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『ある秘密』完璧な家族

ある秘密~ UN SECRET ~

   

監督: クロード・ミレール   
出演: セシル・ドゥ・フランス、パトリック・ブリュエル、リュディヴィーヌ・サニエジュリー・ドパルデュー、マチュー・アマルリック、ナタリー・ブトフュ、イヴ・フェアホーフェン、イヴ・ジャック、サム・ガルバルスキ
公開: 2012年4月21日

2013年5月3日。DVD観賞。

フランソワは虚弱で体育の苦手な少年だった。
父のマキシムは元体操選手で逞しい。母のタニアは元水泳選手でモデルだった。
健康的で運動能力に優れた両親の元で、フランソワは何となく劣等感を持って育った。
父がフランソワに体操教育を強いる時、母の表情は曇って見える。その理由はフランソワには解らない。

少年はいつの頃からか頭の中で「兄」を作り始めた。
運動能力に優れ、いつも自分の前にいて追いつけない頼もしい存在。
しかし、その話をすると父は激怒する。母は悲しそうになる。
母のバッグの中に入っていた誰の物か解らない犬のぬいぐるみ。

何の変哲もない普通の3人家族だと思っていた。
けれども、両親には「ある秘密」があった。

少年がほしかったのは完璧な家族。完璧な愛。

両親の悲しい秘密。暗い過去。
そこには、戦争とホロコーストの歴史があった。

1985年の「現代」と、少し卑屈に育ったフランソワの少年時代。そして、両親の秘密が描かれる第二次世界大戦時。

中盤から紐解かれていく両親の辛い歴史。
けれども、映像は何故か現代はモノクロで過去は鮮やかなカラーなのだ。

一応、「ホロコースト」のタグは付けているけれども、マキシムとタニアが失った時間の痛手の原因は自業自得の部分もあり、戦争のせいとも言い切れない気がする…。

けれども、苦々しい記憶は戦争と共に彼らを苦しめ続けている。たぶん、今もずっと。
だからこそ、今に光が当たらない。
大人になったフランソワは、両親を労わりつつ、自分の未来に向けて生きている。
完璧な家族は過去を捨てて自分の手で作りだせばいい。

クロード・ミレール監督の遺作となったこの作品。

人が亡くなる前には、昔のことほど鮮やかに美しく光輝いて見えるのかもしれない。

 

ここから下ネタバレ観てない方は観てから読んでね 

    


 

人がどんなタイミングで人に惹かれるのか。
誰かを好きになってしまう気持ちは仕方がない。けれども…

新郎が結婚式当日から新妻の兄嫁に惚れちゃうとか…え~アンナが気の毒すぎる。

可愛く活発で誰にでも愛されるシモン。
シモンがいる事は、みんなの救いだった。
マキシムがシモンを溺愛している事はアンナの救いだった。
けれども、夫の心は他の所にある。

アンナはだんだんと精神的に追い詰められていたのだろう。

追い詰められていた時に、たまたまユダヤ人に対する迫害が激しくなった。
たまたま疎開の話が出てきた。
そして、アンナはマキシムからシモンを奪った。

アンナの衝撃の行動は自殺行為のようなもので…
この時代じゃなくても、起きたような気がする。

けれどもこの映画の中では描かれていないアンナのその後を考えると胸が抉られるような思いだ。
恐らくは疎開先にタニアが来ると知っての衝動的行動だったのだろうけれども、連行されて、収容所でシモンと引き離されて、愛する息子がどうなったかという不安と絶望の中で死んでいったに違いない。

もちろん、タニアとマキシムを含むユダヤ人たちも、みんなアンナとシモンのその後を想像しただろう。

それでも、心を痛めながらも2人は惹かれあう気持ちを抑えることが出来ず、愛を貫いた。
2人の間にフランソワという子供も得て、後ろめたさと幸せが入り混じった人生。

父はアンナとシモンの死から立ち直った。
しかし、犬の死はこたえた。

立ち直ったように見えただけで、実際にはずっと抱えていた思い。

それでも、あの時は気持ちを抑えられなかった。
人を愛する気持ちは、時に残酷なもの。

「ある秘密」公式サイト

 


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・象のロケット

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