爆心 長崎の空
監督: 日向寺太郎
キャスト: 北乃きい、稲森いずみ、柳楽優弥、北条隆博、渡辺美奈代、佐野史郎、杉本哲太、宮下順子、池脇千鶴、石橋蓮司
公開: 2013年7月20日
2014年10月13日。DVD観賞。
人は、ある日突然居なくなる。
あの1945年8月9日午前11時02分。長崎から14万9000人の命が突然この世から居なくなった。
遺族は、その時まではそんな別れが待っていたとは思わなかったに違いない。
その地に暮らしている人は今もその痛みを抱えて生きている。
そして、突然の別れは戦争に関係なく今も訪れる。
病死であったり事故死であったり…その輪から人間は逃れる事は出来ないのだった。
そういう空気感は充分受け止められたし、印象的なセリフやシーンも多い。
けれども…何だろう……思っていたのとはだいぶ違ったな…。
あらすじ
長崎大学に通う門田清水は陸上に力を入れる平凡な女子大生。登校前に母とちょっとした言い争いをした日、恋人とホテルで過ごしている間に母が突然の心臓発作で死んだ。
高森砂織は1歳の娘を失った。それを引きずって生きている。ある日、砂織は娘が拾った貝が部屋の中に落ちているのを見つける。
身内を失った2人の女が、前を向くまでを描くストーリー。
もっと長崎原爆に関わる話なのかと思っていたが、そうでもなかった。
原爆との繋がりはラスト近くに描かれる。
突然の別れを覚悟すること、人の想いを大切に命を繋いでいくこと…というメッセージは伝わる。
でも…どうしてこんなツッコミ所満載な人物設定を作るの…?
で、何ですぐにヤっちゃうの…
息子と一緒に見ていたので、結構気まずい感じになったんですけど…。
だって、そのシーンも別に要らないし、その人物の必要性もよく解らない。
要らない部分が多すぎな気が…。
ラストには何だかビックリな演出でお口ポカーーンである…。
人が突然いなくなる命の儚さや人間関係を大切に生きる事…それに長崎という土地と原爆が上手く絡みあっていない感覚。
色々な意味で残念。
以下ネタバレ感想
お母さんと手を繋いで坂を上るのが好きだった。
一歩登れば見えなかった景色が見える。今まで見えていたものが見えなくなる。
次に見える景色が絶望だとは、子どもの頃の清水は思っていなかった。
「生き残ったもんは生きていくしかない。そうやってこの町のもんは60年間やってきた。お前もそんうちの1人たい。」
「お母さんがお前を愛していたことだけ忘れなければ、それでよか。」
彼氏と会っていたから電話に出なかった。
その間にお母さんは1人で死んだ。
それが清水の心に重くのしかかる。
重しを溶いてくれた優しい父の言葉。
娘を失った砂織は、娘が拾った宝貝が見えるようになるが、それは夫には見えない。
タカラガイは娘の棺に入れた物。
ない物が見える人と、見えない人。
どちらが幸せなのか…。
という砂織のセリフは、亡くなった娘を忘れてしまう事への恐怖と怒りを示している。
原爆には無関係だと思ったけれども、自分が被爆二世だから子どもが死んだのかも、と思っていたらしい。
そこは、この歴史を体験した一族にしか解らない苦しみ。
沙織の父がいう「300年続いた家」は、母の前の代で実は途絶えていた。
沙織の母は実子では無かった。
原爆で子を失った人に拾われたのだ。
被ばくした父と母は、沙織と妹・美穂子を産むことに二世の沙織よりももっと悩んだ。
それでも、2人が生まれたことが人生の喜びになったと語る。
原爆は残された人たちの心に傷となって残った。
けれども、だからこそ生き残った者は繋げていかなくてはならないという思い。
ここには、本当に感動した。
それだけで良かったのに…。
柳楽くんも池脇さんも素晴らしい演技だったけれども、この2人の出会いとベッドシーンは意味が解らない…。
とち狂って放火する勇一役もワケが解らないよ。そこに到るまでの心情が雑すぎる。
ラストには勇一役と清水が手を繋いでいるし。彼氏とは別に別れちゃったわけではないよね。
せっかくのいいセリフやシーンがもったいないな。
愛する人の死を乗り越え、時代を超えて長崎の命を繋ぐ2人…だけを描いてくれればそれで良かったのにね。
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