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『希望の国』放射能と楽しく暮らせって

希望の国

  

監督: 園子温   
出演: 夏八木勲、大谷直子、村上淳、神楽坂恵、でんでん、筒井真理子、清水優、梶原ひかり、菅原大吉、山中崇、河原崎建三、浜田晃、大鶴義丹、松尾諭、吉田祐健、並樹史朗、米村亮太朗、吹越満、伊勢谷友介、手塚とおる、田中壮太郎、本城丸裕、深水元基、大森博史、占部房子、井上肇、堀部圭亮、田中哲司
公開: 2012年10月20日

2013年3月28日。DVD観賞。

園子温色の少ない映画だと思った。
エログロはない…代わりに痛烈な皮肉を見た気がする。

ラストに出てくるタイトルバック。
一歩一歩一歩一歩……。
結局、「続き…」なんでしょう「希望の国」は。

東日本大震災の話なのかと思っていたけどそうではなく…。
ストーリーは、その何年後かの日本らしかった。

「フクシマの時には…」と何度も出て来るので、『フクシマの時』を経ても日本は何も変わっていないらしい。

事故が起きる「長島原発」の名は見ればそのまま長崎と広島を思わせる。

フィクションであるから、福島の時にはどうだったのかは分からない。
起きる事全てに対してイライラしながら見た。
なんて国だ。この映画の中の国は…。

災害対策基本法を盾にして、ろくな情報も与えずに住民を追い出す国。
  

    f:id:nakakuko:20150410022908p:plain

日本人が日本を歩いてどうして日本に怒られるんだ!

と、叫ぶ智恵子。

意味の解らない風評被害。
正しく伝えられない被爆情報。
放射能が溢れていると知っていても住み続ける人たち。
みんな、そこに放射能がある事に慣れていく。

つい最近までマスクしていた人たち。
野菜の産地を確かめていた人たち。
洗濯ものを部屋干ししていた人たち。

みんな、周りがやらなくなると自分も止めてしまう。

そうやってみんな、忘れていくんだ。
だって「帰る場所なんてどこにもない」から。

放射能と楽しく暮らせっていうんですか!?

洋一の言葉に医師も看護師も無言になる。みんなもう現実にそうなってしまっているから。

この状況から
一歩一歩一歩……。
歩き出すミツルとヨーコ。

彼らの向かう先に希望の国はあるんだろうか。

雪に埋まった震災後の長島県の風景。
ここに住める人は誰もいない。寂しい。
  

  f:id:nakakuko:20150410022936p:plain

悲しい寂しい、どろっとした映画。

反原発の目線がどうとかそういう事ではなく、ただこの寂しいやるせなさが心に残るやり切れない映画。

周りに理解されなくても夫婦の、家族の愛を貫く。
痴呆の妻と、思い出が詰まったその場所を愛し続ける夫を演じた夏八木勲さん。落ち着いた佇まいの中に見える情熱に泣いた。

そこに、確かに愛だけはあった。

でも、愛だけでこの国が救われるかどうかは解らない。

私には難しい事は何も言えない。
でも、愛だけで救われるとは思えない…。

風化させてしまったら、同じことは何度でも起こる。
そういう叫びが聞こえた気がした。

※EDでキャスト見てビックリした。伊勢谷さんとか田中哲司さんとか出てるの全く気付かなかったよ。吹越満さんだって、暗くてほとんど姿が見えないのを声で気付いたくらいだし~…。 ってくらい贅沢に役者さんが使われていたのでした。

 

ここから下ネタバレ観てない方は観てから読んでね 

    


20キロ以内の区域は避難しろと突然庭に杭を打たれる小野家。

放射能は空気でしょう?
向かいは避難するのにウチは本当に大丈夫なんですか?

もっともな疑問だ。
なのに、誰も答えてくれない。
本当の事を誰も知らないのだ。

ずっと暮らしていた家を土地を仕事を突然奪われて、上から目線で「法律」をひけらかされて、安心かどうかも解らない避難所に押し込められて…。

お父さん、帰ろうよ。

痴呆の口癖である智恵子の言葉を聞きながら、泰彦は帰る場所なんかないと思った。
あんなに家族を大事に思って来た泰彦なのだから、息子と嫁と生きる道を選んでほしかった。
家族がいる場所が帰る場所なのだと思ってほしかった。

でも、この悲壮感も現実なのかも知れない。
見えない戦争に彼らは巻き込まれたのだから。

子どもが出来たいずみの防護服は確かに滑稽だよ。
そんな事するくらいなら、もっと遠くに移ればいいじゃないかと思ったよ。
でもね…

ものすごく遠くへ行かない限り、逃げたって意味なんかないんですよ。

ものすごく遠くって何処だろう。
逃げて意味がある所って何処だろう。

ここから移動しても、そこにもあるかも知れない。
海外に移ってもあるかも知れない。
放射能じゃない「何か」もあるかも知れない。絶対安全な場所なんて何処にもない。

人生の中で杭は何度も打たれる。
それをどうするかは自分自身の力で決めるしかない。

若い夫婦は、ここで戦いながら生きていく。
年よりは骨をうずめる。

その結末が悲しい。

そして最後の最後に出てくるタイトルバック。
だから、思ったんだ。「希望の国」は、これから始まるんだと…。

いや、始められるのかな。
風化させたら何も始まらない。

・「希望の国」公式サイト

 

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★前田有一の超映画批評★

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奈可久う子(くう)

◆ドラマ・映画 エンタメ系ライター&ブロガー。◆ハウツーサイトやリクルート・キュレーションサイトなどで映画紹介のライターしておりました。(お仕事はいつでも有り難くお受けします)

◆映画の評点はあくまでも私感です。(平均が2.5で1と5は滅多に付けていません)

◆戦争とホロコーストテーマの作品観賞がライフワーク。

◆レビューは上半部はネタバレなし感想、下部は観了した方と感想を共有できるように書いています。(古い記事は簡単感想です。時間のある時にリライトしています)

◆姉妹ブログ「ドラマ@見とり八段」

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