天地明察
監督: 滝田洋二郎
出演: 岡田准一、宮崎あおい、佐藤隆太、市川猿之助、笹野高史、岸部一徳、渡辺大、白井晃、横山裕、市川染五郎、中井貴一、松本幸四郎、笠原秀幸、染谷将太、きたろう、尾藤イサオ、徳井優、武藤敬司
公開: 2012年9月15日
2012年9月19日。劇場観賞。
「歴史が好きです」と常々言っておきながら、「日付」という物に全く無関心であったと思い知る……。
一体、いつから「何月何日」という言葉はあったの?
暦とはいつ頃できた物なの?
現在レビューしている大河ドラマ「平清盛」でも「何月何日」はすでに史書に残っているわけなのだから……平安時代には、もちろん「日付」はあったのだろう。
調べて見たところ、日本には6世紀ごろに百済から伝わり、推古天皇の御代にはすでにあったらしいとか。日本に限らず太古の時代、世界中の国が政の決定や病の平癒を占いや呪術に頼っており、それには暦が必要なわけだから、確かにないわけがないのだった。
そんな風に、久しぶりに調べものをしたくなる作品に出会った。
渋川春海という名前は受験生のため程度の歴史知識として一応頭にあったものの、安井算哲という名前はまるで知らなかった。
原作は冲方丁氏の同名ヒット小説。未読です。
800年前に唐より入ってきた「宣明暦」という暦が誤っているという事を何年もかけて天体観測したのち証明し、正しい暦を作る。
暦を支配する朝廷の軋轢。800年もの間、人々に常識として信じられてきた歴史を引っくり返す挑戦……。
400年前の日本にこんな人がいたなんて!
と考えれば考えるほどウキウキする。
ただ算術と天文が好きなだけの無邪気な日々を過ごし、天文観測に旅立つ楽しさを見せる前半部分から、政治に巻き込まれたり苦悩を味わなければならない後半部分まで、どこを取っても面白い歴史ロマンだった。
バランス的には後半がいささか丈長だった印象はある。それが残念といえば残念…。
笹野高史さんと岸部一徳さんの北極星観測コンビは大変面白いキャラだったので、あの辺にもっとエピソードがあったら良かったな。
あ、でも、それじゃ長すぎになってしまうか…。
いっそ、丸っきり同じスタッフとキャストで1年間の大河ドラマを組んでしまうとか。
充分にその長さに足るエピソードがある気がする。
残念ながら私は数学が苦手なのだが、恐らく数学オタクや天文オタクほどウキウキする内容なはず。
400年も前から人間はこんなに天体観測の技術を持っていたんだ、という歴史を映像で再確認し、そんな頃から様々な道具があった事に驚き、寛永という徳川泰平の世に剣を持たない真剣勝負を行った人の情熱に涙する…。
そんな素敵な作品だった。
歴史に興味のない方も、プラネタリウム代りにぜひお出かけを。
【関連サイト】 ・渋川春海 byWikipedia
ここから下ネタバレ↓観てない方は観てから読んでね
金環日食は、直に見ちゃいけないんやで~~~……。
と、ツッコんだのは私だけではないはずだ……。
暦が変わる…って考えてみれば大変な事だ。
例えば、「今使っている暦が間違っていました。10日後に元日が来ます。はい、よろしく」と言われたら、もう行事大好きな日本人は正月準備にてんてこ舞いだ。
いや、そんな単純な話じゃないよね。企業の決算は…打ち合わせは…為替はどうなる…もうやっていられるもんじゃない。
しかし、江戸時代にもそれなりに大変な事があった。
正確な暦がなければ月が欠けたり日が欠けたりする日を予測できない。
日食、月食である。
そんな事……。
とは、今の時代だから言える事で、この時代には大変な事なのだ。何せ忌日なのだから。
ラストの町中での日食観測シーンで、吉や凶が狂う……と心配していた人々が印象的。
その重大さは現代とはたぶん比較にもならないはずだから。
太古から暦は天子様が支配するものであり、下民が口出しできるような物ではなかった。
その間違いを指摘し、証明する事の大変さ…。
算哲を支える妻・えん。宮崎あおいさんの優しい笑顔も印象的。
兄さん役の佐藤隆太くんと同じような、ちょっと頼もしい笑顔なんだよね。
この2人を兄妹にしたのは、すごいナイスなキャスティング…。
「明察!」の感動に沸くシーン……。
いつか昼間にも星が見えるよ。
と言っていた通り、月で隠れた太陽の隣に見える小さな星。
あなた。
星が見えます。
この時、2人で頑張ってきた夫婦の絆にウルっとなった…。
歴史と天体のロマンと夫婦愛の深さに感動した。
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・象のロケット
★前田有一の超映画批評★
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