白いリボン
~ DAS WEISSE BAND ~
監督: ミヒャエル・ハネケ
出演: ウルリッヒ・トゥクール、ブルクハルト・クラウスナー、ヨーゼフ・ビアビヒラー、ライナー・ボック、スザンヌ・ロタール、ブランコ・ザマロフスキー
公開: 2010年12月
2009年カンヌ国際映画祭パルムドール受賞作
DVD鑑賞。
舞台は第一次世界大戦前のドイツ。
その村には3人の権力者がいた。
村の雇用のほとんどを支配する男爵。
宗教を支配する厳格な牧師。
体を支配するドクター。
物語は、ドクターが落馬事故で入院するところから始まる。木に針金が仕掛けられていた事で起きたもので、つまり、「事故」ではなく「事件」なのである。
その後、男爵の荘園で小作人の妻が事故死、男爵の子供が何者かに暴力を振るわれる事件、放火、ドクターの隣家に住む助産婦の知恵遅れの子供が襲われる事件…
事件は、少しずつ間をおいて起き、犯人は解らない。
どの家にも子供がおり、右往左往する大人たちの様子を心配そうに眺めている。
子供の躾に厳しい…厳しすぎる厳格な村。厳しいのは時代のせいかと思ったけれども、どうもそれだけではなさそうだ。
歪んだ世界が歪んだ人間を作り上げていくという物語。
はっきり言って…見終わったあとは、激しくウツである…。
曖昧なラストには、一体何が起きたのかボンヤリと想像ができ、作品中では一切描写されない犯行の様子を思うと、胸が痛むよりゾッとする。
閉塞感が悲劇を作り出すのだ。
時代のせいばかりではなく、現代でも、都会でも、あちこちで起きているような事である。
先にも書いたが、ラストは曖昧にぼかされる。嫌な余韻が残る作品。
ハンパな気持ちで軽く見られる映画ではない。
ここから下ネタバレ↓観てない方は観てから読んでね
「白いリボン」とは、牧師が子供が小さい頃に「純潔さを忘れないために腕に巻いたリボン」の事。牧師は、すでに成長した子供たちに再び「白いリボン」を巻く。
可愛かった幼児のころに戻ってほしいという気持ち…そこに愛がないわけではない…と思う。
結局は、権力に押しつぶされて鬱屈した大人の世界が子供たちにも反映されているわけで、まさに子供は親の背中を見て育っているのである。
しかし、大人たちは、それに気づかない。
ムチで打ち、白いリボンで拘束し、人前で怒鳴ったり立たせたりする。
それどころか、自分の娘にいたずらまでしているのだから、始末に負えない。
男爵の妻は、村を出ていくという。
「この村には、嫉妬、悪意、暴力、恨み、嘘、などが渦巻いている。」と、いう。
その元を作っているのが、あんたのダンナなんだから、あんたもシッカリしてくれよ…
と、思うのだが、この女は自分の事しか考えられない。つまり、チャッカリこの村の大人の1人なのである。
しかし、大人の犠牲者というには、「犯人たち」のやる事はまた酷い。
弱い者を虐め、暴力をふるい、悪事を隠す、という、もう同情できない陰湿さ。
これが成長して大人になり、また同じことを繰り返す…どこかで断ち切らなければ村は永遠に変わらない。
「白いリボン」は、戒めの象徴として描かれているが、これは愛情の象徴とする事も出来るはずの物だ。
親は、いつまでも、子供に「純粋無垢」を求める。
それは、決して拘束の気持ちのみから発する物ではなく、愛情の気持ちもあるはずだからである。
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