本サイトにはプロモーションが含まれています

『チョコレートドーナツ』Shall Be Released

チョコレートドーナツ ~ ANY DAY NOW ~

    

監督: トラヴィス・ファイン   
キャスト: アラン・カミング、ギャレット・ディラハント、アイザック・レイヴァ、フランシス・フィッシャー、グレッグ・ヘンリー、クリス・マルケイ、ドン・フランクリン、ジェイミー・アン・オールマン、ケリー・ウィリアムズ、アラン・レイチンス、ミンディ・スターリング、ダグ・スピアマン、ランディ・ロバーツ、ミラクル・ローリー、マイケル・ヌーリー
公開: 2014年4月19日

2014年12月10日。DVD観賞

泣いたわ…。

泣かせエピソードで泣かされたという事ではなく、マルコの笑顔や幸せそうな疑似親子の暮らしや、魂籠められた歌や…そういう物に心揺さぶられる。

マジョリティの隙間から零れ落ちた事がない者には、その気持ちも境遇も理解できない。偏見の目で物事を見ていたら救えるものも救えない…。

<あらすじ>
1979年、カリフォルニア。ゲイバーでダンサーをしているルディは、騒音の鳴り響く隣室に子どもがいる事を知る。マルコというダウン症の少年は、その日、母親から部屋に置き去りにされて1人になった。
施設の劣悪な環境を心配したルディは、バーで知り合った検事のポールと共にマルコの親になると決意する。

アメリカという国は、もっとオープンなのだと思っていた。もっともストーリーは30年以上前だから…とも思うが、やはり受け入れる器は大して変わらないんだろうな。これが日本だったら現代でも同じように偏見に満ちた展開になるような気がする。

おねえタレントがテレビの中にいるのが当たり前になり、いかにも世間に溶け込んでいるようにも見えるけれども、実際にこの人たちが社会活動に乗り出したら色々と非難の声が挙がりそう。テレビの中にいるのと実際に隣にいるのとは違う。

BLの漫画やアニメが充分受け入れられていても、実際に隣に腹が出た中年のゲイカップルが住んでいたらきっと引く。

裁判の検事にイライラムカムカしながら、これ、実際に身近な出来事だったら自分はどう評するだろうと考えた。ゲイのカップルが15歳にもなるダウン症の少年を引き取る…。好奇の目で見ないという自信はない。

自分の「常識」に居ない人を受け入れる難しさがそこにある。人を愛する気持ちに性別なんて無関係なのにね。

ルディはマルコを見つけた。
マイノリティの中にいる自分と同じ孤独を見つけた。
マルコもルディとポールとの暮らしの中に「家族」を見つけた。

ぶち壊すのは、いつも理不尽な力なんだ。

ルディの笑顔が優しくて、父というよりも母性に溢れていて。それを受けるマルコの純真な笑顔に癒され泣かされた。97分という限られた時間の中のほんの一部にすぎない疑似家族の幸せな風景に和んだ。
   チョコレートドーナツ.png

“I Shall Be Released.”「私たちは必ず解き放たれる」

ANY DAY NOW …の叫びが聞こえる気がする。

邦題は「チョコレートドーナツ」だが、実は劇中ではそれほど何度も出てくるわけではない。
なぜ「チョコレートドーナツ」なのか。

「チョコレートドーナツは健康に良くない」とルディは何度か言っている。

害するもの…よくない物とはマイノリティであるルディたちなのか。真実を見ようとせず偏見と卓上の法律で物事を捉える人々なのか。

ドーナツの穴から零れ落ちる真実。
実話ベースのこの物語から35年。世界は少しは変わったか

 


以下ネタバレ感想

 

 

検事の言葉を聞きながら、ああそうか「世間」はそういう風に考えるのか…と思った。ゲイカップルが障害児を預かったら性的ないたずらをするのだろうと。

現代なら本当にそれはあり得そう。そんな風に考えてしまうほど世の中は荒んでいる。

「差別」と「偏見」と「現実」。
ゲイバーの中にいるルディにとっては、ある程度は逃げが通じるものだったに違いない。しかし、子どもが出来たとなったら別だ。子どものためにルディはそれらと闘うことになる。

普通の子と違う事も、母親が麻薬常習者である事もあの子が望んだ事じゃない。

マルコの笑顔を守る。ただそれだけのために闘ったのに正義は無かった。真実は偏見と差別に負ける。

「たった1人誤った人間の耳に入れば窮地に立たされる」

学校の先生が、公平で良い人だったね。
ああいう目で見てくれる人ばかりだったらマルコは死なずに済んだかもしれないのに。

麻薬常習から仮釈放の身になった母親に無理やり返されたマルコ。
「法律」は、愛に溢れるゲイカップルよりも、クズな母親の方を選択した。

マルコの死後、ポールが打った手紙を読んで、弁護士や判事はどう感じたのだろうか。少しでも反省したり同情したりしただろうか。

それをハッキリと知る事は出来ず物語は終わる。

3人で暮らした温かい思い出は全て過去になったラスト。
ルディとポールがその後、どう生きて行ったのかも分からない。
けれども、きっと闘い続けたと信じたい。マルコのために。マルコのような子どもたちのために。

「チョコレートドーナツ」公式サイト


チョコレートドーナツ@映画生活トラックバック
・象のロケット

★前田有一の超映画批評★

※ Seesaaのトラックバック機能終了に伴い、トラックバックの受け付けは終了させていただきました。(今後のTBについて)

TB:http://blog.seesaa.jp/tb/410422477

comment

タイトルとURLをコピーしました