ベン・イズ・バック
原題 : ~ Ben is Back ~
作品情報
監督・キャスト
監督: ピーター・ヘッジズ
キャスト: ジュリア・ロバーツ、ルーカス・ヘッジズ、キャスリン・ニュートン、コートニー・B・ヴァンス
日本公開日
公開: 2019年05月24日
レビュー
☆☆☆
劇場観賞: 2019年5月21日(試写会)
強い母だとは思うが、何と自分勝手な女なのだろうとムカムカする。
けれども、とにかく自分の子だけが可愛く自分の子だけは幸せにしたい……案外、親の本音はそれだよな、とは思う。
あらすじ
クリスマスイブの朝、19歳のベンは実家に突然戻り家族を驚かせる。薬物依存症の治療施設を抜け出し帰ってきたのだ。久しぶりの再会に母ホリーは喜び、温かく迎え入れた。一方、疑い深い妹アイヴィーと良識ある継父のニールは、過去の経緯から、ベンが何か問題を起こして自分たちの生活を脅かすのではと不安に駆られる。両親はベンに、24時間のホリーの監視を条件に、一日だけ家での滞在を認めた。その夜…(Filmarksより引用)
また依存症か…
また依存症の息子と親の話か……と思ってしまったのは、先月『ビューティフル・ボーイ』を観たばかりだったから。
しかし、本作の息子は『ビューティフル…』よりも真面目に苦悩しており、信じてもらえないのが可哀想なくらい。そして、母の方は『ビューティフル…』の父よりも猪突猛進型で「1日だけの再会」のためにひたすら突き進む。
暗いけれども、ジメジメした暗さではなく、パキッパキッと現状を斬って行くのだった。
そのせいか、母親に対する共感は薄い。
私だったらこうしない……と思う事の連続だったし、こんな女が近くに居たら嫌だなと思った(笑)
お国柄あれこれ
もう一つ、個人的に共感が薄かったのは、「私だったらあそこまで危険ならさっさと警察に頼るけど?」という話。
もちろん、子どもを警察に渡したくないという気持ちは理解できるが、あれほど危険なら、もう自力では解決できないよね……と思ってしまうのである。
ただ、「アメリカの警察」がどれほどの環境なのか、というお国柄はあるかも知れない。
一応警察を信用できてしまう国・日本。やはりとっても治安がいいからこそなのかも。
とにかく……主人公の母はついていけないほど強い。
ベンの継父が言っていた「ベンが刑務所行きにならずに済んでいる理由」も「お国柄」だったし、やはり国の外にはそれぞれの事情。
オピオイド薬物依存
ベンの家庭環境は、強すぎる母、肌の色が違う継父、あまり良くない人だったらしい実父……と、グレて薬物に手を出してもおかしくないような気もする物だが、今作では中毒の原因はそういう事柄ではなかった。
オピオイド薬物依存とは、病院で処方された鎮痛剤などの過剰摂取から起こる依存症で、アメリカでは現在、それに纏わる中毒死が交通事故死を抜くという深刻な社会問題になっているらしい。
1日130人も薬物で死亡するという国・アメリカ。だからこそ中毒を克服した有名俳優やアーティストも堂々と実名を曝け出して「ストップ・ザ・薬物」運動の先頭に立っている。
不良化して自ら悪の世界に足を突っ込んだのならばまだ「情けない」で済むけれども、医者を信じて処方された薬で中毒になったら親もやっていられないよねぇ……。
愛犬・ポンスはどこへ…の結末
依存症テーマでよくある「家族の物語」だけではなく、この作品は後半になるにつれ、「ポンスはどこへ?」になっていくので(いや、ベンはどこへ……)、そこはネタバレしないでおく。
いやぁ、本当にドキドキしました。
ラストシーンのその後
ルーカス・ヘッジズは現在公開中の『ある少年の告白』に引き続き、親の方向性に苦悩する若者を繊細に演じる。
「父の映画には出たくない」と思っていたらしいルーカスをこの役に推したというジュリア・ロバーツは、ひたすら息子のためだけに走り回る母を熱演。
ラストシーンのその後。ソレを選択したら、また続くわけだけれども、それでもそうせずにいられない……そこは母親として理解する。
以下ネタバレ感想
かつてベンに鎮痛剤を処方した、認知症の医師に向かって「地獄に落ちろ」という女……。
なのに、自分の息子が薬物漬けにしてしまった彼女のことは「仕方なかった」で片づける。
息子を傷つけた相手には牙を剥き、息子が傷つけた相手に関しては立ち入らない。
人間って本当に自分勝手だ。
ベンは自分が死ねば家族が救われると思って、あの道を選んだ。けれども、ポンスを乗せた車にわざわざ母の電話番号を挟んでおいたのは、可能性に賭けた部分もあると思うのだ。
かくして母は息子を救い、闘いは続くよどこまでも……。
とりあえずは、心の広い夫と、恐らく誰よりも傷ついている妹のケアもしなくてはと、ホリーが気づくといいな。
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★前田有一の超映画批評★
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