人狼ゲーム
監督: 熊坂出
キャスト: 桜庭ななみ、太賀、竹富聖花、岡山天音、入江甚儀、大沢ひかる、梶原ひかり、藤原薫、平埜生成、藤井美菜
公開: 2013年10月26日
2014年4月21日。DVD観賞
桜庭ななみたんは好きなので…。でも、きっとよくある若手アイドル俳優を集めてキャーキャー言わせるホラーなんでしょ。と覚悟して見た。
引き算目線で見たおかげもあってか、かなり面白かった。
少なくとも黄色い叫び声にウンザリするような内容ではなかった。
むしろ…ぎゃーぎゃー騒ぐ様子にゾッとした。リアルだと思った。
役者さんも学園ものドラマなどで活躍している演技の確かな人たち。
『鈴木先生』の竹地はここでも学級委員っぽいし~。
『闇金ウシジマくん』のナカタはここでもテンパってる…。
閉鎖された空間で起きている事なのでロケも特になくセットもお金はかかっていなそうだけれども、追い詰められていく様子は演技や演出で充分に味わえた。
「人狼ゲーム」は、アメリカのLoony Labs社から発売された「Are You a Werewolf?(汝は人狼なりや)」というパーティゲームから広がり、カードゲーム、ネットゲーム、書籍、テレビ番組など世界中で流行している。
本作は、このゲームに巻き込まれた10人の若者を描くリアル「人狼ゲーム」である。
主人公は高校2年生の愛梨。友達と一緒に学校帰りに突然拉致された愛梨は気づくとどこかの施設に収容されていた。中にいたのは同じように攫われてきた高校生たち。
ワケがわからないまま、愛梨たちは設置されていたビデオのいうがままにゲームに強制参加させられる。
「皆さんは村人ですが、みなさんの中に人狼が2人紛れ込んでいます。」
「村人は夜9時までに人狼を殺してください。」
「殺せなかった場合、全員死亡します。」
「人狼は夜12時から2時までの間に村人を1人殺してください。」
突然集められて「さぁ、殺さないと殺されちゃうよん」と言われてもホイホイ実行できる人間なんかいないわけで。
ルールは指示されるものの、誰が「人狼」なのか解らなければどうにもならない。
解らないがやらなければ殺される。
どうすればいいのか見当もつかず、オタオタしたり怒りっぽくなったり泣いたりするのはよく解る。この状況で落ち着いていられる方がおかしいよね。
メンバーの性格もよく出ている。それぞれの動き方がリアル。
色々と正義の理論ばかり語って泣いてばかりいる主人公・愛梨に結構イラッとさせられる…。ななみたん、ホントにこういうウザい役が多いな。
この子が変わっていく物語でもある。…つまり、人間が状況を受け入れざるを得ないところまで追いつめられる過程を見るドラマでもある。
ショッキングな映像は、ハッキリ描かれない。
カメラの視点がおかしいのである。遠くから眺めているような…監視カメラが映し出しているような視点。この違和感が見ている方をも不安にさせる。
誰が人狼なのか、これからどうなるのか、考えながら見ている内に時間はあっという間に過ぎた。
「退屈じゃない」という事は、この手の作品ではとりあえず成功だと思う。
深夜帯で放映されていたアニメ『ダンガンロンパ』をちょっと思い出す。
あれの実写版っぽくもある。
とことん苦悩している分、こっちの方がリアル。
ここから下ネタバレ↓観てない方は観てから読んでね
主人公が「村人」だということは初めに観客に見せられるので、その時点で実は主人公が「人狼」なんでしょ。というよくありそうなパターンはなくなる。
では、誰が「人狼」なのか…というのは最初の方では本当に解らないのね。
尚子が一番最初に外に出ようとして死んでしまうシーンは劇中の人と同じくらい衝撃的。
これで主人公を助けたり裏切ったりして友達同士でギャーギャー叫びあう内容ではない事も解る…同時に外には絶対に出られないのだと強く印象付ける。
脚本が上手いな、と思った。
ありきたりな奇想天外ドラマとは、ちょっと違う。
殺す方も殺される方も受け入れたくないけれども受け入れざるを得ない。
この状況で誰も信じられるはずもない。
最初に誰が誰を指し示したかなんて最後の方には忘れているから、このみのカメラアイは観客にとっても助かる。
結局は理絵とトモヒロが「人狼」。
しかも、二巡目とはね…。生き残れば二巡目。1億なんて最初から払う気ないよね、主催者。
人は誰かを殺さないと生きていけない事を実感できるから。
受験や会社社会は実際に命奪い合うものではないからな。
…でも、精神的に殺される人がいるのは確かだ。
二巡目に入った愛梨とこのみは理絵やトモヒロみたいに上手く演じられるのか…。
生き残りたかったら甘い事は言っていられない…はず。
でも、この後を続編で見たいとか、そんな風には思えない。
このくらいの余韻でちょうどいい。
★前田有一の超映画批評★
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