きっと、うまくいく~ 3 IDIOTS ~
監督: ラージクマール・ヒラニ
出演: アーミル・カーンカリーナー・カプールR.マーダヴィンシャルマン・ジョーシーボーマン・イーラーニーオーミ・ヴァイディヤ
公開: 2013年5月18日
2013年5月24日。劇場観賞。
空を飛ぶ映画である。
カラフルな映像と広がる音の洪水に乗ってどこまでも舞い上がって行きそうな映画。
この目の前が広がるような気持ちいい感覚はぜひ劇場で…と言いたいけれども、レビューが1ヶ月近く遅れたので大方の地域ではもう終わっているのかも。(すいません )
これから上映される地域の方は機会があったら、ぜひ劇場で。
ストーリーはごく単純なものだ。あらすじだけ書き出したら、なんだその話…と思ってしまうような物かも知れない。
けれども、それがこの映像と音楽に乗ると、こんなにも楽しくてスケールが大きくて生き生きとするのだから、インド映画って素晴らしい!
ファランとラージューとランチョーの3人は、インドのエリート育成工科大学ICEの同級生。寮で同室の3人は度々バカ騒ぎを起こして学長の目の敵にされるも、無事に卒業の日を迎えた。しかし、ファランとラージュに希望を与え続けてくれたランチョーは、卒業式の日から姿を消してしまう。
10年後、ある目的でランチョーを探している嫌味な同窓生チャトルに呼び出された2人は、ランチョーを探す旅に出る事になる。
ストーリーは行方不明のランチョーを探す旅と、ICE大学時代の回想で進む。
ミュージカルは嫌いなんだよ、などと言っている間もなく、歌の洪水に巻き込まれていつの間にか節をとっている自分…。
EDテーマにも(邦題にも)なっている『Aal Izz Well』の何故か妙に懐かしい曲調には楽しいのに泣けてきそうだった。心持って行かれる。
こんな事あるわけないだろう~! と思う出来事の連続だけれども、それが心地いい。
もっとも、楽しい事ばかりが描かれているわけではない。
この作品の根底にあるのは、この国独特のカースト制。
法律が変わっても根強く残る宗教上のカースト制ではなく、貧富の差による経済上のカースト。そして、学長が区分けしている学力上のスクールカーストである。
たびたび心折れそうになるファランとラージュをランチョーは励まし続ける。
右手で心臓の上を叩きながらいう魔法の言葉。
『Aal Izz Well』(アール・イーズ・ウェル)
私もこの映画を見た後から時々やってみている。
ちょっと「きっと、うまくいく」気持になれる。
元々はランチョーの家の夜回りがやっているおまじないのような物らしい。
どんなに弾圧された世界でも、自分自身のために自分のなりたいものに向かって頑張る心。
ほとんどの環境で「成りたいもの」になれるはずの自由な日本人には、少し理解し難い話になるかも知れないけれども、誰でもルールから抜け出して自分らしく生きたいと思う気持ちは持っているはず。
自分の成りたいものになれるかもしれない言葉と希望。
そんな物を見せてくれる本当に気持ちのいい1本。
「ALL izz WELL」
ここから下ネタバレ↓観てない方は観てから読んでね
ファランとラージューは、本当のランチョーを知らなかった。
ファランの暗い家庭状況やラージューのギチギチに親に決められた進路を「Aal Izz Well」で明るい方向に導いてきたランチョー。
一緒に撮ったはずの成績順並びの集合写真。ランチョーがいたはずの所に別の男が座っているところからミステリー。
本当は親がなく、主人に学業を買われて主人の息子の代わりに大学に在籍していたランチョー。
恵まれた学生なんかじゃなかった。
きっと、ランチョー自身が一番「Aal Izz Well」で自分を励まし続けて生きて来たに違いない。
そして、最後には自分が成りたい者になった。
入寮初日から、上下関係を押し付けようとする先輩を負かし、学長を何度もやりこめ、退学寸前なところを学長の娘を救って逃れる…。
そんなベタベタなストーリーが、ツッコミつつも不思議と気持ち良かった。
チャトルがやっと取り付けたという大事な取引相手が実はランチョーなんだろう…という予測まで全て覆される事なく、学長の娘まで手に入れて、青が美しすぎる海をバックに『Aal Izz Well』のエンドロール。
あまりにも幸せすぎて泣けた。
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