紀子の食卓
監督: 園子温
出演: 吹石一恵、光石研、つぐみ、吉高由里子、三津谷葉子、手塚とおる、並木史朗、宮田早苗、藤間宇宙、安藤玉恵、古屋兎丸
公開: 2006年9月
DVDにて視聴。
これは痛い映画だ……
私は何もやらないグータラ女だが、一応一家の主婦だ。つまり「家族」を作る人間だ。
我が家の構成は性別は違うけれども「紀子」の家と同じ。子供たちがこんな風に考えながら「家族」として存在しているとしたら、ちょっとゾッとするよね。
しかし、自分を「娘」として考えた場合、確かにずっとずっと早く家を出たいと思いながら生きていたので、紀子の気持ちもよく解る。
私には何も持たずに家を出ていく勇気が無かっただけ。家から自分を連れ出してくれるだけの情熱を起こす「何か」もなかっただけ。もし「上野駅54さん」と出会っていたら、私も出て行っていたかもしれない。
「家族」って何だろう?と考えさせられる。
誰だって、例えば家族と上手くやるために、ダンナの実家の親と上手くやるために、いや、自分の親を喜ばせるために…演じている部分はあると思うのだ。
ずっと演じている事が親孝行なら、それもそれで仕方ない。
「私は私を生きていない」
そう思うのは、紀子だけではないだろう。
親だって、子供と、特に年頃の子供と上手くやるためには色々と演じている。
こうも面倒くさい人間関係。
それは、基本、家族から生じているんだ。人間は人間として生まれ、人と関わって生きていく以上、いつもむき出しのままではいられない。
逃げたら社会から放り出される。
こんな不安の中で、どうしようもない悲しみを時間制限つきの笑顔で隠し続ける。
「廃墟ドットコム」に足を踏み入れたら出られない人が多いのは理解できる気がする。
「自殺サークル」のレビューを読んで、「続きなので、ぜひ『紀子の食卓』も見て」と言って下さる方が多かったので見てみた。(ありがとうございました)
「自殺サークル」では見えなかった物がたくさん見える作品だった。
前情報は何もなかったので、学生服姿でほぼノーメイクの吉高由里子ちゃんの出演には驚いた。これが映画デビューとは信じられない、すごい演技。そして、透明感。これは…売れるわけだよね…改めてファンになった。
しかし、いつもの事ながら、鮮血すごい
そら、R-15が当然だよなーと思うよ。
これを見た後で、夕食の支度していてニンジンサラダのために千切りしていたら、小指をザックリ切ってしまい…
かなり切ったので、どくどく血が出たんだけど、まな板の上のニンジンがどんどんニンジンよりも赤く染まっていくのを見て「自殺サークル」の大根切り主婦を思い出し、ヘラヘラ笑ってしまった
笑っている自分に気づいて、ちょっと怖くなってまた笑った。
子供は、見ちゃいかん…。
コインロッカーベイビーの「上野駅54さん」クミコ。
過去をねつ造して新しい自分に生まれ変わる。
というけれども、結局その新しい自分も「ねつ造」した自分に変わりない。
結局、人には誰も「自分」なんてものは無いのかもしれない。
だったら
「レンタル家族」もアリなのかも知れない…と、思ってしまった。時間制限つきで、しがらみがない。本物の家族よりも優しい。思い通りになる。
そして、感情が無い…から、自ら死ぬ事もない。
自殺クラブなんて存在しません。
この世界の方がずっと自殺クラブですよ。
私たちのサークルよりも自殺者が多いわけですから。
自殺は私たちのごく一部です。
自殺の役割を担った者以外、誰も自殺したりしません。
いいですか?
ジャングルでライオンがシマウマを食べたのを目撃したからと言って、共食いクラブなんて言いません。
ライオンはシマウマを食い、シマウマは、草を食う。
サークル、「輪」……ですよ。
この悪夢のような世界は実は現実で、そして、現実の社会よりもずっと平和で、家族なんて実は虚構で…
ウチの家族もすでに、レンタル家族のメンバーなのかも知れない。
虚しかった。
作品としては、ちょっと丈長だったので、時々ウトウトしていたかも知れない。けれども、セリフだけは不思議と耳の中にたくさん入ってくる。
この映画自体が悪夢だったのだと思いたい。
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