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『星ガ丘ワンダーランド』ドームの中の観覧車

星ガ丘ワンダーランド

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監督: 柳沢翔
キャスト: 中村倫也、新井浩文、佐々木希、菅田将暉、高橋曽良、佐藤優太郎、篠川桃音、寺十吾、 今村ねずみ、嶋田久作、杏、武発史郎、大塚洋、猫田直、天現寺竜、佐藤祐一、西尾景子、浦上雄次、市原隼人、升水柚希、横山歩、平田敬士 大原由暉、福本晟也、横山芽生、木村佳乃、松重豊
公開: 2016年3月5日 観賞: 2016年3月23日

 

「だいじょうぶ。だいじょうぶ。」

 

大丈夫じゃないからこうなったんだよ…と、思いつつ…。

 

真っ白い雪の中に消えていく赤いコートの人を考える。家族じゃなくても、母は母。

きれい。綺麗な映画。

◆あらすじ
温人(中村倫也)が勤務する星ガ丘駅落とし物預かり所には、落とし物を捜す人々が次々にやって来る。彼は持ち主の顔や、どのようにして落とし物がここに届けられたのかといったことを想像する日々を送っていた。ある日、20年前に自分を捨てた母が自ら命を断ったことを知り、自身も知らなかった過去が判明し……。(シネマトゥデイより引用)

 

予告編を見る限りでは「サスペンス」だという事だったので、誰が犯人なんだとかそういう映画なのだと思っていた。

けれども、最終的には過去から現在に至るまで心に降り積もった澱を探り出す話だった。主人公が、こんがらがった過去を紐解いていく話。そこに母がいる。

 

説明が少ない映画で、その分想像力は働く。
温人はなぜここで働いているのだろうか。待つために

 

どんな親だって、子どもはただひたすらに頼り、慕う。

時々差し挟まれる子供時代の映像と現代のリンクに胸が痛む。郷愁感呼び起こす映像。

役者さんたちの空気感がまた美しい映像にピッタリで。切なくて。でも、優しくて。

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何よりも、ずっと注目してきた中村倫也くんのホワッとした中に尖った芯を抱えたような佇まいが最大限に生かされた作品だと思った。

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その「尖った芯」が、徐々に溶けていくように見えるクライマックスで涙が溢れた。

柳沢翔監督は長編映画初だそうで。プロデューサーさんは岩井俊二作品も多く手掛けた方。納得の雰囲気。

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寂れて閉園したワンダーランドというテーマも懐かしさと切なさを誘ったな。

 

うちの実家の方にも潰れてしまった大きな遊園地がある。

子供の頃は年に何回かそこへ連れて行ってもらうのが大きなイベントで。その頃はいつもお客で満杯で、楽しくて幸せで家族の大切な思い出の場所だった。

どうして無くなってしまうんだろうな。無理やり大人にされたようなやり切れない寂しさ。

 

そうやって家族は解体されていく。それでも思い出だけは残るのだ。良くも、悪くも。

 

ここから下ネタバレ観てない方は観てから読んでね

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この母、ものすごく幸せだと思うのだった。

 

夫には愛されていた。去って行ったら「大嫌い」と言われるほど好かれている息子がいた。去ってなお思い出の中に生かされ続ける息子がいた。

「この人をお母さんに…」と望む継娘がいた。遺体に抱きついて号泣する末っ子。

 

みんなが「お母さんの一番大切な子ども」になりたい。
そう望まれる母でありながら、みんなを捨ててこの世から去っていく。

 

「自分の事ばっかりだ!」

 

兄は犯人ではなかった。金もせびっていなかったらしい。

 

母が最期に口にした子供の名前は「温人」。

 

あの時、自分が見ていなかったせいで階段から温人が落ちた事を、母はずっと悔いていたんだね。

 

幼い兄が言う。「だいじょうぶ。だいじょうぶ。」

この兄だって、ずっと母の愛を求めて生きて来たんだろうに。

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こんなに多くの思いやりや気遣いを受けてきた温人はきっと幸せだったのだと思う。寂しさで手いっぱいで気づかなかっただけ。

母もこんなに愛されている幸せに気づかなかった。

兄の言う通り、似た者親子。

 

だからラストの電話でホッとしたわ。あの電話の相手はゴミ処理屋の仁吾さんよね彼には絶対に謝ってほしいと思っていたんだ。

捨てられた物の中にも、きっと好きなものは見つかる。

 

『星ガ丘ワンダーランド』公式サイト

 


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