インポッシブル~ LO IMPOSIBLE ~
監督: J・A・バヨナ
出演: ナオミ・ワッツ、ユアン・マクレガー、トム・ホランド、ジェラルディン・チャップリン、サミュエル・ジョスリン、オークリー・ペンダーガスト
公開: 2013年6月14日
2013年6月14日。劇場観賞。
2004年に起きたスマトラ島沖地震は、その津波の大きさから大災害を引き起こし、インド洋沿岸を中心に226,566人以上の死者を出す大惨事となった。
この作品は、この津波災害をタイで受けたある家族を描いた実話ベースのストーリーである。
津波の映像は迫力があり、とてもリアルに描かれている。
だから、いうまでもなく、2011年に東北地方太平洋沖地震に遭遇した日本人にとっては嫌でもそれを思い起こさせられる。
この映画は誰にでもお薦めできる物ではないし、見たくない方は見ない方がいい。
そういう映画だ。
その事を踏まえて…それでもこの映画に興味があるから見に行くという方へ…。
まず、この作品の予告映像を1度も見ていないという方。
予告映像は一切見ないで映画館へ行ってください。
この作品の予告編は、ハッキリ言ってこの映画のほぼ全てを語っちゃっています。
作品を上手く縮小したらこうなりましたってくらい…。
なので、ここから下も読まずに、このまま映画館へGOして下さい。どうぞ!
…予告映像を見て涙したから見に行こうと思っている方は…。
本編でも間違いなく何度も泣くと思う。
決してそれが映画の素晴らしさを語るという事ではないけれども、「感動」という言葉が「感情が動く」という意味だと考えれば、この映画は間違いなく感動する映画だ。
普通は生涯で体験する事がないだろうほどの大きな恐怖に巻き込まれ、唯一頼りになるはずの家族と離れ離れになり、やっと出会うことができるのだ。泣くでしょう。
こんな体験をした事がない人間でも、登場人物の気持ちにはすんなり入りこめる。容易に想像がつく悲しさや恐怖や不安や喜びがきちんと臨場感を持って描かれているから。
映像の素晴らしさももちろんの事、俳優さんが素晴らしい。
母・マリアを演じたナオミ・ワッツの不安や感謝や痛みの表情は、見ているだけで苦しい。
離れ離れの長男と妻を探すユアン・マクレガーの必死な姿に心が痛む。
しかし、何と言ってもこの映画の主役は長男・ルーカスを演じたトム・ホランドくん。
この子が本当に素晴らしいのだ。まだ12歳なのに父不在の不安の中で精一杯母のマリアを救おうとする。
家族が出会えたのも全部この子のお手柄だし、他の被災者たちの役に立とうと走り回る姿に涙。自分だって不安でいっぱいなのにね。
先ほど予告が全てのような書き方をしてしまったけれども、実際にストーリーはあの予告映像がワイドになった感じ…。
個人的には、色々な意味で物足らなかった。おかげで、もの凄く見ている時間が短く感じられた。「え、ここから、もっと何かやるんだよね?」
と、ラストで感じてしまったほど。
この映画を見て何か得るとしたら、それは家族の有りがたさと大切さ。だと思う。
普段何気なく接している、時には邪魔にさえ感じる家族。
それが普通にいる事の有りがたさ。
だって、これは家族の物語以上の何物でもないから。
個人的には、何かあった時に状況判断できる子育ての大切さもしみじみと感じた。
恥ずかしながら、ウチの子らには、これは無理だ…と、ルーカスくんを見ていて何度も思った。
この両親が、子どもたちをいかに伸び伸びと、社会に適応できるように、そしてあきらめない精神を与えながら育ててきたのかという事が、この映画を見るだけで分かるのだ。
迫力のある映像と登場人物の必死な姿は劇場で見る価値があるものだと思う。
けれども「家族の物語」以上の物は期待しない方がいい。
インタビュー映像を見てビックリしたんだけど、ユアンは実生活で15年もパパをやっているのに父親役は初めてなんだって…。
そう言われてみれば、ないわ。
ユアンの優しいパパっぷりを見たいユアンファンは、もちろん必見。
ここから下ネタバレ↓観てない方は観てから読んでね
まず母親は長男と流されながら再会し、父親は木にしがみついた次男と三男を見つけて再会する…。
実話だと聞いてなければ「あり得ないだろう~!」と、言っちゃうところだ…。
もっとルーカスが人の役に立とうと翻弄する様やヘンリーの家族探しが描かれるのかと思っていたんだけど、案外アッサリ…。
最後には、もしかしたらルーカスかヘンリーが現地の人のために飛行機を下りるか…と思ったんだけど、それも無く…チクチクした気持ちを残しつつ、ジェットは現地を飛び立ってしまう。
本当に家族の話以上の物はないなぁ…と思った。
確かに、実話だ。そういう点ではとてもリアルだ。
結果、「もの凄く運のいい家族」の物語になったわけだけれども、ユアンがインタビューで「特別なことをした家族ではなく、ただ偶然そうなった家族を描く必要があった」と語っていたので、この感覚が当たりなんだろう。
この映画で伝えたいのは、本当に家族の大切さ…のみなのだ。
それは、充分伝わったかな、と思う。
この映画では、被災者のご遺体も現地の混乱もあまり描かれていない。
家族の物語なのだから、そこまでやる必要はないのだ、と見終わって納得した。
まだ…そういう所まで見たくない人は日本でももちろん、世界中にいるのだから。
ただ、あの家族は国に戻ってから世話になった現地の人たちや、まだ家族を探していた人たちのために何かしたんでしょうね…とは考えた。
うん…きっと何かしたに違いないと信じてる。
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