キツツキと雨
作品情報
監督・キャスト
監督: 沖田修一
出演: 役所広司、小栗旬、高良健吾、臼田あさ美、伊武雅刀、山崎努、古館寛治、嶋田久作、平田満、黒田大輔、森下能幸、高橋努、神戸浩、りりィ
日本公開日
公開: 2012年2月11日
受賞
第24回東京国際映画祭 審査員特別賞
第8回ドバイ国際映画祭 最優秀脚本賞・最優秀男優賞受賞
レビュー
☆☆☆☆
2012年2月22日。劇場観賞。
見ていて、嫌だな~と思う事が何もなくて、笑顔で劇場を出られる作品。
こういう映画に出会えた時、本当に幸せな気持ちになる。
あらすじ
とあるのどかな山村に、ある日突然、ゾンビ映画の撮影隊がやってくる。ひょんなことから撮影を手伝うことになった60歳の木こりの克彦と、その気弱さゆえにスタッフをまとめられず狼狽する25歳の新人監督・幸一は、互いに影響を与えあい、次第に変化をもたらしていく。(映画.comより引用)
星野源ちゃんの主題歌まで優しい
もちろん、起伏が激しくて色々な物と闘って悶々とした余韻を残す映画も好きだけれど、何となく心が弱っている時にはこういう本当に優しい映画を見るのが良い。
テーマ曲の星野源ちゃんの歌もピッタリと作品にハマって、泣くような事は何もないのにジンワリしてしまう映画だった。
山奥の村でキコリ…つまり林業を営む主人公は毎日代わり映えのしない生活を送っている。
妻には先立たれ、1人息子は定職にも就かずにダラダラしていて覇気がなく、何を考えているか解らない。
そんな主人公に予想もしなかった「変化」が訪れる。
ああ~何となく解るなぁ…と思う事ばかり。
毎日毎日同じ生活を送っている中に、今まで出会った事もなかった面白い事が現れたら誰だって夢中になる。
そして、出会った1人の覇気のない若者…を叱咤激励していく中で、自分の息子には素直に現せなかった言葉や感情が主人公の中に生まれていく。
役所広司さんは、ピシッとスーツを着たエリートサラリーマンから軍人から武士まで何でも出来る人だけれども、こんな「普通のおじさん」までハマるんだなぁ…。
どこから見ても、不器用で愛しい可愛い山のキコリ。
そして、この映画の小栗旬くんが他のどんな役をやっている小栗くんよりも好き!
人と上手く接する事が出来ない、自分の意志をハッキリ伝えられない。とても繊細な「近頃の若者」。
ちょいちょい出て来る豪華キャスト
前情報ほとんどなく見に行ったので、キャストの皆さんが出てくる度に「おおー」っと思った。
グダグダした息子役の高良健吾くん、ユニークなキコリの同僚、伊武雅刀さん、無茶振り多い俳優役の俳優、臼田あさ美ちゃんと平田満さん。大物俳優、山崎努さん。
どの役もみんなこの映画の一部で、愛しいキャラクターになっていた。
自分の意志を明確に伝えられないシャイな青年と、本当は自分の子どもにしてやりたいんだろう事を一生懸命世話しちゃうおじさんと。お互いが出会う事でお互いが色々な事に気づき変わっていく。
映画好きの心くすぐる映画製作の場
「なぜ映画を作るのか」という映画の原点に帰る話も…映画好きの心をくすぐる所。
「雨でもきっと晴れるさ」
は、良い言葉だ。
沖田修一監督作品は「南極料理人」も大好きだけど、これもまた大好きな作品になった。
忙しい時や心が荒んだ時にお薦めしたい、ちょっと笑える爽やかな1本。
以下ネタバレ感想
父が買ったビデオカメラが切っ掛けで映画を撮り始めたと語る幸一。
そのせいで旅館を継がず、父はきっと後悔しているだろう、と。
後悔なんかしてないよ。
自分のカメラが息子の人生を変えたんだもの。嬉しくてしょうがないだろう。
こういう事、本当は自分の息子と語りたいんだろうに、息子には言えないんだよね。不器用で頑固な父。
村で出会った若い新人監督は、息子と同じ年。
映画にまで口出ししたりしてね、息子の世話を焼けない分、幸一に入れ込んでしまう克彦さんがカワイイ。
最初は、この映画スタッフの身勝手さに腹が立っていたんだけれど…巻き込まれて次第に夢中になっていく生き生きした克彦さんを見ていたら、こっちも笑うしかない。
何も変化のない山の生活から突如、映画制作の一端を担う人になっちゃう克彦さん。
ゾンビは可笑しかったわ……。
というか…あの映画は一体~…
あれは私はきっと見に行かないと思うぞ…。
克彦さんのおかげで監督は監督らしさを覚え、少しずつやるべき事をやり始める。
全部終わった後は…祭りの後のようだったろうね。
ラスト、山とは全く無縁の海辺の風景で、克彦さんからプレゼントされた「監督椅子」を使う幸一。
繋がっているんだな…と思った。
お互い別々の所にいても。
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