別離~ JODAEIYE NADER AZ SIMIN / جدایی نادر از سیمین ~
監督: アスガル・ファルハーディー
出演: レイラ・ハタミ、ペイマン・モアディ、シャハブ・ホセイニ、サレー・バヤト、サリナ・ファルハーディー、ババク・カリミ、アリ・アスガー=シャーバズィ、シリン・ヤズダンバクシュ、キミア・ホセイニ、メリッラ・ザレイ
公開: 2012年4月7日
2013年4月18日。DVD観賞。
秀逸だね。
と、見終わった後、すごい上から目線で思わずつぶやいてしまった…。
どういう結末になるのか、ちょっとドキドキしながら見てのあの余韻は何とも言えない。
「東京家族」ならぬ「イラン家族」。
異文化の国だけに、事件に対する対処が物珍しい。
けれども、そういう部分以外、事件については日本でも充分起こり得る事であり、日本で起きた事件の裁判でちゃんとした弁護士が双方についたら、弁護士の腕次第でどうにでも転びそう。
イラン・テヘランに住むシミンとナデル夫妻は離婚調停を申し出ている。
2人の間には11歳の1人娘・テルメーがおり、親権問題で揉めている最中だった。
方がつかないまま荷物をまとめてシミンは実家に帰り、アルツハイマーの父を抱えたナデルは世話に困って家政婦を雇う。
この家政婦を家に入れた事から事件は起こる。
自分の望みどおりの家庭が欲しかった妻、父の介護で頭がいっぱいの夫、両親の離婚を望まない娘。どの国でもありそうな家庭だ。
老人介護は日本だけの問題ではない。そして、イラクでは介護施設が少ないらしい。それでも、雇われた家政婦・ラジエーは雇い主の世話を真面目にしようとしてくれていた。
夫婦の形や宗教上の思想は物珍しかった。
子どもを思う親の気持ちや親に別れてほしくない子供の気持ちは日本人でも充分理解出来る物。
時間経過の繋ぎが少しおかしくて、いつの間に日が変わったのか何日経ったのかなど疑問に思うシーンがしばしばあった。
それでも、この作品がベルリン国際映画祭のコンペティション部門で金熊賞を受賞した事、第84回アカデミー賞で外国語映画賞を受賞した事は充分に納得できる。
真実を隠す事、隠し通せなかった事、疑惑で凝り固まると悪意しか見えなくなってしまう事…。
人間の滑稽で情けない部分は、人間であればどんな国に住んでいようが同じだから。
ここから下ネタバレ↓観てない方は観てから読んでね
「離婚の理由は夫が一緒に海外移住しないと言い出したから」
という部分がよく解らなかった。
シミンはテルメーの教育のためだと言っていたが、この国の教育がどう悪いのかその説明は一切ない。
しかも、ナデルも一度はその案に賛成したらしい。しかし結局は父を置いて行けないと言い出し、そこから離婚問題に発展したのだとか…。
シミンが主張する離婚の理由がサッパリ解らないまま物語は最後まで進む。
自分が出て行ったら義父の介護に困るだろうことは解っているのに出ていくというのも酷い話。何の説明もなかったけれども、結局はシミンは介護生活に疲れていたのかなぁ…と想像する。
どんどんアルツハイマーが進行してゆく義父、ちょっと偏屈な夫。
国を出ていけば何か変わるかもしれないと夢見て、出ていく理由を娘にこじつけたのかも。
自分が出て行けば夫は困るに違いない。そして離婚を考え直すだろう。そんな計算も見えた。荷物は車に積んだままだった。それはテルメーが見ている。
ラジエーの嘘は日本人の私でも想像できる。
着替えさせたり風呂に入れたりという男性の裸に触れる事が宗教上の禁じ事である国。そんな仕事をしている事を夫に知られるわけにはいかないから黙っていた。それでも金は必要だ。
介護していた事を知られないためには流産の原因をナデルに押し付けるしかなかった。
19週目の胎児を殺した人間は殺人罪に問われるイランという国。
殺人罪で訴えられて、暴行傷害罪で訴え返す。もう泥沼。
貴方のせいよ。
とシミンは言い、
僕の?
とナデルに聞き返されて答えに詰まる。
ナデルが、ラジエーが金を盗んだと疑い突き飛ばした事が事件の発端。
しかし、全ての発端はシミンが家を出て行った事。
(あれっ、そういえばお金の事もどうなったの?結局、盗ったの?盗ってないの? )
誰が悪いのかと言えば…どっちもどっちなのだ。
ナデルの父を助けるために車にはねられた事が流産の原因だったのに、それを言えなかったラジエーが哀れだ。
あの真実は後々ナデルに伝わったのだろうか。
ナデルはその事実を知ったら、裁判の和解金などではなく礼金をラジエーに払うべきだと思うよ。
そして、もう1人、あまりにも可哀想なのが親に翻弄されて嘘までつかなくてはならなくなった11歳の少女。
自分に嘘をつき、自分に嘘をつかせた父親を選ぶのか。
駆け引きのために家を出て行った母親を選ぶのか。
家庭裁判所の廊下で、それぞれ離れたソファに座り、結果を待つナデルとシミン。
もやもやした余韻が残るラストシーンが印象的。
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TB:「映画@見取り八段 トラックバックセンター」http://todays-cinema.seesaa.net
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