ミッドサマー
原題 : ~ Midsommar ~
作品情報
監督・キャスト
監督: アリ・アスター
キャスト: フローレンス・ピュー、ジャック・レイナー、ウィル・ポールター、ウィリアム・ジャクソン・ハーパー、ウィルヘルム・ブロングレン、ジュリア・ラグナースソン、アーチー・マデクウェ、エローラ・トルキア
日本公開日
公開: 2020年02月21日
レビュー
☆☆☆☆
劇場観賞: 2020年3月2日
非常に明るくて自然が美しい映像で、家族のように暮らしている村の温かさを満喫できます。私もぜひぜひホルガ村に旅行して踊りたくなりました~~♥
……って、んなわけないじゃんーー!
どうしてこんなに明るくこんな恐ろしい事が出来るんだ。劇伴と声が怖すぎ!
緊急時に頼りになる人、ならない人、絶望の中で寄り添ってくれる存在の頼もしさ、一体どちらが悪なのか、姥捨てよりも輪廻、習わし、幻想、秩序…混乱の中で迎えるラストの余韻に浸る。
幸せとは?
あらすじ
家族を不慮の事故で失ったダニー(フローレンス・ピュー)は、大学で民俗学を研究する恋人や友人と5人でスウェーデンの奥地で開かれる“90年に一度の祝祭”を訪れる。美しい花々が咲き乱れ、太陽が沈まないその村は、優しい住人が陽気に歌い踊る楽園のように思えた。しかし、次第に不穏な空気が漂い始め、ダニーの心はかき乱されていく。妄想、トラウマ、不安、恐怖……それは想像を絶する悪夢の始まりだった…(Filmarksより引用)
さあ祝祭へ
なぜこの季節にSOMMARなんだよ……と思いながら観に行ったわけだが、物語の序盤は暖冬だった2020年の日本の冬よりも寒そうである。何よりもヒロインの心の中が寒い。
冒頭、ダニーは家族を亡くしてワァワァ泣きわめいている。それを支える……というよりも困惑している感じの恋人、クリスチャン。ダニーの精神不安定っぷりが、ちょっとしつこいので、初めはクリスチャンに同情する部分もあったのだけれど……。
とにかく大学の仲間5人は、仲間内で最も優しくて、ちょっとダニーに気がありそうなペレの故郷であるスウェーデンのホルガ村へ旅立つ。
ここからは、もう、どんなに楽しくても楽しくなくても、季節は夏で、白夜なので太陽はずっとまぶしくて、明るくて……明るくて。眠れない夏至の祭りが始まる。
怖い絵画展を見るように観る
ホルガ村へ入る前、ホルガ村へ入った後、事が色々起きるまでは割と長い。
長いけれども、そこには「後々こうなるのか」という様々な仕掛け……ネタバレになるからある程度しか書かないけれど、例えばタペストリーとか。例えば人の動きとか。色々とあるので、そういうものをジックリ味わうといいと思います。
個人的には、もう一回劇場で見たいし、リピートしたらホルガへ入ったばかりのシーンこそジックリと見直したい。
画面の明るさや美しさや人の笑顔に、なぜかホッコリできない違和感だらけの空間。
『ヘレディタリー 継承』のアリ・アスター
監督は『へレディタリー 継承』のアリ・アスター。
『ミッドサマー』にも「継承」されている部分は多い。
「妹」「薬」「風習」「血筋」「カルト」「捧げる」……そして「祭り」。
監督は「妹」が嫌いなのかしら。……それでも、きっと「家族」を愛しているのだと思う。呪わしいほどうっとおしいほど離れ難い家族。彼氏ではなく学友でもなく、心から悲しみの叫びを共有してくれる存在。
僕は脚本を書き、映画を作ることで、自分の中にある脅迫観念に蓋をしてきた。でもただ1つだけ克服できないものがあって……それがどうも、“家族”なんだよね。
『ミッドサマー』アリ・アスター監督インタビュー#midsommer#ミッドサマーhttps://t.co/SigtYekPAt
— CINEMORE (@cinemorejp) February 21, 2020
読んだら気が狂う奇書っぽい
『へレディタリー』も『ミッドサマー』も、「読んだら気が狂う」本と同じ趣がある。
入り込んで考えれば考えるほど精神に悪そう(笑)
とはいえ、私は思ったのだ。
『へレディタリー』の時もそうだったけれど、やつらはいつも薬をやっている。全ては夢なのではないかと。
観た人限定 完全解析ページ
しかし、そんな私の夢を打ち砕くくらい、本作は完璧な計算の元で成り立っているのだった。
完璧な呪いである。
公式サイトには「観た人限定 完全解析ページ」なるネタバレページがあって、そこには、ものすごく詳細に全ての呪いについての解説があるのだった。
すごいぞ、アリ・アスター。
ギャーギャー叫ぶ系ホラーではなくて、ジワジワ思い出す系なので、これから観る方は覚悟して。
以下ネタバレ感想
クリスチャンが、いくらクズっぽいと言っても、あの集団強制種馬シーンは、嫉妬も起こす気にならなくない……(笑)?
私ゃ、クリスチャンが気の毒になったわ。
とはいえ、聖なる樹に立ちションして詫びれることもないマーク、聖なる書の写真撮りまくりのジョシュはやられても仕方ない……みんな、ホルガを傷つける者。
無法者。郷に入りて郷に従わない者。女を傷つける者。逃げ出す者。それらが生贄に差し出された。
種馬儀式も燃えるクマちゃんもタペストリー通り。
クリスチャンの種馬儀式を見て過呼吸起こすダニーにみんなで寄り添い、
あーーーあーーーーあーーーーあーーーーー……を合唱しながら泣く。
このシーンで、ああ、こりゃ、落ちるわ。と思った。
彼氏という他人よりも、叫びまで共有してくれる家族。
ラストの笑顔は、まさに、それを得た人の物だった。
やっぱり、監督、家族大好きだね。
☀️☀️☀️☀️☀️☀️☀️☀️☀️☀️☀️☀️☀️☀️☀️☀️☀️☀️🍄☀️☀️☀️☀️☀️☀️☀️☀️☀️☀️☀️☀️☀️☀️☀️☀️☀️映画監督 園子温さん☀️☀️☀️☀️ ☀️☀️☀️☀️☀️☀️☀️☀️☀️☀️☀️☀️☀️☀️☀️☀️☀️🔪☀️☀️#ミッドサマー☀️☀️☀️☀️☀️☀️☀️https://t.co/cYp0DRICNG
— 『ミッドサマー』公式🌻💐☀️ (@midsommarjp) February 24, 2020
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