トム・アット・ザ・ファーム
~TOM A LA FERME~
監督: グザヴィエ・ドラン
キャスト: グザヴィエ・ドランピエール=イヴ・カルディナルリズ・ロワエヴリーヌ・ブロシュマニュエル・タドロスジャック・ラヴァレアン・キャロンオリヴィエ・モラン
公開: 2014年10月25日
2015年7月3日。劇場観賞
たぶん、この映画を見てこんな感想を書く人は他にいないと思うから……あまり気にしないでください。
自分はこの映画に解説も丁寧な説明も批評も要らない。そもそもこれを見たいと思った理由がカバー写真のビジュアルだったんだもの。もちろん、イケメンだからとか…そういう事だけではなくて。あの表情。
イーヴだよ。これは…切ない。
◆あらすじ
恋人のギョームがこの世を去り、葬儀に参列するために、彼の田舎に足を運んだトム(グザヴィエ・ドラン)。しかし、ギョームの母はトムのことを知らず、一方ギョームの兄フランシス(ピエール=イヴ・カルディナル)はトムとギョームの関係を他言しないようにと強く言い聞かされる。フランシスに脅されるうちに、トムはフランシスに死んだ恋人の姿を重ね合わせるようになり……。(シネマトゥデイより引用)
何言ってるんだろうと思う方がほとんどだろうから一応説明しておきますと、2015年7月現在公開中の『海街diary』原作者・吉田秋生先生の代表作『カリフォルニア物語』の話である。
別にこの映画の舞台はカリフォルニアでもニューヨークでもないし、ましてやアメリカですらないし、これはイーヴではないし、イーヴはこんな子じゃない…。
けれども、本編を見たらますます思ってしまった。もしもヒースが先に死んでしまっていたら、イーヴはこんなだっただろうなと。
恋人の母に認めて貰えていないことはあきらめる。あきらめるけれども、どこかで知っておいてほしい自分もいる。ギョームを愛していた人と喪失を分かち合いたい。だから面影を求めて走ってしまう。
何をやっても戻ってこないのに…。
絶望感と狂おしいほどの愛と嫉妬。
しかし、この映画はサスペンスなのである。…そう解説されている(笑)サスペンスとしては、ちょっと滑稽に映る。いや、出来が悪いという意味では無くて、愛と思い込みは滑稽だということ。
ラスト、フランシスが着ていたジャケットの文字とね…トムが聴いている曲の内容含め。スタンドにいた、あの男の後ろ姿含め。
愛は思い通りにならないものである。
だから、やっぱり私はこの映画の中に切なさと滑稽を見る。
ここから下ネタバレ↓観てない方は観てから読んでね
フランシスにあんなに暴力を振るわれて、どうしてトムは母に真実を暴露しないのだろうとか、何とかして逃げ出さないのだろうとか…最初の内はDVの餌食になってしまって精神的に逃げ出せなくなっているのかと思っていた。
けれども、そうじゃないんだよね。暴力が恐くて去らないのではなく、ギョームの影をフランシスの中に見つけたから。失くした人の面影を求めたから。
たぶん、それはフランシスの方も同じだったのだと思う。そう考えるとフランシスはギョームにも暴力をふるっていたのかもしれない。それが愛の形だったのかも知れない。
写真に横顔しか出てこないギョームとは一体どういう男だったのか。どんな姿形でどんな性格で、どんな風にトムと愛し合い、どんな風に死んだのか。考えると切なかった。
そういう思いが全部醒めて現実が見えたのはサラが現れてから。
サラが出てくる前までは、この作品の登場人物は共依存のような夢の中にいるんだよね。しかし、サラが現実を連れてくる。
アガッタは、亡くなった可愛い息子が何だかおかしかったのではないかと気づく。フランシスは自分の暴力が通用しない人間がいることに気づく。トムは…
トムはもっとたくさんの事に気づかされるのだった。自分が今居る環境の異常性。何よりも、自分だけの恋人だと思っていたギョームにたくさん恋人がいた事。そして、ここに居たら身が危ないこと。
フランシスが着ていた「USA」のバックロゴが入ったジャケットと「~♪~アメリカにはうんざりだ」。
モヤモヤした表情でラストを迎えるトムを見ていたら、やっぱり滑稽だと思う。
で、私もサラが現れてからはイーヴとトムを重ねていた自分からパタッと目が醒めた。そういう自分も滑稽に思えたので…見終わってちょっと笑った。面白かったわ。
結果、似ていたのはビジュアルだけだったな…。
|
【お買い物マラソンで使える・最大500円クーポン配布中!】グザヴィエ・ドラン/トム・アット… |
・トム・アット・ザ・ファーム@映画生活トラックバック
・象のロケット
TB:http://blog.seesaa.jp/tb/421923388
comment