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『平成狸合戦ぽんぽこ』まこと生きにくい世の中

平成狸合戦ぽんぽこ

作品情報

監督・キャスト

監督: 高畑勲
出演: 3代目古今亭志ん朝、野々村真、石田ゆり子、柳家小さん、清川虹子、泉谷しげる、三木のり平、林家こぶ平、村田雄浩、神谷明、林原めぐみ、3代目桂米朝、5代目桂文枝、芦屋雁之助、山下容莉枝、黒田由美、水原リン、加藤治、福澤朗、藤本譲、北村弘一

日本公開日

公開: 1994年7月16日

レビュー

☆☆☆☆☆

1994年7月。劇場観賞。

この記事はテレビ放映視聴後の思い起こし記事です。短感なのでネタバレを含みます。後ほど追記する可能性はあります。

『風立ちぬ』からの、ここ…である。

というか…日本テレビが『風立ちぬ』宣伝のために金曜ロードショーでジブリ特集やっているから。

 

2013年7月12日。久々に見た。当然、公開当時に劇場で見ています。
古い映画で、「見た」記録を残したいだけなので簡単感想で。

 

『ナウシカ』『ラピュタ』と比べてあまりテレビ放映してくれないから、懐かしい…。

今から見れば当然映像はちょっと古いけれども、この作品の場合は浄瑠璃や古典落語のような味わいがベースなのでかえってそれが合っていたりする。

高度経済成長期の日本で、タヌキさんたちの住家であった多摩丘陵を開拓してニュータウンを作り始めた人間と、住家を守りたいタヌキさんたちの争いのお話。

 

もっとも、争いだの戦争だのと言っても、そう思っているのは狸さんたちだけで、人間は「何だか奇妙な事が起きている」程度にしか思っていない。土地開発はどんどん進み、狸さん達の住む場所は無くなっていく。

主人公はタヌキさんたちであり、喋ったり化け学の勉強をしたり、旅に出たり戦ったり…笑ったり泣いたりボケたりするファンタジーだが、決して「カワイイ」話ではない。タヌキさんがやらかす数々の作戦の結果は、むしろ恐い。

タヌキさんも人間を殺すし…人間もタヌキさんを殺すので…しかも、それが表向きユーモラスに描かれたりしているので限りなくブラックなファンタジーなのである。

けれども、一番怖いのは、

タヌキさんたちは「戦争」のつもりで人間と戦っている。

しかし人間は、

害獣を駆除しているだけ。

と、いうことである。

 

同じようにお互いに害を与えているのに、この噛みあわなさ…。

 

もちろん、この作品の大きなテーマは「自然破壊と保護」「自然や動物との共存」だろう。それは見れば一目瞭然で解る事だ。

 

でも、それだけではないんだ。

相容れない物を理解しようとせず削除しようとする人間のサガ…。その恐ろしさも訴えている作品だと思う。

 

派閥だったり虐めだったり…人間が様々な形で行っている異人種への迫害。

まことに生きにくい世の中で生きて行かなければならないのはタヌキさんたちだけではない。

しかも、多くの人は、それに気づいていない。
尻尾を隠して一生懸命生きている人たちの存在に、気付いてあげてくださいよ…。

そんな風に聞こえるんだ。タヌキさんたちの声が。

 

内容があまりにもブラックだからかジブリの黒歴史、などという話も聞いたけれども、たくさんのメッセージが込められている名作だよ。

妖怪大作戦も最後の行列も、当時は3Dでも何でもないのに飛び出すかのように見える迫力だった。

 

野々村真さんが主演の正吉の声を当てていて、決して上手くはないけれども、すごく味わいのあるとぼけた正義感のタヌキさんになっていたのが印象的。

私にとっては、ジブリ6本の指に入る作品だ。
(って、なんで6本 だって5本じゃ足らないから。 6本の中に高畑作品が2本入る。「火垂る」とこれ。)

 

自然との共存や戦争反対など、思想的、反戦主義的、綺麗ごと……と、よく言われるジブリ作品。

それって、いけない事なのかな。
だって、ファンタジーが綺麗ごとを伝えなければ何が子どもの心に訴えるだろう。

誰だって、本音は争いや迫害や悲しい事なんて何もない平和で穏やかな世界でみんな仲良く暮らしたいじゃないか。

それを訴える。色んな世代に訴える。
そんな綺麗ごとは必要なのではないだろうか。

 

人間どもは狸だったんだ!
狸の風上にも置けない古狸だったんだ!
山を返せ里を返せ野を返せ!

正吉のこの叫びが、タヌキさん以外の生き物の口から…人間の口から出なくてもいい世界を作るために。

 

エンディングのテーマ曲、『いつでも誰かが』は人間に勝利できなかったタヌキさん達の悲しい結末の切なさを引きずって名曲。

 

いい映画は、何年経って見ても良い映画。
 

平成最後の『平成たぬき合戦』

2019年4月5日追記。平成最後の『平成たぬき合戦』放映。高畑監督一周忌。

エンディングまでガッチリ放映してくれた。ありがたき。

平成最後になっても、生きづらい世の中は健在。たぬきさんは世界のあちこちで奮闘している。


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・象のロケット

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