかも知れないが、神の命令は絶対であり本来は逆らったりなど有り得ないのだから仕方ない。
この辺り、「神は絶対であり主君は絶対であり親は絶対である」背景を読まずに平成頭で見ているとノアに殺意を覚えたりしちゃうのかも知れない、と、ふと思った。
人の子の親であると同時に神の子であるノアの苦しみは充分伝わった。
でも、最終的には平成頭な結末ではあるんだけど。
この作品のノアは家族のために苦悩するし、家族のために反省するし、神すらもたぶん……。
その結果、人間は今も奪い、殺し、騙し、争い、自然を壊す。
ノア一家の責任は重い。
個人的にはハーマイオニー@エマ・ワトソンの女優として成長した姿を確認できて嬉しかった。
それだけでも満足って事にして。♥
以下ネタバレ感想
「新解釈」のために起こる「ある設定」…すなわち、ハムに妻がいないって設定のせいで「女女女女…」何だか選ばれた一家にしてはどうなのよ、これ、と思ってしまった。
まぁ…そういう所も含めて「人間」なんですけどね。
ノアが次男と三男の妻をどうでも良しとしたのは、動物たちを救った後に自分たちは消える「人類滅亡計画」だった……いや、ノア自身がそう思い込んだという新解釈。
水にのまれる人間たちを冷酷に切り捨ててきたノアも、自分の子どもと孫を切り捨てることは出来なかった。
自分は「良い人間」だから選ばれたのではなく「神に逆らわない」から選ばれただけだと覚悟して粛々と命に従ったノアの「人間」としての決断。
そうして「人間」の子孫を残してしまった結果、現在どうなっているか。
そろそろ神の新たな仕切り直しが始まるような気がしちゃうよね…。
さて。神話だと思えば物語の大半は特にツッコむ必要もないんだけれども、これだけは大きくツッコんだから言わせて。
「人間」、このメンバーじゃ子孫増やせないんですけど。
イラの双子の娘がいるから伯父と姪になっちゃうけどハムとヤペテにはそれを当てればいいのか…と思っていたけれども、ハム1人でどっか行っちゃうし~。
ちなみに、セムはアジア系・黄色人種の祖。ハムはアフリカ系・黒色人種の祖。ヤペテは白色人種の祖と言われています。
妻がいないと黒色人種と白色人種、この世に生まれなくなっちゃいますが…いいのか。
『ノアの方舟』の神は実際は人間を滅亡させようなどという無慈悲なお告げはしていない。
だから息子たち全員に妻が居る。ノアの方舟に乗った「人間」はノアと3人の息子とそれぞれの妻、計8人…のはずなのよ。
これ、どーします?
まぁ数は、ノア一家5人とイラ、イラの双子…で合ってるんですけどね。(そこ凄い。でもトバルカインも乗ってたぞ )
個人的には新世界に着いてからのあの「裸で寝るノア」シーンも驚いたな…あんな風に使うとは。
あれは本来、
新世界で葡萄栽培を始めたノアがワインで酔っぱらって裸で寝ているのを見つけたハムが兄弟たちにチクリ、セムとヤフェテは父の裸を見ないように後ろを向きながら布を掛けた。
目覚めて自分の裸をハムに見られた事を知ったノアは大変怒り、
「カナン(ハムの息子)は呪われよ。彼はしもべとなってその兄弟たちに仕えよ」
と言った。
…というシーンなのである。
個人的には『創世記』を読んでいた時には「裸を見たのはハムなのになぜその息子が呪われなきゃならんの?」という意味不明な場面だったんだけど。(これは人種的な差別の予言だという説もある)
この作品では家族に顔を合わす事が出来ずに行方不明になって飲んだくれていたノアをハムが発見し、過去の娘を見捨てたことも相まっての父への絶望感からハム自身が家族を捨てて遠ざかっていく…という新解釈になっていた。
まぁ…威厳の欠片もない平成頭のダメ親父っぽくなっちゃってたけれども、物語としてはこの方が自然だよね。
ただ、神さま、ハムに女を与えてあげてください…と祈りつつ見守ったのだった。
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