塀の中のジュリアス・シーザー~CESARE DEVE MORIRE ~
監督: パオロ・タヴィアーニ、ヴィットリオ・タヴィアーニ
出演: コジモ・レーガ、サルヴァトーレ・ストリアーノ、ジョヴァンニ・アルクーリ、アントニオ・フラスカ、フアン・ダリオ・ボネッティ、ヴィンチェンツォ・ガッロ、ロザリオ・マイオラナ、フランチェスコ・デ・マージ、ジェンナーロ・ソリト、ヴィットリオ・パレッラ、パスクアーレ・クラペッティ、フランチェスコ・カルゾーネ、ファビオ・リッツート、マウリーリオ・ジャフレーダ
公開: 2013年1月26日
2013年9月16日 DVD観賞。
キャストの名前を書きだすのに四苦八苦…。料理みたいな名前がいっぱい並ぶ。
…で、この役者さん達、「俳優」ではなく実際の囚人なのである。
劇中でもそうなのですが、映画上でもそうなのです。
そして、ロケ地も実際の刑務所。
イタリア・ローマにあるレビッビア刑務所で、囚人による演劇実習が行われる。演目はシェークスピアの『ジュリアス・シーザー』。受刑者たちの中からオーディションで配役が決まり、刑務所全体を使った稽古が始まるのだった。
ドキュメンタリータッチの作品で、オーディションから稽古、舞台上演までが映し出される。
ハッキリいって、ドラマのような物は特にない。その稽古風景がコミカルとか泣けるとか…そういう作品ではないので、ストーリーを重視して見ると眠くなるかも。
ただ、囚人が舞台の稽古をするのを延々と見るのだ。
個人的には、その迫力ある稽古風景と舞台がとても面白かった。
あくまでもドキュメント「タッチ」であり、ドキュメントではない。
役者さんたちは「シェイクスピアを演じる囚人を演じる囚人」なのである。
実に真面目で素直で真剣そのものな役作りが素晴らしい。
何だか、「囚人」に対するイメージが変わってしまいそう…。
日本だったら……ちょっと想像できないなぁ。
「ドラマは特にない」と書いたけれども、全くないわけではなく…『ジュリアス・シーザー』の各役を演じる中で、彼らに現実や過去との葛藤が生まれる部分は読み取れる。
モノクロの画面の中で囚人を演ずる役者さんたち。
カラーになるのは彼らが現実ではない世界に浸っている時間だけである。
ラストは、ちょっと切ない余韻があった。
しかし、EDで紹介されているそれぞれの経歴(いや、罪状?)を見ると、結構重いんだよね…殺人で終身刑とかいう人もいるし。
この芝居の中で、彼らに何が残ったのか。
それは、彼らのその後の人生を見れば解る気がする。
ここから下ネタバレ↓観てない方は観てから読んでね
「芸術を知った時からこの監房は牢獄になった」
ラストのこのセリフがとても印象的。
演劇をしなければ、役について考えたりしなければ、人を喜ばせたりしなければ、彼らは刑務所の中の生活が当たり前だったのだ。
一度「考える」人生を送り役に浸りライトを浴びてしまったら、その後の寂しさと虚しさは言いようのない物に変わっただろう。
こんな所に閉じ込められるような事をした自分を責めて生きるようになるだろう。
だから、これは心の奥底に浸透する凄く重い罰であり、更生の切っ掛けになる実習だ…と思った。
実際にこの刑務所を出てから役者になった人もいるらしいから、本当にいい機会を与えたことになる。
…と、同時に自分の罪をも悔いて生きていてくれれば、本当に素晴らしいよね。
しかし、イタリアって自由な発想の国だなぁ……。
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