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『繕い裁つ人』洋裁師の心意気

繕い裁つ人

  繕い裁つ人.png

監督: 三島有紀子   
キャスト: 中谷美紀、三浦貴大、片桐はいり、黒木華、杉咲花、永野芽郁、小野花梨、奥野匡、立石涼子、堺幸子、森本アリ、中尾ミエ、伊武雅刀、余貴美子

公開: 2015年1月31日

2015年1月20日。劇場観賞(試写会)

原作は池辺葵氏によるコミック。未読。

優しくて、どこか懐かしくて温かい情景、拘りのある可愛いセット、素敵な色合いのドレス、美味しそうなお菓子…。入り込みたくなるファンタジックな映像美。

朝ドラ『カーネーション』を見ていたファンにとってはたまらない世界観でもある。思い出すよ、あの足踏みミシン。

けれども…
ストーリーには、あの盛り上がりはないのね…。

あらすじ
市江(中谷美紀)は祖母が始めた洋裁店を継ぎ、町の仕立て屋の2代目店主として日々年季の入ったミシンの前に座っている。彼女が職人技を駆使して丁寧に仕立てる洋服は、依頼人たちを喜ばせていた。職人気質の市江はブランド化の依頼にも目もくれず、その服に袖を通すたった一人のためだけのオーダーメイド服を縫うだけで幸せだったが……。(シネマトゥデイより引用)

町の人たちから愛された洋裁店の二代目店主。
訪れた人々の大切な思い出の服を繕っていく…。

というストーリーだとは事前情報で聞いていたので、お客さん達の人生を紡ぐ『阪急電車』的なお話なのだと予想していた。

けれども、それとはちょっと違った。

洋裁師・市江さん自身の葛藤が全面に出た作り。

古き善き物を大切に繋ぐ話は好きだ。
日本人は昨今、文化や伝統をないがしろにしがちだから。

しかし、洋服にはその時代時代の型がある。
祖母が作った物を繋ぐだけではなく、自分自身の服を作ってほしいと市江に願う洋服マニアの藤井。

レトロな洋裁店と洋服と共にゆったりした時間が流れるイイ映画…のはずなのだが、ストーリーに時々ツッコミを入れたくなる部分が多くて…。

いや、ファンタジーなのだから…と、思おうとすると急に現実的になったり。

結果、あまり感動することなく終わってしまったのだった。

仕立て屋の二代目店主を演じる中谷さんはさすがの演技で「作られた」感はなく、そこは素晴らしかった。

服を作る描写も仕立てあがった洋服の美しさも美味しそうな団子やケーキも、見ていてウットリできるものだった。

変にストーリーがない方が良かった気がしてしまう。
でも、それじゃ映画にならないか。

古き善きものを守る事と、現在もまた未来に繋がる時間なのだというメッセージは伝わった。

 

ここから下ネタバレ観てない方は観てから読んでね 

    


この町でずっと愛される「南洋裁店」をやっているはずなのに、ストーリーが始まってから町のおばさんが「結婚した時にダンナさんに貰った服」について語り出したりとか……。ぇ、「今まで」は無いのという違和感。

今までずっとこの町でやってきたはずなのに映画が始まってからこの町に出来たかのような説明臭いエピソードは興を削ぐ。

藤井さんも、もう何回かここに来ているらしいのに何だか初めて来た人みたい。いっそ、初めて訪れた事にしちゃったほうが良かったんじゃないだろうかと思ってしまった。

百貨店の営業マン、こんなにノンビリしていていいのか…とツッコみつつ、ファンタジーなのだからと自分に言い聞かせて観る…。

夜会の映像はそのファンタジーの骨頂で、見ているだけでちょっと幸せな気持ちになれたのに…どうしてあのJKたちを乱入させるんだろ。

影から変身した親たちをウットリ見つめるだけじゃダメなのか

こういう感じで、入り込んでは気持ちを中断されて白ける…を繰り返すシーンがいっぱいあって…。だから何だかもったいない。

「物」への思いやりはすごく感じ取れたけれども人間物語は薄かった。

せっかくの映像力が色々ともったいない。
そう思うと、ちょっと残念。

「繕い裁つ人」公式サイト

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・象のロケット

★前田有一の超映画批評★

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奈可久う子(くう)

◆ドラマ・映画 エンタメ系ライター&ブロガー。◆ハウツーサイトやリクルート・キュレーションサイトなどで映画紹介のライターしておりました。(お仕事はいつでも有り難くお受けします)

◆映画の評点はあくまでも私感です。(平均が2.5で1と5は滅多に付けていません)

◆戦争とホロコーストテーマの作品観賞がライフワーク。

◆レビューは上半部はネタバレなし感想、下部は観了した方と感想を共有できるように書いています。(古い記事は簡単感想です。時間のある時にリライトしています)

◆姉妹ブログ「ドラマ@見とり八段」

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