源氏物語 千年の謎
原題 : ~ 源氏物語 千年の謎 ~
作品情報
監督・キャスト
監督: 鶴橋康夫
キャスト: 生田斗真、中谷美紀、東山紀之、真木よう子、田中麗奈、窪塚洋介、多部未華子、芦名星、蓮佛美沙子、榎木孝明、甲本雅裕、東儀秀樹、佐藤祐基
日本公開日
公開: 2011年12月10日
レビュー
☆☆☆
劇場観賞: 2011年11月30日(試写会)
劇場予告を観た時から、斗真の美しい源氏にウキウキし、楽しみにしていた当作品・・・。
有楽町朝日ホールにて試写会鑑賞。
あらすじ
平安時代。藤原道長はその栄華をさらに永遠のものとするため、娘・彰子に帝の血を引く子を宿すべく、一人の女性に命を下した。「捕らえるのだ、帝のお心を。そなたの書く物語の力で、わが娘、彰子の元に一時でも長く帝を留め置くのだ。それが出来るのはそなたしかおらぬ!」道長への思いを深く心に秘めながら式部の紡ぎはじめた物語……(Amazon Prime Videoより引用)
「源氏物語」の予習は必要?
まず・・・
映画に予習は要らないと常々言いつつも・・・
この映画に関しては、「源氏物語」をある程度でも知っておく必要がありそうだ。
「観に来る人は「源氏物語」を知っている」という前提の上で作られているとしか思えません。
その他、この時代における男女関係のあれこれ……も、知っておいた方が良い。
この時代において、位の高い方の夜這いは犯罪じゃないんで、そこんとこよろしく…。
時代観への理解
あとは、藤原道長という人がどういう人かも解っておいた方が良い。
そうしないと、「何、誰、この唐突な展開・・・」と驚くことになるシーンあり。(知ってても唐突過ぎてビックリしたけどな )
あとは、この時代の風習とか。道長と紫式部と「源氏物語」の関係とか。
亡霊や鬼が出てきたとしても「なにこれ!」と思わない心構えが必要である。
だって、この時代には鬼は本当に日本にいたのである。
多くの書物がそう書いているのだから、仕方が…間違いない。
病気なども「もののけ」の仕業なこの時代。
治癒を願うには医師よりも「ご祈祷」の時代なのだ。(だから死亡率もハンパなかったわけである。)
鬼が人を襲い、呪いと占いが横行し、もののけが歩き回る・・・
平安時代とは、何ともファンタジックな時代。
それを理解した上で観た方が、現実主義頭で観るよりも数段面白い。
主役は光る君・斗真じゃなかったんだよ
ストーリーは、紫式部が「源氏物語」を書いている現実世界と、「物語」の中を行ったり来たりする。
私は生田斗真が主役なのだとばかり思っていたけれども、これの主役はどう見ても中谷美紀演じる式部と、藤原道長、すなわち東山紀之だった。
「源氏物語」に関する簡単歴史解説(必要ない方は読み飛ばしましょう)
「源氏物語」は、藤原道長が紫式部に書かせた(他説もある)平安ラブロマンス小説である。
では、どうして、そんな物を書かせたか?
時の権力者であった道長は、妻・倫子との間に生まれた長女の彰子を一条天皇の元へ入内させた。
入内させるというのは、簡単に言えば嫁に入れる事だが、実際にはそんな簡単な事ではない。
何せ、帝のもとには、他にもウヨウヨ御后が入内しているのである。つまりライバルがいっぱい。
この時代、娘を入内させて何が欲しいって、男児の誕生です。
自分の娘が産んだ親王が次の天皇位に就けば、道長は天皇のお祖父ちゃんである。
つまり欲しいのは「最高権力者の地位」これである。
しかし、肝心の娘に帝が振り返らず、局に通ってくれなければどうにもならない。
そこで、当時の女御たちの後ろ盾は、色々と知恵を絞った。
つまり、娘たちは美しいだけではダメだったのである。学をつけたり、会話で楽しませたり、笛で惹きつけたり…大変な努力が必要だったのだ。
当時は、当然ゲームもなければテレビもパソコンもない。娯楽といったら、音楽に浸ったり踊りを見たり…そして物語を読んだり。
そこで、道長は、文才に溢れているという式部をスカウトした。
帝が少しでもいっぱい、少しでも長く娘・彰子の局に留まってくれるように…足しげく通って、娘を身籠らせてくれるように・・・
道長の狙いは当たり、式部が書いた「源氏物語」は、朝廷内で大ベストセラーに。
皆が「早く続きを読みたい、続きを読みたい」と彰子の元を訪れる。
当然、帝も続きが知りたくて彰子の元を訪れる・・・
「源氏物語」は、こんな感じで作られ、当時の朝廷で広まっていった。
イメージが色々と違ったという感想です
で、映画のストーリーとしては、この式部と道長の関係に重きを置いている。
式部の不安定な精神状態が「源氏物語」を作り出しているというわけです。
設定としては、なかなか新解釈で面白い。(しかし、私の中の藤原道長イメージとしては有りえない気がする。そこんとこはネタバレ欄で)
現実世界の話が、ちょっと丈長で、若干眠気を誘われた・・・もう少し物語世界の方を描いた方が良かったのでは・・・
真木よう子は大好きな女優さんだけれど、私の藤壺イメージとはちょっと違うんだよね…
だったらこの年代の女優で誰が良いだろうと考えたところ、思いつかなかったんだけれど。
美しくて女性らしく、理知的で優しさに溢れ、憂いを秘めた・・・誰なら良かっただろうか。
簡単「源氏物語」講座(必要ない方は読み飛ばしましょう)
「源氏物語」の主人公・光源氏は、桐壺帝(物語の中の天皇)と、寵愛を受けていた桐壺更衣の間に産まれる。
小さいころから愛らしく美しい子であり「光の君」などと呼ばれていた。
源氏が3つの頃、母である桐壷が亡くなる。(この映画では産んだ時に亡くなった事になっていた)
以降、源氏は母の面影を求めて、あまたの女人を渡り歩くようになる。
父は源氏を愛していたが、桐壷は身分の低い出自で後ろ盾がないため、宮廷争いに巻き込むよりもと源氏という姓を与えて臣下とした。
それでも、源氏はその美貌と、歌、楽、書と全ての才に恵まれ、また、帝の子なのに臣下の身分という憂いを秘めた趣が朝廷中の女人から注目されて、一大モテ男として君臨していくのだった。
しかし、
モテるつもりはないんだけど、女の方がほっといてくれないんで~。
みたいなプレイボーイ(死語…)ぶりを発揮している内に、源氏にあまたの女難が降りかかるようになってくる。
源氏はいつになったら理想の女性に巡り合い、幸せになることが出来るのか!?
そんな、平安一大モテ男子女人放浪記。
そして永遠に母の面影を女人に追い続ける一大マザコン男の伴侶探し。
それが「源氏物語」。
絶賛したい 田中麗奈さんの六条御息所
俳優陣としては、斗真の源氏は私はもう文句なく素晴らしいと思い……意外だったのは「有りえない」と思っていた多部未華子さんの葵の上が良かったこと。
多部ちゃんもそうだけど、田中麗奈も蓮佛美沙子も、声がすごくいい!!
声~?と、思われるかも知れないけれども、薄暗い中で相手を見ていたこの時代、 女性の声はヒジョーに重要だった。
声、香り、歌(歌といっても音楽ではなくて和歌よ )これがこの時代の「美人の条件」ね。
とにかく…、田中麗奈さんの六条御息所は、本当に…本当に素晴らしかった。
キャスト見た時点ではイメージじゃないと思っていたんだけれど、なんだろう、この演技の幅の大きさ。
今まで色々な映画で田中麗奈さんを見てきたけれども、ベスト田中麗奈を見た感じ。
六条御息所のあまりの哀れさには、涙が出た・・・この映画で唯一の泣き所。
調度やお着物含め、映像は素晴らしいので、観るならスクリーンで観ることをお薦め。
でも、男性には退屈かも~・・・
試写会でも、女性率の高さに驚いたし。
少なくとも2001年の『千年の恋 ひかる源氏物語』よりは何百倍か良いと思う。。
ちなみに、「源氏物語」を楽しみに見に行く方へ。
この作品で描かれているのは六条御息所まで。紫の上も明石の御方も出てきません。ご注意を。
以下ネタバレ感想
佐藤祐基くん、突然「屋根の上のオニエッティ」になって現る・・・
公式の相関図にもWikiにも載ってね~・・・可哀想すぎる。
役名もよく解らず今に至るわけだけど、道長が喋ってた内容から想像するに、甥の藤原伊周だよね…たぶん。
出てくるのが唐突過ぎて、「陰陽師」か「帝都大戦」が始まるかと思った。
その陰陽師・安倍晴明だけど…
いかんなぁ…あれは・・・
窪塚洋介って好きだったんだけどなぁ・・・
あんなに変わらない人だっただろうか。あれじゃキングだよ…
上に設定としては面白い、と書いたけれども、私の中で藤原道長という人は、そんな光り輝くイケメンじゃないんですよね。
どっちかというと、気が小さいくせに欲望でギラギラしているいけ好かないオヤジってイメージ。
当然、ヒガシのイメージと違う・・・
私の中では、源氏=道長にはならないな。
しかし、道長が好きで思いかなわず、物語の中でイジメ尽くす式部の執念。
最後の2人のやり取りのシーンは好き。
光り輝く貴方には、死ぬまで苦しみ続ける運命が相応しい
女の執念、甘く見るべからず。
・・象のロケット
★前田有一の超映画批評★
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