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『ジャージー・ボーイズ』君の歌声に恋してる

ジャージー・ボーイズ

原題 : ~ JERSEY BOYS ~

作品情報

監督・キャスト

監督: クリント・イーストウッド
キャスト: ジョン・ロイド・ヤング、エリック・バーゲン、マイケル・ロメンダ、ヴィンセント・ピアッツァ、クリストファー・ウォーケン、マイク・ドイル、レネー・マリーノ、エリカ・ピッチニーニ

日本公開日

公開: 2014年9月27日

レビュー

☆☆☆☆☆

2014年9月27日。劇場観賞
 

『君の瞳に恋してる』(Can’t Take My Eyes Off You)は、1967年にアメリカのポップスシンガー、フランキー・ヴァリが出した曲である。
 

『Jersey Boys Movie Soundtrack 18. Can’t Take My Eyes Off You』(2014)

実は私自身、フランキー・ヴァリも彼が所属していた大人気グループ「フォー・シーズンズ」も、よく知らない。けれども『君の瞳に恋してる』は知っているのである。驚いた事にウチの息子も知っていた。世代を超えた名曲だということ…。

 

それもそのはず、ヴァリが歌ったのは1960年代だが、その後、現代に至るまで世界中でカバーされているんだもの。CМか何かにも使われていたような気がする。You Tubeでオリジナルを聞いてみたけれども自分の記憶の中の『君の瞳に恋してる』とはかなり違う。
 

『Can’t Take My Eyes off You – Frankie Valli and The 4 Seasons』

で、これだこれだと納得したのでした。「Boys Town Gang」版。うーーん…イントロの感じまで記憶と同じだ…スッキリ。
 

『Boys Town Gang – Can’t take my eyes off you』(1982)

自分の記憶の中の音楽の事は置いといて……。
 

この歌が、あんな状況の中で作られた物だとは知らなかった……。
あのシーンで泣いた。
 

ずっと大好きな曲だった。晴れた空を浮遊するように気持ち良く広がるメロディだと思っていた。この映画を観たらちょっと感覚が変わる。もっと空の高い所から1人で叫んでいるメロディなのだと解った。それは、気持ち良さと孤独のブレンド……。

あらすじ
ニュージャージーの貧しい地域で育ったトミー・デヴィートはニック・マッシと組んでいたバンドにヴォーカリストしてフランキー・ヴァリを迎えた。やがて、作曲の腕を買われて新たに加わったボブ・ゴーディオと4人。”フォー・シーズンズ”の曲は大ヒットし、彼らは夢見ていた栄光の階段を上り始める…。

「大スターの栄光と挫折と名曲の誕生秘話……」

という宣伝文句を見たような気がするが、純然たる青春映画だと思った。
 

貧乏で犯罪にも手を染めちゃうが、音楽の才能はあって、上へ登りたいという野心があって、若くて自信に溢れていて無防備で特攻的で…。

ああ…結局、自分はトミー・デヴィートを見ていたのかな。リーダーじゃなければ気が済まなくていい加減で…だけど孤独。

いつも一緒にいたけれどもね、結局はみんなが孤独だったんだよね。上り詰めたから終わったんじゃない。終わるべくして終わったんだ。
『ジャージー・ボーイズ』感想

 

けれども、寂しい。みんながキラキラしていた時代を思い出すから、あの凄いエンディングも「楽しい」と思いながら泣いていた。

 

ずっと一緒に居られないのが「青春」なんだ。

 

“Sherry”など聞き馴染みのある曲と、グループが上っていく高揚感。音楽と映像の盛り上がりが凄い。音楽が結び付ける友情も仕事風景も、物足らない部分が全くない。

それだけに…綻びが起きた時は見ている方もショックなのだ。

 

トニー賞を受賞したミュージカル『ジャージー・ボーイズ』を映画化したものだが、映画自体は別にミュージカルではない。ただ、フォー・シーズンズの4人のモノローグで構成されるところは、ちょっと舞台っぽい。面白い演出。

 

1つのグループの栄光と挫折、1人の天才歌手の孤独。淡々と史実を描いているようだが、底にあるのは人間の弱さと強さ。痛々しさと輝き。いつものイーストウッド監督作品と何ら変わらない。

 

だから、泣けるんだよ。
痛々しい人たちの人生は愛おしいからだ。

クリントさん、ご自身が出演されてます~…一瞬ね。どこかに。。>

 

 
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以下ネタバレ感想

 

仲間を裏切るやつはジャージーじゃない。
 

…これ、聞いたな…。ついこの前見た『猿の惑星:新世紀』で聞いたな…と思った。そういえば、トミーはどことなくコバに似ているな。孤独で、自分の方を向かせたいからボスで居たくて、自分勝手で失敗する…。

 

みんな孤独なんだ。
妻と娘から仕事を理解されないフランキー。お山のボスでいたかったトミー。自分をシャドウのように感じていたニック。

 

ずっと我慢していた思いをニックが吐きだすシーンは面白かった…面白くて、そして可哀想だった。言われなきゃ実感できなかったらしい、いい加減でガサツで経済観念のないトミー。
 

ニックは我慢した。フランキーとボブは見ていないフリをした。10年間。

 

グループは崩壊し、ヒットは出なくなり、フランキーはただ借金を返すために歌った。そして、愛する娘を失くして、失意からの再生。それが『君の瞳に恋してる』。

ミュージカルのようにキャスト総出演で踊るエンディング……の中で、彼らは彼らの想いを独白する。

どうして辞めたのかは自分でもよく解らないけれども、リンゴ・スターで居たくなかったというニックの気持ちは一番解る。ただ有名になりたかったトミーの気持ちも。

そして、ボブは冷静に実業家のように分析する。元々、フランキーと自分だけソロとして活動しようと提案したのはこの人だもの。自分が得をすればいい。本当の意味で成功を手に出来るのはこういう男。

 

フランキーは、もっと感情的情緒的に自分たちの過去を語る。

一番幸せだったのは、初めて4人で曲を作った時だと。
それが4人の共通の想いだと信じてやってきたフランキー。

 

だからエンディングが終わって、いかにもハッピーな気持ちになれそうでも…苦い思いは残るのだ。
4人の気持ちは、こんなにもバラバラだった。

 

この、イーストウッド監督風味が好きなのよ。
決して、カラッとサクッとした気持ちだけでは見終えることが許されない。

 

そのほんの少しの重さに今回も心が揺れる。

また大好きな名作が増えた。

 


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・象のロケット

★前田有一の超映画批評★

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