囚われ人 パラワン島観光客21人誘拐事件~ CAPTIVE ~
監督: ブリランテ・メンドーサ
出演: イザベル・ユペール、テレーズ・ブルゴワン、カティ・ムルヴィル、マルク・ザネッタ、ルスティカ・カルピオ、マリア・イサベル・ロペス、ココ・マルティン
公開: 2013年7月6日
2014年2月25日。DVD観賞。
2001年5月27日。フィリピンのパラワン島でイスラム原理主義グループ・アブ・サヤフにより外国人観光客を含む20人が拉致される事件が起きた。
目的は、テロ活動資金を得るための身代金。
人質たちは、この後377日間にも渡ってグループに連れまわされ、恐怖を味わう事になる。
この作品はフィリピン国軍とアブ・サヤフの全面協力によって当時の状況を忠実に再現したものだという。
ドラマというドラマはあまりなく、ただ人質目線からの恐怖の日々が映し出される。
音楽もほとんどなく、銃声や砲弾や人の叫び声や…そんな音ばかりが響く。映像も演技もリアルで、知らずに見たらドキュメントかと思うほど。
ものすごく、つらい…。
人質といえば、昨年劇場で見た『キャプテン・フィリップス』(未レビュー)を思い起こすところ。
しかし、あちらは有名ハリウッド俳優、トム・ハンクスが主演なのでドキドキしながらも「主人公が何かやるんでしょ」とか「まぁ助かるんだろう」という希望を頭半分で計算しつつ見ることができるわけだが、こちらは本当に先がどうなるか見当もつかない。
主人公も特に大きく動くことはなく…とにかくつらい。
銃を持った人間に拉致されたからと言ってそれが使われるとは思えず、ただの脅し道具だろ…と思ってしまう平和ボケした日本人にとっては、もうどうしたらいいのか解らないほど恐い作品だった。
彼らは合言葉のように二言目には「神は偉大だ!!」「偉大な神よ!!」と叫ぶわけだが、他宗教の人間ならば殺してもいいなどという神は神だと思えない。
それでも、その神を信じ、これは聖戦なのだと信じて生きているこの集団に私のように信じる神を持たない者が何を言っても言葉が通じないのと同じくらい虚しいこと。
宗教を持たない人がほとんどの日本人にとっては理解しがたい話だけれども、彼らの中ではそれが正義なのだ。
フィリピン国家のほとんどはキリスト教徒であり、ムスリム教徒は自分の国を欲して「聖戦」という名のテロ活動を始めた。誘拐は彼らにとって軍資金を得るためのビジネスなのだ。彼らにとっては正当な行為なのである。
世界には貧しい国がたくさんあり、日本人頭では理解できない宗教があり、「平和」の概念が違う人たちがいる…。
それでも、みんな人間なのだ。
暴力で制圧される恐ろしさと、誰も頼れない心細さ、根本的に考えが違う人間の存在…。
そういう物をたっぷり思い知らされる120分。
ここから下ネタバレ↓観てない方は観てから読んでね
最初にグループが人質たちに注意する「教え」が笑えるほどだ。
秩序を守るように。とか、人の物を盗まないように。とか。
あんたたち、すでに「誘拐」という、人の身柄を盗む行為をしているじゃないか。
邪魔だからと殺される。コーランを踏んだからと殺される。
金にならない人の命は虫けら同然。そんな人を天国に迎えてくれる宗教なんて…と、どうしても思ってしまう。
そんな「教え」しか知らずに12歳で銃を持つ「戦士」は、あの後どうなったんだろう。
主人公と一緒に人質になっていた人たちはあの後どうなったのだろう。
フィリピン軍による「救出」が、人質ごと攻撃しているのだから…助けようとしているようにはとても見えなかった。本当にひどい。
正式な事件の記録では、誘拐されたのは米国人2人、スペイン人1人、フィリピン人17人。
フランス人の主人公は創作ということか。
事件は米国人を含む5人が殺害され、捕まったグループメンバーは終身刑だとか。
この事件の後、パラワン島の治安は各段に良くなり、現在は平和な観光地になっているらしい…。
そうじゃなきゃ、こんな映画は制作されないよね。
根本から意思の疎通ができない人間との出会いは事故と同じだ。
けれども、そんな人間たちの中にも良心はあるのだと信じたい。そう思わせてくれる一幕もあったのに。
ラストはただ後味の悪さだけが残った。
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・象のロケット
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