本サイトにはプロモーションが含まれています

『贖罪』(WOWOWドラマ 2012年1月)感想 納得できる償いをしなさい

贖罪 

   

監督: 黒沢清   
出演: 小泉今日子、蒼井優、小池栄子、安藤サクラ、池脇千鶴、田中哲司、木村葉月、小俣絵里佳、木村真那月、菊池和澄、柴田杏花、嶋田久作、森山未來、水橋研二、加瀬亮、伊藤歩、長谷川朝晴、香川照之、新井浩文
公開: 2012年8月

2013年1月6日。DVD観賞。

WOWOW「連続ドラマW」で2012年1月から5回に渡って放送されていた連続ドラマ。

ドラマブログの方に記事を作るべきか悩んだのだけど、新宿ユーロスペースで2012年8月に上映され、第69回ヴェネツィア国際映画祭アウト・オブ・コンペティション部門でも招待作品として上映されている。
(ヴェネツィアで上映されたのは2時間ちょっとにまとめた再編集版らしいけど。ですよね。普通にやったら5時間近い代物だし… )

そんな理由でこっちに感想を入れる事にしました。

原作は湊かなえ氏の同名小説。
得体の知れない恐怖感。ドロドロと暗い穴にゆっくり落ちていくような気味の悪い感覚。結末はどこまでも後味悪く、見終わってどんよりと肩が重くなる…。

この湊かなえ氏独特の底の深い穴のような世界が、黒沢清監督の作る世界とまた見事に一致して、この上なく恐ろしいのだった。

黒沢監督のホラー映画の映像には常に惹かれるものの、幽霊の描き方があまりにもツッコミ所多くて(すいませんすいません )つい、くだらない感想をいつも書いてしまう私…だけど、幽霊が出ない黒沢作品はこんなに美しくて怖いのだと思い知りました。(ホント、すいません )

「得体のしれない物」は、幽霊ではなく…そして、人間そのものでもなく…。
人間というものが持つ「情」や「欲」や「愛憎」や…そして「復讐」

そういう話だった。

物語は5話、というよりも5部で構成されている。

f:id:nakakuko:20150412232157p:plain

 

とある田舎町に引っ越ししてきた少女が夏休みに学校の体育館で男に殺された。
少女・エミリは、殺される直前まで4人の少女たちと一緒に遊んでいた。
少女たちは全員男の顏を見ている。
しかし、証言は得られず、犯人は解らないまま時は過ぎる。
エミリの母・麻子の憎しみは、一緒に居ながら証言が出来なかった4人の少女たちにむけられた。

  

    f:id:nakakuko:20150412232217p:plain

 

もう、たくさん!
バカの一つ覚えみたいに顔は覚えていない、顔は覚えていないの繰り返し。
あんたたちがバカだから半年も経つのに犯人が捕まらないのよ。
私はあんたたちを絶対に許さない。
犯人を見つけなさい。でなければ、私が納得できるような償いをしなさい。
それが完了するまで、私は1分1秒もあんたたち1人1人のことを忘れません。

小学生の少女たちに向けられた、この激しい怒りと憎しみ…。

エミリが殺されてから、このシーンまでが1話から4話まで全話の冒頭に入っている。

紗英、真紀、晶子、由佳の4人は、「麻子さん」と交わしたこの「約束」に縛り付けられてその後の人生を生きる。自分なりの「償い」を考えながら。

DVDだと3本に収められているので、一気に見てしまったのだけど…。
全5話というのは、彼女たち1人1話。そして、犯人の謎に辿り着く最終話という構成なのである。

「麻子さん」の小泉今日子がとにかく恐い。
この方も、以前はそんなに達者だとは思ってなかったんだけど、いつの間にか凄い役者さんになりましたね。母親の悲惨な悲鳴、自分の子どもは死んだのに生きている友達へ向けられた憎悪、そして、最終的に見せてくれるのは「女」という厭な「人間」。

4人の少女たちの成長後を演じる4人の女優さんもまた凄いです…。
蒼井優、小池栄子、安藤サクラ、池脇千鶴…
そして、これに絡む男達それぞれに、森山未來、水橋研二、加瀬亮、長谷川朝晴…。

登場人物は漏れなく「変」なので、この役者さんたちの恐ろしい「変」っぷりを見るだけでも価値ある1本かと。(あ、DVDにすると3本か )

まぁ…落としどころは、ちょっと納得いかなかったり変だと思う部分もあるけれども、ラストのもやもやした気持ち悪さをぜひ味わって下さい。

 

ここから下ネタバレ観てない方は観てから読んでね 

    


ツッコミ所は、ほぼ原作でもツッコんだ箇所なので今さらなんだけど、映像化されて香川さんがキャスティングされるとまた余計に、えっ…ってなる…。

小池栄子演じる真紀の告白セリフは原作ではちょっと違っていて、犯人は青木に似ているという事の他に「すでに亡くなっている人」に似ている、というのですよ。

それがドラマ版では「ここに顔が浮かんでいます…でも、えっそんな馬鹿なこと!」という風に表現されているんだと思うんだけど…それって、たぶんつまりエミリの事だよね。

青木とエミリは実は親子なわけだから顔が似ている。
少女たちはもしかしたら、事件の時からそれに気づいていて、恐くてとても言い出せなかったのでは…と思うんですよ。
刑事さんに「犯人の特徴を教えて」と言われて、殺された被害者に似てましたとは、なかなか言い出しにくい。

でもね…エミリちゃんと香川さんじゃ…。
面影もないよね……。
・木村葉月ちゃんプロフィール by 「ジャスティスプロダクション」
(いや、香川さんは役者さんとして大好きなんですよホントすいません)

あとはもう…ツッコミ所というか、くまなく自業自得。

5人の女すべて。
確かに彼女たちは麻子さんの脅迫めいた言葉で人生に重荷を背負った。
でも、こういう人たちは、事件が無くてもこうなっていたような気がしてしまう。
最終的な「殺す」という行動は全部彼女たち自身の選択なんだもの。

物語的には、4人の少女の話を引っ張って最終的には麻子自身の自業自得かよ…まぢ

とは、原作を読んだ時から思ってた。

私たちの人生を狂わせた償いが犯人をきちんと追い詰める事。

と、いう由佳の言い分は、ちょっと優しすぎるような気がする。

結局、自分がやった事に何の償いもできず、行く所さえも失くして…
霧の中でボロボロになって立ちつくすラストが素晴らしく印象的。

「贖罪」公式サイト

 

 


贖罪@ぴあ映画生活トラックバック
・象のロケット

★前田有一の超映画批評★

※ Seesaaのトラックバック機能終了に伴い、トラックバックの受け付けは終了させていただきました。(今後のTBについて)

TB:「映画@見取り八段 トラックバックセンター」http://todays-cinema.seesaa.net

 

comment

タイトルとURLをコピーしました