ペインレス
原題 : ~ PAINLESS/INSENSIBLES ~
作品情報
監督・キャスト
監督: フアン・カルロス・メディナ
キャスト: アレックス・ブレンデミュール、トーマス・レマルキス、イレーネ・モンターラ、デレク・デ・リント、ファン・ディエゴ、フェリックス・ゴメス
日本公開日
公開: 2013年9月7日
レビュー
☆☆☆☆
2014年3月23日。DVD観賞。
ホラーのタグを付けたけれども、サスペンス・スリラーかな…。切ない。
内戦が絡んでいる事、子どもがいる事、茶けた墨絵のような色合いの風景…『パンズ・ラビリンス』を思い出す。
時代が移り変わるにつれ、監禁所を支配するために、あるいは逃げるために訪れる兵士の様相で情勢が解るように描かれているのが1本の歴史ものとしても秀逸な作り。
いや、むしろ、ミステリーよりも歴史ドラマとして見た方が正解かも知れない。恐らく、ホラーを求めて見た方は肩透かしを食らう。
目を覆いたくなるようなシーンも多いけれども、それ以上に心が痛い。
あらすじ
内戦時代のスペイン。痛覚を持たない子供たちが次々と生まれた。彼らの存在を危険だと判断した政府は子供たちをフランスとの国境近くの施設に隔離した。現在のスペイン。骨髄移植が必要になった優秀な医師デヴィッドは、自分が養子であることを知らされ、実の両親の居場所を探し始める。やがて、デヴィッドはこれまで国が隠していた隔離施設の真相、その施設でモンスターと化した少年の存在を知る……(ペインレス(字幕版)(Amazon)より引用)
「ペインレス」の意味とは
“PAINLESS”とは単語の意味そのまま「無痛」のことである。
身体に痛覚がなくても心の痛みはある…。
子どもたちの痛みになど誰も配慮してくれなかった。
スペイン内戦から世界大戦へ……。残酷な時代が子どもたちを傷つける。
1931年。スペイン・ピレネー地方で痛覚がない病を発症した子どもたちが監禁された。彼らは痛みの感覚がないゆえに他者にも自身にも危険な者とみなされたのだった。家族と引き離されたまま、多くの子どもたちがここでスペイン内戦の時代を迎える。
時が過ぎて2000年。外科医師のデヴィッドは、ある交通事故を切っ掛けに自らの病を知る。助かる可能性は肉親を捜すこと…。
スペイン内戦を描く
時代は2000年代と1930年代を行き来する。
デヴィッドは過去を掘り起こす水先案内人。
くつわ、拘束服、狭い独房…彼らが危険なのは凶暴だからではなくて無邪気だから。
別に何かに憑りつかれているわけではないし『ザ・チャイルド』みたいな悪魔子どもとはワケが違う。
隔離する事で安心し、臭いものには蓋をする。親たちは子どもを取り上げられて、どんな気持ちで内戦を迎えたのだろう。
戦争が無ければ、あるいは助かったかもしれない子どもたち。
ちょっと特異な体質の「個性的なこども」として教育を受けて、能力を生かして特殊な職に就いて…そういう幸せもあったのかも知れない。
いつだって大人が起こす戦争は、子どもにとって悲劇しか呼ばないのだ。
精神的に下へ下へと落とされる救いのない世界。
父の指を握る力強い小さい手。
それでも、命は繋がれる……。それだけが救いと言えば救い。
以下ネタバレ感想
姉を燃やしてしまったイネス。それが悪い事だと思っていないからやってしまった。無邪気ないたずら。
平気で自分の腕を燃やす。自分を食う。彼らには痛みがない。痛みを知って流す涙もない。
内戦が始まって食料も無くなり、命奪われていくイネスの最期が痛々しい。
両親がデヴィッドの骨髄移植ドナーになれない事は、最初の段階から察しがついてしまうので、そこから1930年代に遡る様子を見ていると誰がデヴィッドの親なのかもすぐに解る。
けれども、養父が尋問する男で実親が拷問師だったとは…。そんな関係だったとは思いもしなかった。
ベルカノを閉じ込めた養父の心にもずっと傷は残っていた。デヴィッドを育てることは贖罪の証だったのかも知れない。
ユダヤ人博士はベルカノを麻酔がなくても痛みのない手術ができる外科医に育てようとしていたのかも知れないね。犬に痛みを与えずに患部を取りだしたベルカノ。その知識が、殺さずに痛みを与える拷問師として役立つようになってしまった。
ラストの方は…生き延びていたベルカノにはちょっと驚いた…。 ああなると、もうモンスターみたいで。いや、モンスターだと思ってもいいのかな…。
母を抱きながら燃えていくベルカノに、
待って……燃える前に骨髄を~~~………。
とツッコみつつ…泣いた。
デヴィッドの中のベルカノの血は、保育器の中の息子に受け継がれる。
彼がもしも無痛症児だった場合には…。
きっと、誰かが守ってくれるに違いない。この時代なら監禁されることはないだろう。
怪物を作る時代を再び呼び起こしてはいけない。
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