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『マルティニークからの祈り』パスポートもない平凡なおばさん

マルティニークからの祈り

~ 집으로 가는 길 / Way Back Home ~ 

 

     

監督: パン・ウンジン   
キャスト: チョン・ドヨン、コ・ス、カン・ジウ、 ペ・ソンウ、コリンヌ・マシエロ、クラウデット・ラリ、キム・スー・ハイエオン
公開: 2014年8月29日

2014年4月20日 DVD観賞

平凡な主婦が知らない内に麻薬の運び屋として利用され、逮捕されて、言葉も解らない地で2年間も勾留されるという実話を元にしたストーリー。

理不尽な世界に突然叩きこまれて為すすべもない夫婦を救ったもの。

 

【あらすじ】
2004年10月、経済的に困窮する家族を救うためある荷物をフランスへ運んだ韓国人主婦ジョンヨン(チョン・ドヨン)は、オルリー空港で突然逮捕される。夫の友人から金の原石と聞かされていた荷物の正体は、何と麻薬だった。言葉も通じない異国の地でろくに弁解もできないまま、彼女は祖国から1万2,400キロも離れたマルティニークの刑務所に送られ……。(シネマトゥデイより引用) 

 

「騙される」だけの下地はあったわけで「無知は罪なり」という話でもあるが、犯罪者と決めつけられた人間に対する世間の冷たさ、領事官のあまりの対応の酷さと仕事のいい加減さに辟易とし、主人公とダメンズ旦那をついつい応援してしまう。

 

理不尽な目に遭って叩きこまれた場所には必ずのようにますます理不尽な現実が待っている。という事で、ひたすら辛い。

自分がなぜ拘束されているのか解らない。何処にいるのか解らない。何処に連れて行かれるのか解らない。何をされるのか解らない。何より…

何を言われているのかが解らない。

真実が伝わらないジレンマ。

 

そして、言葉の壁以上に偏見という壁は崩れ難い。「こいつがやったんだろう」という目でみんなが自分を見ている。誰も信用してくれない。人種も違う。

出てくる白人や黒人に比べてチョン・ドヨンが本当に小さく頼りなく見えた。運命に嘆くしかない「普通のおばさん」。終始不安そうなキャラクター作りが素晴らしい。

 

日本でも「メルボルン事件」という無実の人が拘束される事件がかつてあった。これもちゃんとした通訳が捜査の段階で居てくれなかった事と外務省がきちんと動かなかった事が被害者を作りだしているんだよね。

メルボルン事件 – Wikipedia

 

国民を守る仕事をしている方々はまず人の話をちゃんと聞いて誠実な対応をしてくださいねって話…。

そして、どんな事になってもあきらめない心を持ち続ける勇気が「普通のおばさん」にも必要だということ。それが一番大切なこと。

 

ここから下ネタバレ観てない方は観てから読んでね 

    


 

アメリカ先住民が雨乞いすると必ず雨が降るのは、降るまでするからだ。

必死に。がむしゃらに。

検察や領事なんかよりも、ヤクザの方がよほど心に響く事を言ってくれる。こうやって、どんな悲惨な状況の中でも手を差し伸べてくれる人、声をかけてくれる人はいるもんだ。

 

こうなってしまった切っ掛けは、ダメンズ夫がちゃんと見もしないで保証人になったこと、危ない仕事だと解りそうなものなのに誰にも言わずにジョンヨンがパリに飛んだこと。

考え無しの平凡な男。パスポートも無かった平凡なおばさん。「金の原石」を運ぶ仕事は、いつの間にか「コカイン」の運び人に変わっていた。

そこは、もう自業自得だ。けれども伝わらない。「麻薬なんか運んでいない」こんな単純な真実が伝わらない。

 

ここから先は本当に運の悪さよね…。

たまたま領事と領事館の人間がいい加減だった。いい加減過ぎた。

証拠の裁判記録がどんどん他の書類に埋まっていってシュレッダーにかけられるシーンでは、うわぁぁぁ!!と言ってしまったわ。酷すぎる。

もっと親身になって仕事してくれる人が領事館に居たら、もっと早く国へ帰れたよね。

やはり…朝、クモを踏んだ。

あれが不運の始まりか。

 

結婚10周年の旅行で行きたいと夢見ていたカリブ海を手錠が掛けられた姿で1人で見る。ボロボロの姿で。

切ない。

 

「韓国大使館が悪い。責任感がありません。」

報道の人がそう言ってくれた時、初めてホッとした。当たり前のそんな事を「犯罪者夫婦」に言ってくれる人がいなかったから。

マスコミやネットは悪い方向に描かれる話が多いけれども、そうこれだよね真実を拡散するのもまた報道とネットの力だ。

 

  

 


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・象のロケット

★前田有一の超映画批評★

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