ローマ法王の休日~ HABEMUS PAPAM ~
監督: ナンニ・モレッティ
出演: ナンニ・モレッティ、ミシェル・ピッコリ、イエルジー・スチュエル、レナート・スカルパ、マルゲリータ・ブイ
公開: 2012年7月21日
2013年2月26日。DVD観賞。
え~…フィクションです。
邦題は「ローマの休日」のパクリかよって感じだったし、DVDに入っていた予告も思い切りコメディだったので…こんな話だとは思わなかった。これはヤラレた感でいっぱい…。
…ということで、笑えるコメディ映画として大きな期待はしない方がいいです。
どちらかというと、結構痛々しい人間ドラマ。
と言っても、全く笑えないという事ではなく、特に前半はクスクスします。
とにかく…おじいちゃんたちが可愛くて。
前法皇が逝去された事により、バチカンではコンクラーヴェ(法皇選挙)が行われます。
選挙を行う礼拝堂に移動する間に歌う「ヴェニ・クレアトール」をすでに間違えたり…おじいちゃん、大丈夫?という不安がすでにここで勃発。
礼拝堂に入ってからの様子もなかなかユーモラス。
このまま進めばコメディなんだろうな、と思えるんだけど。
しかし、映画としてつまらないのか、と言われれば、そういうワケではない。
日本人にはあまり馴染みのないバチカンの背景は観光客気分で楽しめる。
108人の枢機卿が集まって行うコンクラーヴェの様子やイタリアに集う人々がどんなに法皇を愛しているか、そして、コンクラーヴェに寄せるマスコミの関心も並みならぬ様子がうかがえる描写。
白い礼拝堂に映える枢機卿たちの赤い礼服。
映像の色合いも美しい。
個人的には先ほども書いたけれども、おじいちゃんたち(失礼)の可愛さにニヤニヤしながら見た。
それだけに、ラストは…うん…仕方ないけれども、可愛そうだなぁ…と思ってしまった。
ゲラゲラ笑えるコメディや、「英国王のスピーチ」のような盛り上がる展開を期待する方にはお薦めできません。
え~何でこんな事になっちゃうんだ…と、おじいちゃんたちと一緒にオタオタしながら見る映画。
折しも、この2013年2月末日にローマ法王ベネディクト16世が退位され、コンクラーヴェが行われる事になっているバチカン…。
退位のご挨拶の際には世界中から20万人の信者(だけじゃないかも知れないけど)が集まる事が想定されているらしい。
基本的には法皇は終身のお勤めであり、ご存命中に退位されるのは実に600年ぶりなのだとか。
法皇は、どうして退位を決断されたのだろう。
もしかしたら、この映画のように…とか、想像してしまう。
ここから下ネタバレ↓観てない方は観てから読んでね
わが日々は煙へと消えゆきわが骨は炭火のごとく燃える
わが心は芝のごとく刈り取られ干からびる
私はパンを食べることさえ忘れ恐れと慄きが私を蝕み
落胆が私を苛む
聖書には、うつ病の描写がある。と言い始めるセラピスト。
彼は、一体何をしに来たんだろう。
わたしには無理だ!
と、逃げ出した新法皇が安定して民に挨拶するまで、外部との連絡も遮断され携帯も取り上げられて閉じこめられ…。
結局、最後には姿もなく、どうなっちゃったのかも分からない。
彼の元妻らしい女性セラピストも、ただ出てきて、ちょっと関わって終わりだ。
劇団員たち。そして、法皇を待ち続ける枢機卿たちも。
主人公と関わった多くの人たちが、彼に何の影響も与えず話は結末を迎える。
つまり…成長物語のような物でもなく、ただ、突然の重責を受け入れられずに最後まで逃げて終わる1人の老人が描かれるだけ。
法皇も1人のただの人間だという事は、よく解る。
つまり…神などいないという事なのかしら。
そんなにやりたくなきゃ、最初に断固断ればいいじゃん。というのが普通の考えだけど、学級委員選挙ではないんだ。投票=神のご意志なのだろうから、神にずっと仕えてきた身としては、断るなんて事は出来ないんでしょうね。
コンクラーヴェって、自分が法皇になりたいがために、必死に裏工作したり派閥作ったりして、ドロドロと行われるのかとばかり思っていたら、みんな「主よ、どうかわたしを選ばないでください」「私には無理です」とか必死に祈ってるのに笑った。 まさに神頼み。
私は、導くのではなく導かれるべき1人の人間です。
ラストは、悲しみに沈むバチカン……のような形で終わってしまって…。
この後、一体どうなるんだろう。この人たち。と、心配してしまった。
本当に…こういう場合はどうなるのですか?神よ。
・「ローマ法王の休日」公式サイト
・ローマ法王の休日@ぴあ映画生活トラックバック
・象のロケット
comment