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『先生を流産させる会』なんか、キモいよね…

先生を流産させる会

   

監督: 内藤瑛亮   
出演: 宮田亜紀、小林香織、高良弥夢、竹森菜々瀬、相場涼乃、室賀砂和希、大沼百合子
公開: 2012年5月26日

2012年12月27日。DVD観賞。

何とも気持ちの悪い映画だった…。
後味の悪い映画は年間に何本も見るし、後味が悪いなりに考えさせられたり切ない余韻が残ったりするものだが、これはもうただひたすら気持ち悪かった。

もっとも実際の事件も気持ち悪いのだから、そうなっても仕方ないわけなんだけど。

2009年に愛知県の中学校で、生徒が女性教師の給食に異物を混入して食べさせる事件が起きた。目的は「先生を流産させるため」。

本作は、この事件をモチーフに描いたフィクションであり、実際の事件を正確になぞった物ではないらしい。(実際の事件を起こしたのは男子生徒)。

劇中で事件を起こす女生徒たちは、まだ顔つきがあどけない。小学生にも見える「子ども」だ。
しかし精神的にも身体的にも大人への過渡期でもある。ゆえに「妊娠=セ●クス」が「キモい」。事件の動機は「キモいから」そこには胎内の「命」に対する思いやりは何もない。

首謀者の学生・ミヅキは家庭的にも問題を抱えているらしい。母親は家にいないらしく、連絡もつかない状態。母親に対する歪んだ感情が先生のお腹の子どもに嫌悪感を抱かせる。これは理解はできる。

赤ちゃんが殺されたらどうするんだ。

という先生の質問に生徒たちは「訴える」と答える。
ミヅキの答えは「なかったことにする」

そして先生はいうのである。「殺すよ」

キモいから先生を流産させようとするミヅキと、お腹の子どもを守りたいサワコ先生と、そしてミヅキに引きずられているクラスの女子の母親。
これが中心となって命の問題と現代の学校の問題が語られる……。のだが……

このサワコ先生がとにかく気持ちが悪い。

って言ったら「え?」と思われるんだろうけど、だって何を考えているのかサッパリ解らないのである。

いうことも行いも確かに教師として立派だ。
クライマックスの行動もラストの言動も生徒を導こうとする1人の教師として立派過ぎるほど立派だ。

でも、そこに「母」の姿が見えないのである。赤ちゃんを殺されたら「殺す」と言っていたのに、そんなに執着しているように見えないのである。
これが演技のせいなのか演出のせいなのか、先生の心中は脳内で補填してくださいね、という事なのか…恐らく補填しろって事なんだろうけど。
それにしても、先生の表情や演出に赤ちゃんに対する哀れみが見えない。
ミヅキに対する哀れみ…ばかり感じられるのだ。

この映画を観て、個人的には「結局、この世に生まれ出ていないものはいないものなのだな…」という風に見えてしまった。

一応、妊娠経験のある者として、子育てした経験がある者として、そしてかつて女子中学生だった者として観賞して…違和感と気持ち悪さでいっぱい。

エンドロールが始まってからも、しばらく固まった。
あまりにも気持ち悪くて動けなかったのである。

別にドキュメンタリーを作れというわけではなく、ただの個人的な興味として、私は実際の事件通り男子生徒でこの話を見てみたい。
男子生徒が妊娠した教師をどう気持ち悪く感じたからこんな事件を起こしたのか。
だって「ただのいたずら」でも命がある事を理解していれば出来ないはずだし、そこには屈折した「何か」があったはずなのだ。

それが解らなければ、この事件を解いた事にはならないし、今後の教育に何の教訓も得られないと思うから。

 

ここから下ネタバレ観てない方は観てから読んでね 

    


私的には、「モンペ」と言われる女子の母親の気持ちの方が理解出来ちゃったのである。
もちろん、学校にしじゅう電話して来たり、ワケの解らないクレームの事は別ですよ。 ああいうのを見るたびに先生ってホント大変だと思う。

ただ、子どもが学校で先生に殴られた。「私は何もやってない。先生が妊娠して神経質になっておかしくなって殴った」と子どもに言われたら、私だって子どもを信じるよ。
「そんな気がおかしい先生は担任から下ろしてくれないと子供が危険だから登校させたくありません!」というと思う。

見る者は子どものやっている事を見ているからこの親を「モンスター」だと思うワケだけど、事実が解らなくて証拠も不確かならば、親としては子どもの方を信じてあげるものでしょう。

自分の子どもに何か 変な事をやらせているだろう友達が訪ねてきたら、私だってヒステリックに追い返すかもしれない。

そこも「子どもを守る」という親の覚悟だと思う。

私は教師である前に女よ。あんたも女。女は気持ち悪いものなの!

確かにそうなのだ…。

この世に生まれ出てきていない命は命だと思えない女子、何も疑わず我が子を信じ庇い続け先生をののしる母親、子どもを顧みず何処かに消えちゃっている母親、そして、お腹の子どもを失った絶望感よりも生徒が大切な女教師。

みんなみんな気持ち悪い。この映画は気持ち悪い女たちの物語

残念だけど、命の大切さを訴えるとか、そんなものはここからは感じ取れなかった。

それとも…墓穴を掘らせたことで、サワコ先生はミヅキの心を殺しただろうか。
もし、そこまで描いていたら命の問題も描いているという事になると思うけど。

無かった事になんかできないの。

この子にそれが理解できていればいいけれども。
そんな風には見えなかったな…。

本当に、女ってコワイ。子供ってコワイ。

「先生を流産させる会」公式サイト

 


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・象のロケット

★前田有一の超映画批評★

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