バベル~BABEL~
監督: アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ
出演: ブラッド・ピット、ケイト・ブランシェット、役所広司、菊地凛子、ガエル・ガルシア・ベルナル、アドリアナ・バラッザ、エル・ファニング、二階堂智、ネイサン・ギャンブル、ブブケ・アイト・エル・カイド、サイード・タルカーニ、モハメド・アクサム
公開: 2007年4月28日
第59回カンヌ国際映画祭 監督賞受賞
※ネタバレ含む感想です。
あらすじを書かずに感想は書けなかったので。。。
彼らは、「さあ、天まで届く塔のある町を建て、有名になろう。
そして、全地に散らされることのないようにしよう」と言った。主は降って来て、人の子らが建てた
塔のあるこの町を見て、言われた。「彼らは一つの民で、皆一つの言葉を話しているから、
このようなことをし始めたのだ。
これでは、彼らが何を企てても、妨げることはできない。我々は降って行って、直ちに彼らの言葉を混乱させ、
互いの言葉が聞き分けられぬようにしてしまおう。」主は彼らをそこから全地に散らされたので、彼らはこの町の建設をやめた。
この町の名はバベルと呼ばれた。
旧約聖書 創世記 11章
通じない言葉。通じない心。
神の怒りを買った人間が作った町、バベル。
この映画はまさに、バベルの住民の物語だ。
ストーリーは時間軸が交差するモロッコ、メキシコ、アメリカ、日本の4つの地で進行する。
それを繋ぐのは、一本の猟銃。
兄弟のたわいない遊びが引き起こした事故。
事故はテロ事件として大きく世界中に報道され、一家は世界の敵となる。
子ども達の声が聞こえなかった父。
言い訳する言葉が持てない子ども達。
もっと幼い頃には、きっと何でも解り合えていたはずなのに。。。
それでも親としての愛情は捨てられない。
だから、逃げ、戦うのだ。
子ども達を守るために。
もっと早く正確に真実を訴えればいいのに
と観ている時は思ったが。。。
たぶん、あの状況で事実を訴えても誰も耳を貸してくれないのだろう。
切ない、悲しい状況に追い込まれて。。。
兄弟は父は、初めて聞こえなかった声に気付くのだ。
銃弾の犠牲になった夫婦は、異国の町に辿り着く。
救急隊が来るまで出発しないで欲しい、と夫は他の旅行者に訴えるが、言葉の通じない異国での事件に動揺する観光客たちは彼の話を聞いてくれない。
夫婦を救ってくれたのは、通訳の一家。
助けてもらった礼を差し出す夫に、通訳は首を振り礼を受け取らない。
抱き合って別れる2人。
銃弾の被害に遭って、旅行から帰れなくなった夫婦の家では予定が変わった子ども達のシッターが、息子の結婚式に出席できなくなって困っていた。
仕方なくメキシコの結婚式に雇い主の子ども達を連れて行ってしまうシッター。
しかし、帰り道、ちょっとした誤解から警察に追われる身となり・・・
ここでも言い訳は通じない。
シッターの言葉に耳を傾けてくれない警察。
猟銃の出所は、1人の狩猟好きな日本人の男だった。
彼には耳の聞こえない一人娘がいる。
耳が聞こえない身であるが故に、周りとの接触に不器用にならざるを得ない娘。
妻は猟銃で自殺した。
男はその時から銃を持たなくなった。
男の心にも深い傷はある。
しかし、父の声は娘には聞こえず、娘の孤独も父には届かない。
言葉はあっても、届かない、通じない4つの世界。
重くて苦しくて悲しい。
言葉が届かないのは、外国語だから、ではない。
同じ言語を話していても心が通じない、それが人間。
神がバベルに与えた罰は、言語を切り離した事だけではなかった。
人と人は、どうやって解り合うのか。
重いテーマが心にのしかかる作品だった。
年頃の男の子の親であるが故に、ただ遊んでいただけの兄弟のその後が、とても気になる。
言葉が通じているはずの我が家でも、時々、子供の心は解らず、自分は異邦人になった
気がする時があるから。
人の気持ちは難しい。
言語が通じたって……解決できない事はたくさんある。
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★前田有一の超映画批評★
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