龍三と七人の子分たち
監督: 北野武
キャスト: 藤竜也、近藤正臣、中尾彬、品川徹、樋浦勉、伊藤幸純、吉澤健、小野寺昭、安田顕、矢島健一、下條アトム、山崎樹範、川口力哉、辰巳琢郎、勝村政信、萬田久子、ビートたけし
公開: 2015年4月25日
2015年5月4日。劇場観賞
「昔は良かった」って話である。そう思うのは任侠の世界に居た方々も同じらしい。昔は 世の中はもっと単純簡単だった。悪は悪、解りやすかった。
狂っているのはどっちなのか。
あらすじ
組長を引退したものの、ヤクザの性分が消えないために普通の老人として生きていけない龍三(藤竜也)。そんな毎日にいら立ちを募らせる中、彼はオレオレ詐欺にだまされてしまう。人々をだます若い連中を許すわけにいかないと、龍三はかつての子分たちを召集して世直しをすることに。年齢に関係なくまだまだいけるとオレオレ詐欺のグループを倒しに向かう彼らだが、行く先々でとんでもない騒動を引き起こしていく。(シネマトゥデイより引用)
ゆる~い『アウトレイジ』のなれの果て…。 あそこで「このやろばかやろ!」と怒鳴っていた人たちも、いずれはこんな風になるのかしら。
予告を見た限りでは完全なコメディだったが本編はもっとズッシり重いんでしょ……と、思っていたけれども想定外に本当にゆるかった。
まぁま、それでイイと思うんだ。だって、みんなそれなりの人生の重みを背負って来て引退した人たちなんだもの。ここから先は好き勝手に生きようよ。
…しかし、現実は厳しい。組に仁義を尽くして生きて来たじいさんたちは家族からは疎まれ、あるいは逃げられ、身体を壊して、迷惑かけてきた「世間」の世話になって小さく生きている。
もう一花咲かせるために…じいさんたちは立ち上がる!!
…と言っても別に正義の味方になるわけじゃないし、説教くさい話になるわけでもなく。
好き勝手に動き回るじいさんたちの動向を笑いながら見る。世間の流れについて行ききれなくて、現役の頃とは「悪党」の定義さえ変わっていて。戸惑うじいさんたちの思考錯誤っぷりがキュート。♥
学生のいわゆる「不良」もそうだ。ひと昔(以上な…)前の不良はスカートを長々と引きずっていた。髪はカーリーヘア。ボンタンにリーゼント。解りやすかった。今はみんながスカートを短くして普通のメイクをして普通に可愛くやっている。普通の格好で行う恐喝、売春、薬…表からは解りにくい。
ヤクザの世界もそうらしい。「組」など名乗らずに表向きは普通に会社経営をしている。やっていることは詐欺、恐喝、暴力…昔とそう変わらない。
じいさんたちは解りにくい現代の裏社会を世間に曝して見せたんだね。
悪い事は悪い顔をして行い、見つかったら捕まる。
そんな単純な時代に帰りたいよね。そこは確かに共感する。
主要キャストの平均年齢は72歳だというこの作品。じいさんたちの役者さんは任侠映画で慣らした方も多く、本当に引退してここで返り咲いたみたいだった。『アウトレイジ』な富田が弟分・茂吉なんだから笑っちゃう。
現代の「悪」京浜連合の頭を演じたヤスケンのクズっぷりも良かったわ。
映画監督・北野武としてだけではなく、漫才作家・ビートたけしとしての技も楽しめる作品。
ここから下ネタバレ↓観てない方は観てから読んでね
「次は俺が組長だからな」「バカヤロー!ムショから出られるときは、俺らとっくに死んでるよ!!」
あのラストのワンシーンが何とも言えずに好きだわ~!!
もう死んじゃって帰ってこない茂吉。遺体を楯にした乱闘シーンに笑っちゃ不謹慎だが、もう死んでるもん。そしてこの人たちももう余生だもん。ゴメンね、と思いながら笑ったわ。
年寄りを邪魔にしたり騙したりが当たり前のこの世界。仁義もない尊敬もない思いやりもない…じゃあ、暴れちゃえっていう爽快感と背中合わせの哀愁。
それでもさ、病院の先生は心配してくれていたし、孫も待っていてくれるじゃないか。
長生きしてまた戻ってくればいいわ。日本人の寿命は延びてるしな~!
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comment
Nakajiさん
そう、楽しかったですねーー^^
楽しいって言ってもいいのかどうか解らないくらい不謹慎な笑いだなってシーンも多かったけれども老いの哀愁と共に心に残りましたわ。
年取ったらたぶん何でも笑ってナンボですよね!^^
こんにちは。
大爆笑までいかなかったけど、楽しかったです。
たぶん仁義もない尊敬もない思いやりもない世の中で暴れる姿が楽しくも見えたんだろうな~って思います。
私も伊坂幸太郎×中村義洋の映画大好きです!
Agehaさん
「Dolls」は個人的には映像美しいけど内容がタルい~感じで^^;「アウトレイジ」みたいに目が離せない方が好きかも。
何にせよ、北野映画って痛いイメージ先行な気がします。
>伊坂幸太郎×中村義洋の映画
わたしもわたしも!!そこは大好物!
精神的にズーーンと来て、でも温かくて痛々しいけど優しくて…っていうのは中村監督作品の特徴ですよね~。
あ、でも、この作品はほんの少しそういう部分は近いものがあるかもです。北野作品には珍しく。
じいさんたちの哀愁にその片鱗を見た気がします~^^
もう内容は覚えていないのですが、じつは見た映画というと「DOLLS」くらいなんですよ。「アウトレイジ」はたまたまダーリンが見てたのを横からチラ見していた程度で。
座頭市みたいな作品もあるんだろうけど、基本バイオレンスか誰かが死ぬ作品だからという偏見でもって実際北野武作品てほとんど知らない。でもやっぱり自分には合わなかったかな~と。
単純にクライムコメディというと
伊坂幸太郎×中村義洋の映画が好きなんで
それをたけしに求めるのはそもそも違うしね。
コントとして狙って作ってる部分よりも
藤竜也さんの必死なとこが笑いにつながってる、その点ではとても楽しめました。
・・・ってかそこまでしてくれてええんですかという・・・。(;´∀`)
BROOKさん
そう~大爆笑までは行かないんですよね~でも楽しかったです^^
(ジュウシマツとか不謹慎な所で結構笑っちゃった^^;)
ラストは私はグダグダ引きずるのが好きじゃないので、アレがいいです!
あのシーンでパタッと止まって龍三さんの笑顔を思い出せるのがいいです^^
決してつまらなくはないのだけれど…
イマイチ笑いに乗れない自分がいました。
それでも、ところどころはクスッと♪
とりあえず、北野作品は「座頭市」以来だったりします。
あのラストはスパッと終わらせるのも良かったのですが、
後日談も知りたかったような気がします。