映画 鈴木先生
作品情報
監督・キャスト
監督: 河合勇人
出演: 長谷川博己、臼田あさ美、土屋太鳳、風間俊介、田畑智子、斉木しげる、でんでん、富田靖子、夕輝壽太、山中聡、赤堀雅秋、戸田昌宏、歌川椎子、澤山薫、窪田正孝、浜野謙太、北村匠海、未来穂香、西井幸人、藤原薫、小野花梨、桑代貴明、刈谷友衣子、工藤綾乃
公開: 2013年1月12日
レビュー
2013年7月13日。DVD観賞。
☆☆☆☆
このレビューに辿り着いた方がいつこれを読んで下さっているのかは解らないが、これを書いている現在は参議院議員選挙直前である。
すごいタイミングでこのDVDを出したものさ。これも鈴木メソッドの一環なのか。さすが抜け目ないぞ。
では、有りがたく受けさせていただきましょう。
…という事で…。
テレビ東京系連続ドラマ『鈴木先生』の放送終了から2年。
待ちに待った「Lesson11」の始まりである。
あらすじ
緋桜山中学校の2年A組を受け持つ鈴木先生は、理想のクラスを作る上で必要なスペシャルファクターとして、ひとりの女子生徒・小川蘇美を重視していた。しかし、そうしているうちに蘇美の魅力にとりつかれ、良からぬ妄想をしてしまう。妊娠中の妻・麻美に心配をかけまいと、なんとか自分を律して日々を過ごしていたが、2学期になったある日、OBが学校に立てこもり蘇美が人質にとられるという事件が発生する(映画.comより引用)
Lesson 11 生徒会選挙
今回の緋桜山中学校2-A鈴木学級の生徒たちは生徒会選挙に直面している。
生徒会選挙と参議院選挙を一緒にするなよ、と言われそうだけれども、ここは社会の縮図である。
鈴木先生は相変わらず余計な口出しはせず、必要なアドバイスだけ与え、生徒の動向を見守り、投票を棄権する生徒の「投票しない理由」について考察する。
そこには大きなテーマが隠されているのだ。
「全員参加で実現する公正な選挙」
は、果たして正しい選挙なのか。投票率が上がればそれでいいのか。
「頑張れ」と無理強いする事は果たして悪でしかないのか。
「危ない物」を撤去していけばみんなが安泰に暮らせる世の中を作る事が出来るのか…。
教育だけが世界を変えられる。
鈴木先生の理想と確信が炸裂するストーリー。
今、この時だから多くの人にぜひ見ていただきたい作品。
ドラマ未見の方でも必ず得られる物はあると思う。
ドラマからのファンにとっては
ドラマからのファンにとっては、もうただただ懐かしい顔が並ぶ。
足子先生ももちろん活躍……します。えっと、本当に今回は活躍します。
あのOPがそのまま見れたのにも感動した!
生徒たちがみんな笑顔のOP…と言えば、どういうストーリーになるかこのドラマを見てきた方々なら解るはず。
実はこれの原作は一本も読んだ事がないんだけど…。
原作がどれくらい反映されているのか解らないくらいの古沢良太節に今回も酔う。
本物の天才脚本家だよなぁ…と、しみじみ思い、それを自分の物としてこなしているこの役者さん達の素晴らしさに感動する。
…という事で…レビューのほとんどはネタバレ欄で↓
ここから下ネタバレ↓観てない方は観てから読んでね
ここからネタバレ感想
妄想夢劇場からの入りもいつも通り…の安定感。
鈴木先生は結婚しても相変わらず「小川蘇美病」に悩んでいるらしい。
この病が本当に何か厄介事が起こる前触れなのだとしたら、麻美さんだけじゃなくて鈴木先生本人にも「能力」があるよね。
中学時代に「問題児」と言われていた不良生徒よりも、むしろ一見問題無さそうな「普通の生徒」にこそ目を向けてきた鈴木先生の教育。
彼らは良い子であろうと努力するあまりに、いつの間にか追い詰められている。
大人のいう通りに褒められるように頑張って生きている子どもほど、社会に出たら突き当たる壁が大きい。
それを乗り越える力を育てるための鈴木メソッド。
その体現者である2-Aの生徒たちが今回も余すところなく力を発揮した。
彼らは自分で考え、自分たちの力で表現する。
選挙は人間関係やしがらみで投票する物ではない。
自分自身で考えて責任を追うつもりで投票する。
若干14歳の生徒たちが過去の痛い体験から、それを理解している。
「投票しない事」は、投票率100%ばかりに目を奪われる大人への反抗だった。
不真面目な人たちに投票を強要する学校側への不満。
出水の立候補はそれを阻止するための抵抗。
投票するという事は、自分が投じた一票に投票後も反省や後悔を重ねるべき事。
多くの人が、それほどの覚悟で投票を行っているだろうか。
不真面目な投票を阻止するために、そんなシステムを拒否する権利が欲しいと主張する出水たち。
灰皿を公園から取り払えば、変質者はいなくなるのか。
無理やり投票させれば正しい選挙は行われるのか。
生きていくためには、グレーゾーンも必要なのだという事…。
それでも、社会の不条理と戦える大人になるために、出水は生徒会長を引き受ける。
システムが不満なら、不満ではないシステムを作る努力も必要だ。
自分自身でそれを理解する力がきちんと身についている生徒たちが頼もしい。
そして、小川蘇美の揺るぎない強さと美しさ…。
足子先生も口でいうだけじゃなくて身体を張って生徒を守るところを見せてくれた。この人はこの人の主義を貫きながら正しい道を歩もうとする人なんだよなぁ…。
ちょっと方向は違っても。
鈴木先生が育てた生徒たちが会いに来ないのは、それぞれの道で頑張っているところだから。
最後にそう言ってくれた神田マリも清々しい。
今回も分断されているように感じるエピソードが、間違いなくきちんと一つの方向を示している結末。
「世の中を息苦しくする手伝い」を自分はしていないか否か。
鈴木メソッド、しっかり受け止めました。
…で、キャストが中学生に見える内に続編、お願いします!
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