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『ぼっちゃん』基地外と基地内

ぼっちゃん

  

監督: 大森立嗣   
キャスト: 水澤紳吾、宇野祥平、淵上泰史、田村愛、鈴木晋介、遠藤雅、今泉恵美子、三浦影虎、日向丈、高橋真由美、小川朝子、津和孝行、川畑和雄、石鍋正寿、中村文夫、塚田丈夫、松下貞治、堀杏子、町屋友康、伊藤陽子  
公開: 2013年3月16日

2014年11月8日。DVD観賞。

秋葉原無差別殺傷事件(秋葉原通り魔事件@wikipedia)の犯人をモチーフに描かれた物語。

あくまでもモチーフであって、かの事件が主題となっているわけではない。描かれるのは全く別の「事件」だ。

だから途中までは「何じゃこりゃ…」と思いながら見ていた。あっちも酷いけれども、こっちももっと酷いじゃないかと。

あらすじ:
梶知之は8社もの転職を繰り返した後、寮付きの工場に派遣として就職した。一緒に寮に入った隣室の岡田は元スピードスケートの選手でイケメンで凶暴な男。梶は就職すると同時に「負け犬」意識を高めていく。
ネットの掲示板で現実の鬱憤を晴らすのが梶の日常。職場では早々に嫌がらせもされる。そんな中、梶は気が弱く不細工な先輩・田中と出会う。

「秋葉原通り魔事件の犯人」がモチーフだ…という話だけれども違うじゃないか…と思った。

確かに犯人・加藤智大もこんな男だったかも知れない。こんな風に自分勝手な恨み事や愚痴や理屈をネットに垂れ流していたのかも知れない。

しかしイケメン岡田をここまでクローズアップするのはなぜなのだろう、と。

最後まで見て、結局そういう事かと思わされる。

「あいつになりたかった」岡田と「私より幸せな人間は消えろ」は同じだった。

根底にある物は、どうしようもない孤独。

描写自体は滑稽で笑ってしまう所も多かった。楽しくて笑うわけではなくて…ノドに何か引っかかりながらの笑い。最後のあのシーンだって阿鼻叫喚地獄を見つつも真剣ではないもんね。いや…大真面目だからおかしいのか。不謹慎な笑い。

警察行けよ、上司に報告しろよ、と何度も思いつつ、そういう現実的な解決は何もない。ドロドロとした澱の中に沈む苦々しいファンタジーなのだ。

崖っぷちを這いずり回るような役者さんたちの演技、パワーが凄い。そこに引きずられてラストまで行きついた。

ブサイクは、彼女いない、仕事できない、負け犬「基地」の「外」。だから「基地外」。
イケメソは、彼女がいる、仕事させてもらえる、勝ち組「基地」の「内」。「基地内」。

「疎外感。孤独でもきっと幸せになれるはず。」

けれども、28年間ブサイクを続けると心もブサイクになる。「キチガイ」だから何をしてもいいのだという自分勝手な脳内変換は岡田との間に起こる事件で決定的に変わる。

イケメソだから孤独じゃないわけではない。イケメソだから何もかも手に入るわけではない。

人間はみんな孤独なんだ。
何かを追うほどに。

高い空にある星を掴むために梶は秋葉原に向かう。

誰にも共感できず、岡田の行動は『凶悪』を見ているように苦しく、田中くんとの触れ合いだけが、ちょっと癒し。

ちょっと途中が丈長に感じられた。ドロドロが長いのは見ていて辛い。

見終わって気持ち悪さしか感じられない。そんなもんだよね…犯罪者の心理なのだから。
けれども、それは決して全く理解できない物ではなかった。
それが恐い。

【関連記事】
【実話ベース】作られた話よりも恐い。実際の事件を描いた映画10選

 


以下ネタバレ感想

 

 

「梶くんと田中くん」的2人のデートは微笑ましかった。
初めてのトモダチ。ネットでは無くて言葉を交わし触れ合えるトモダチ。

しかし、岡田はいうのだ。

人を愛すと怨恨で殺すよ。孤独だと、無差別。

トモダチを得たから憎しみも得た、と梶は思う。
裏切られたと。

「うわべだけのトモダチ」「言葉だけのトモダチ」

それが自分自身の方だと気付いていない。

腐っている…自分勝手だ…自分本位だ…と思う。

けれども、そういう気持ちが理解できないわけではない。誰だって何だって他人のせいにしている方が自分が楽だから。

逃げているんだよ。梶も田中も岡田も。

私より幸せな人をすべて殺せば私も幸せになれますよね。

そうやって自分の周りに誰も居なくなった時、誰も愛せない人生は幸せなのだろうか。

他人よりも上であること。下であること。
人間はそれを意識せずに生きていく事が難しい。

人を破滅に向かわせるのはいつだって「孤独」。

虚しい。

 

 

   


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・象のロケット

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